学長メッセージ

地域の未来を拓く長崎県立大学

学長 木村 務

 私たちは今、グローバリゼーションとデジタリゼーションの真っ只中におります。そこでは技術革新と社会経済構造の転換がダイナミックに起こっており、地球の裏側の人々とも瞬時に取引や会議ができる一方では、多様な価値観がぶつかり合って理想とする社会像や国家像を描きにくく、既存の課題解決法の多くは有効でなくなっています。加えて日本の地域社会では、少子高齢化と大都市への人口移動によって人口減が止まらず、10年後の社会存続さえ不確実になっている地域も多くみられます。しかし、その解決策は「教科書」には載っていませんし、中央や大都市や海外の人々が的確な処方箋を示し、解決してくれるわけでもありません。
 このようなグローバル・デジタル・少子高齢の時代こそ、私は長崎県に立地する本学の果たすべき役割は大きいと考えています。
 本学は、経営学部と地域創造学部を擁する佐世保校(佐世保市川下町)と、国際社会学部、情報システム学部、看護栄養学部を擁するシーボルト校(西彼杵郡長与町)の二つのキャンパスからなり、学生数は大学院を含め約3000名と全国の大学の中では決して大きな規模ではありませんが、地域に根差した県立の大学として人材育成を中心に地域に貢献して参りました。
 佐世保校は、昭和26(1951)年に長崎県立佐世保商科短期大学として開学し、昭和42(1967)年には長崎県立国際経済大学として大学に昇格しました。平成3(1991)年には経済学部流通学科の増設にともない長崎県立大学に改称し、平成15(2003)年には地域政策学科を加え1学部3学科に発展しました。
 一方シーボルト校は、117年前の明治35(1902)年に設立された長崎県立高等女学校をその源流とし、戦後の昭和22(1947)年には長崎県立女子専門学校となり、同25(1950)年に長崎県立女子短期大学として開学しました。その後昭和32(1957)年に長崎県立短期大学、同44(1969)年長崎県立女子短期大学への改称を経て、平成11(1999)年には、長崎県立女子短期大学と長崎県立長崎保健看護学校を継承し、看護栄養学部と国際情報学部の2学部を擁する県立長崎シーボルト大学が開学しました。
 この長い歴史を踏まえて両大学は、平成20(2008)年に統合し、二つのキャンパスからなる総合大学として多様な人材を育成するとともに、大学の総合力を発揮して地域に貢献して参りました。そして平成28(2016)年には、経営学部・地域創造学部・国際社会学部・情報システム学部・看護栄養学部の5学部に改組し、実学的・実践的科目を多く取り入れた教育課程を構築しました。それは、グローバル・デジタル・少子高齢時代が指し示す方向や諸課題に真正面から取り組み、海外を含む各地域の価値と文化を発見し、未来を見据えて持続可能な地域社会を担いリーダーとして活躍する人材の輩出を目指すものです。中央からは遠く離れながらも、古くから海外に開かれた長崎の地であればこそ可能な、地域に根差しながらも海外に広がる新しい時代を担う人材の育成、これを本学の使命としております。
 長崎県立大学では、グローバル・デジタル・少子高齢の時代にあって有為な人材が備えるべき力をKEN-SUN力と呼んでいます(この名付け親は学生です)。KEN-SUN力とは、学生の皆さんに卒業までの4年間の大学生活において身につけて欲しい力であり、グローバル・デジタル・少子高齢時代が求める人材が備えるべき力です。それは、①長崎とNagasaki:長崎で地域を理解するとともに世界の中のNagasaki を知ることで、グローバルに交流しながら地域・国際社会に貢献し、平和を創る力、②知識と知恵:未来を生き抜く知識を修得し、それを知恵として活用する力、③尊重と主張:他者を尊重するとともに、自己を主張し、協働・共生する力、④想像と創造:物事を多面的・俯瞰的にとらえる想像力と新しい知を創造する力、⑤挑戦と継続:未知の課題に挑戦しつつ、学びを継続する力、⑥自立と自律:自律した生活と自立的な学びをする力、という6つの力です。
 これを本学では5つの学部(経営学部、地域創造学部、国際社会学部、情報システム学部、看護栄養学部)の専門領域ごとの講義とともに学外・海外での実践的な実習活動を通じて身につけていきます。たとえば長崎県の地理的特徴である多くのしまをキャンパスとした「しまなび」という科目では、学生の皆さんが主体的に設定した課題解決のためにしまに出かけ、現地での調査や実習の実践を通じてKEN-SUN力を身につけていきます。専門課程においても、「海外ビジネス研修」ではシンガポールやベトナムの日本企業において語学力を駆使して職場体験し、「企業インターンシップ」では地域の企業において職場体験するなかで最先端の現場で経営や技術を学び、あるいは「災害看護学実習」では地震発生を想定した災害時に求められる看護師の役割について実践活動を通じて学んでいます。このように本学では実践的・実学的科目を通じて自主的・主体的にKEN-SUN力を身につけていきます。さらに、さまざまな検定試験などを活用し、4年間の各段階において自分自身にどの程度の力がついたか確認しています。
 こうして学生の実践的学習を通じた大学と国内外の地域や企業との関わりは、学生の就職や教員の研究とのつながりへと広がり、長崎県立大学は人材育成を核として、地域を創造し持続可能な地域づくりに貢献し、地域の未来を拓く拠点となってきています。