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令和6年度入学式 学長訓辞
2024-04-05
カテゴリ:お知らせ
学 長 訓 辞

 「なんでわざわざ勉強しに行くと?」
 そう聞かれたら、皆さんはどう答えますか。
 これは、3月の卒業証書・学位記授与式で、仕事をしながら大学院修士課程を修了された方が、大学院への入学を御家族に相談したときに、小学生だったお子さんから聞かれた言葉として紹介されたものです。
 大学は義務教育ではありません。今でも4年制大学に進むのは高校卒業生の半数くらいです。行かない人も、行けない人も、大勢います。
 その中で、皆さんは「なんでわざわざ大学に行くと?」
 自問しながら聴いてください。

 令和6年度の長崎県立大学入学式に当たり、本学を選んでくれた皆さんを心から歓迎します。御入学、おめでとうございます。
 皆さんを応援し、成長を楽しみにされている方がいます。そのことを忘れないでください。

 長崎県立大学は、長崎県はもとより、佐世保市、長与町をはじめとする市・町の方々、関係者のお支えによって存立している大学です。皆さんへの期待はとても大きいです。

 今日は、皆さんのために、大変お忙しい中、御来賓として、長崎県知事 大石賢吾様、長崎県議会議長 徳永達也様、佐世保市長 宮島大典様をはじめ、多数の方々が御臨席くださいました。誠にありがとうございます。

 本学での第一歩を踏み出された皆さんに、最初に意識して欲しいことを、短く3つだけお話しします。

 一つめ。リセットしましょう。
 これまでの経験の中で、上手くいかなかったこともあるかもしれません。引きずらなくていいです。今からが新しいスタートです。
 自分で選んだり決めたりすることが増えます。自由は責任を伴います。これからの大学生活を充実させるには、授業と予習、復習といった学習の習慣と、健康的な生活習慣を身に付けることが欠かせません。
 本学には進級要件や卒業要件もあります。間際になって焦っても、結局、間に合わなかったという人も現にいます。もっと早くからやればよかった、と後悔して欲しくないんです。最初が肝心です。先を見て、いいスタートを切ってください。

 二つめ。世界を広げましょう。
 世界は広く、深く、多様性に富んでいます。皆さんも私も、その片隅しか知りません。もっと知りたい、光も陰も、表も裏も、過去も未来も、宇宙と生命(いのち)の謎も、できれば全部知りたいと思いませんか。
 大学には、その広大な世界に通じる、たくさんの扉や窓があります。様々な学問分野の研究者である先生方がいます。多様な人たちと出会い、新たな発見をし、自分の殻を破って成長していくことのできる場です。社会とつながる、留学などで海外を体験する、大学院でさらに学びや研究を深めるといった選択肢もあります。
 可能性を大きく広げるチャンスです。ぜひ、いろいろなことに挑戦してください。

 長崎は多様性と平和の街でもあります。長崎県で学ぶ皆さんには、長崎の歴史、戦争の歴史も必ず知っておいていただきたい。それは、現在と未来に活かすためです。皆さんの学びと生き方が、平和な未来へと続く道であることを切に願います。

 三つめは、単純なことです。人を悪く言わない。
 私は、皆さんが、というより全ての人が、他人のことを悪く言ったり、わざわざ誰かと誰かを比べてどちらが上だ下だと言って人を貶めたりすることが無くなれば、どんなにか生きやすい世の中になるだろうと思います。
 いろんな人がいます。でも、お互いを人として尊重し合い、傷つけたりしない。
 皆が気持ちよく大学生活を送れるように、一緒にそういう大学を目指しませんか。

 以上、「リセットする」「世界を広げる」「人を悪く言わない」。この3つをお話ししました。

 大学はどんなところでしょうか。
 ベルリン大学の初代総長、フィヒテが、こう言っています。
 「我々が学問を学ぶのは、一生涯いつでも試験に備えて、学んだことをそのまま言えるようにしておくためではない。そうではなくて、学んだことを人生の来たるべき場合に応用するためであり、したがって学んだことを一つの働きに変えるためである。学んだことをただ繰り返すのではなく、学んだことから、また学んだことでもって、何か別のものを作り出すためである。」
 大学の学びは、受け身ではなく、主体的でなくてはならないということです。

 そして、玉石混交の情報が溢れる現代社会において、私が特に重要だと考えるのは、「疑う力」「信じない力」です。不確かな情報に皆が流されることほど危ないことはありません。マスコミに出ていようが、有名な人の言葉だろうが、大勢が言っていようが、正しいとは限りません。自分で確かめ、納得してこそ、本当の力になります。

 「なんでわざわざ勉強しに行くと?」と子供に不思議がられながら大学院で学んだ皆さんの先輩は、本学での月日を「仕事を終えた後の授業、寝る間を惜しんで取り組んだレポート作成、そして修士論文。まさに終わりの見えない道を一歩ずつ進むような日々」だったと振り返られました。この時間の重みを想像できますか。
 「なんでわざわざ大学に行くと?」
 答えは人それぞれでしょう。ただ、頑張る理由、頑張れる理由を自分の中に持っていることが大事だと、私は思います。
 大学で何をしたいのか。どんな自分になりたいのか。そのために何をするべきなのか。考えるのは、皆さん自身です。
 
 あらためて、皆さんを本学にお迎えできることを心から嬉しく思います。
 長崎県立大学は、挑戦する大学でありたいと思っています。皆さんも、挑戦する人であって欲しい。
 皆さんが長崎県立大学で大きく羽ばたかれることを期待し、楽しみにしています。
 一緒に頑張りましょう。

令和6年4月3日
長崎県立大学学長
浅 田 和 伸
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