学長メッセージ

新しい長崎県立大学

学長 太田 博道

   本学のロゴには、「FOUNDED 2008」とありますが、これは前身の長崎県立大学と県立長崎シーボルト大学が統合して新しい長崎県立大学が開学した年です。前者の歴史は、1951年の長崎県立佐世保商科短期大学設立まで遡ることができますし、後者のルーツは1902年開学の長崎県立高等女学校で、110年以上前の誕生です。日本の価値観の変遷や戦後の経済成長の流れの中に本学は歴史を刻んできたと言えます。
   21世紀の10分の1以上が過去となり、社会は大きく変りつつあります。日本の人口はとうとう減少方向へ向かい始めました。経済的に見れば購買力にはマイナスかもしれませんが、地球規模で食料・水・資源等が次第に窮屈になっている現状に鑑みれば、必ずしもマイナスとばかり嘆く必要はないでしょう。他方、グローバル化・ボーダーレス化は予想を超える勢いで進行しています。日本の人口減少と一対で考えれば、人やモノの流れが盛んになることは歓迎すべきことであり、日本全体としてこれまで経験しなかった状況へ対応を迫られていると言えます。これまでの延長線ではなく、新しい考え方や価値観が模索されるべき時代です。
   本学が設立以来掲げている使命は以下の3つです。
   1.人間を尊重し、平和を希求する精神を備えた、創造性豊かな人材を育成する
   2.長崎に根ざした、新たな知を創造する
   3.県立大学の総合力を発揮し、地域社会・国際社会へ貢献する
基本的には、教育・研究・社会貢献の3本柱ですが、このような時代背景の変化に伴って、社会が大学に求めるものは変化してきていますから、大学としても柔軟に対応する必要があると考えます。日本は、今後これまで経験しなかった時代に入っていくのであり、特に人材育成においては、このような時代に対応できる卒業生を輩出することが必要です。新しい時代にどう対応すれば良いのか、この問題は明確な単一解があるわけではないでしょう。とは言っても、自分なりの意見を持って他の人と一緒に最善の解を出す必要があります。でも、議論ばかり重ねても問題解決の道は見えず、ともかく一歩踏み出すことが要求されます。一人で対応することは極めて困難で、多くに人と恊働することが求められるでしょう。本学は学生の皆さんにこのような力をつけてもらうことを目的に、様々な新しい試みをやりたいと考えています。その1つとして「長崎のしまに学ぶ」という全学的プロジェクトがあります。長崎県の地理的特徴である多くのしまを佐世保校、シーボルト校に次ぐ第三のキャンパスと看做し、学生諸君が主体的に設定した課題解決のためにしまに出かけ、調査・フィールドワークを行うことを通じて地域に貢献すると同時に自らを鍛えるというものです。このような能動的学びを通して、講義だけでは得難い社会人として必要な力を涵養することを目指したいと思います。
   さらに、このプロジェクトを支えるものとして、e-ラーニングを大いに取り入れたいと考えています。ICT(Information and Communication Technology)の技術を活かして自ら学修するのです。これは、将来的には学外でも、時間にとらわれず勉強できることを意味します。在学生はもちろん、社会人の方の学びにも機会を多くすることにつながることを期待しています。
   「新たな知の創造」に関しては、一般的に言えば、それ自体長崎に根ざしたものだけに限定されるものではありません。広く人類の福祉に貢献することが、長崎の地から発信されれば、これは素晴らしいことです。一方、長崎の地で活動しているからこそ、必要なあるいは発想できる「知の創造」も県立大学には求められると考えます。実際、大学全体としての重要な研究課題として地域特有の問題を取り上げ、学部横断的に力を結集しているプロジェクトもあります。大規模な大学・研究機関の向こうを張って、ナショナルプロジェクトのような大きなテーマに取り組むことは、本学の規模では難しいかもしれません。しかし逆に、特色ある研究成果で「キラリと光る」ことを目指していきたいと思います。
   「大学の総合力に基づく地域社会及び国際社会への貢献」については、いろいろな活動が考えられます。「地域社会」への直接的働きかけもあるでしょうし、「国際社会」特に近隣アジア諸国との関連の中で地域を考えることも必要です。そこには、教員の知が有効に働くこともあるでしょう。また、学生諸君の若い活動力や斬新な発想を地域社会で活かしてもらうことも大切です。一方、「地域社会」、「国際社会」という言葉の意味が、急激なグローバル化の中で変わりつつあることをきちんと認識した上で、地域の大学として何ができるか、どうあるべきかを考えていかなければなりません。例えば、長崎と上海の結びつきは、「日本国の長崎」と「中国の上海」の間の関係ではなく、地域同士=local area同士を結ぶものという意味合いが強くなるでしょう。こういうことが現に起きていることを踏まえた上で、「国際社会における地域としての長崎県」という発想が県立大学には重要です。
   佐世保校、シーボルト校の両キャンパスはともに豊かな自然と美しい環境の中にあり、地域のシンボル的存在となっています。新しい大学のロゴマークは、美しい自然と、そこで成長して世界へ飛翔する学生をイメージしたものです。輝く太陽Sunを象徴したオレンジ色のSと、世界へ広がる海Seaを表す深いブルーのSが交差したものです。幸せのシンボルである四つ葉のクローバーをも想わせます。そのオレンジ色とブルーはスクールカラーです。
   学生数は、佐世保校・経済学部約1800名、シーボルト校・国際情報学部約560名、看護栄養学部約400名、大学院生を合わせて約3000名であります。教員総数約150名、事務職員総数約55名です。3者が一体となって、県民の皆様が誇れる大学を目指していきたいと思います。
   県民の皆様におかれましては、大学の活動状況をしっかり見つめて下さって、励まし、ご意見等を賜りますようお願い申し上げます。