平成26年度卒業式

第4回(平成26年度) 長崎県立大学卒業式 学長訓辞

平成26年度卒業式

 緑の木立に囁き、穏やかな海の波と戯れる風が、頬にも心地よい今日の良き日に平成26年度長崎県立大学卒業式を挙行できますことは、誠に光栄に存じ、また大きな喜びであります。学部を卒業される皆さん、大学院を修了される皆さん、誠におめでとうございます。また、卒業生の皆さんを今日まで育み、支え、励ましてこられたご家族の方々のお喜びはさぞ大きいものと存じます。心よりお祝い申し上げます。

 今年度は、長崎県立大学生並びに大学院生700名、そして旧長崎県立大学生4名、合わせて704名が学窓を巣立ちます。学部を卒業される皆さんの多くは、私が学長として初めて迎え入れた学生諸君です。時の流れは早いと申しますが、あれから早くも4年が経とうとしています。皆さんの中で、私が入学式で何を話したか記憶している方はいらっしゃるでしょうか? 私は「皆さんが本学のキャンパスで出会うのは偶然と思われるかもしれないが、突き詰めて考えれば必然といえるかもしれない」と述べました。そんな風に思考を展開すると、地球という天体と生命体が互いに相互作用して、ある種の「巨大な生命体」を形成していると考えるガイヤ仮説がなんだか現実味を帯びてくるということをお話ししたと思います。

 皆さんは日本のいろいろな地域から、あるいは外国からここ長崎県へきて4年間あるいは2年、5年と学んできましたが、そんなことを実感されたでしょうか。キャンパスの中では教職員や同じ世代の若者と親しく接したことと思います。また、キャンパスを出て、地域の方や他大学の学生の皆さんともこれから絶えることのないおつきあいのきっかけを掴まれた人も少なくないでしょう。いずれにせよ、多くの人との出会いがあったことと思います。この4年間で培われた友情や気持ちは一生のものとなるでしょう。これからも大切にして下さい。

 学部を卒業される皆さんにとっては入学直前に、大学院修了生の方にとっては学部在学中に、忘れてはならない大きな災害がありました。言うまでもなく東日本大震災です。皆さんも多くのことを考えさせられたことでしょうし、直接間接に行動に移された方も少なくないと思います。
 多くの問題が提起され、またその多くが未解決のままです。その中の極めて大きな問題の一つに原子力発電の問題があります。安全性神話が崩れ去るとともに、核燃料廃棄物の処理場が未だに日本にはないこと、また核燃料廃棄物の処理は核兵器の問題にもつながることが明らかになりました。これらの問題は、もちろん初めて判ったことではなく、積年の宿題でありながら、これまであまり表面には出てこなかった問題です。一方、原子力発電の抑制は、少なくとも現時点では、化石資源の消費とトレードオフの関係にあり、直接的に環境問題や貿易収支と結びつきます。さらに付け加えるなら、原子力発電のエネルギー源となる放射性ウランの量にも限りがあり、仮に安全性が担保されても無限のエネルギー源となりません。即ち、温暖化だけでなく、地球そのものの持続可能性を本気で考えなければいけない。皆さんの世代はこのような重要な問題の解決へ向けて前進して行く、名誉ある世代であると言えます。

 日本は戦後70年の節目の年を迎えました。70年という長い間、戦争や他国に対する武力の行使を放棄してきた数少ない先進国です。2003年12月からの自衛隊のイラク派遣も「人道復興支援」ということでしたが、ともかく外国の部隊が受け入れられてその任務を無事終えることができた一因は、「戦争、武力行使を放棄した」国への信頼が背景にあったことは間違いありません。現在の中近東での様々な争いは、欧米列強の嘗ての帝国主義的政策と無縁ではなく、加えて民族間の抗争、宗教あるいは宗派間の反目が絡み、大変複雑なので武力行使だけで簡単に解決するとは考えられません。こういう状況においてこそ、そのいずれにも関与してこなかった平和国家日本が演ずる役割は大きいのではないかと私自身は考えています。皆さんは、強く平和を希求する長崎でそして長崎県立大学で学び、平和を考える節目の年に学窓から巣立つのですから、世界の平和に対して日本がどのような貢献していくべきなのかしっかり考え、社会に働きかけて頂きたいと思います。

 もう50年以上前になりますが、アメリカのパイオニア精神を一身に背負ったように颯爽と登場した大統領がいました。そう、John F. Kennedy です。彼のあまりにも有名な言葉を、ここでもう一度復習してみましょう。以下のような一文です。

My fellow Americans , ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country.

私からは、冒頭部分を変えて、皆さんに贈ります。

My dear students, ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country.

繰り返します

My dear students, ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country.

皆さんの場合は、「country」を「company」、「friends」、「co-leagues」、「family」等と言い換えても結構かと思います。とにかく、これからの変化の激しい世の中を逞しく生きるためには、誰かが何かしてくれることを期待するのでなく、自ら積極的に考え働きかける気概を持たなければなりません。

 現在の日本は、グローバル化の真っただ中にあってどんな風に身を処したら良いのか決めかねているように見えます。嘗ての高度経済成長の時代を知っている世代は、それを懐かしく思っているかも知れませんが、今「地球への負荷」という観点からも物事を考えなければならないところまで来て、過去のある時期と同じような考え方で良かろう筈はありません。ハッキリとしたパラダイムシフト、即ち「発想の転換」が必要であり、それを人類や他の生命体を含めて地球全体で共有することを本気で考えなければなりません。こんな風にしたらどうだろうかと示すことができるのは皆さんの世代です。学歌にあったように、夢を追い翔び立って下さい。

 最後になりますが、長崎県知事 中村法道様、長崎県議会議長 渡辺敏勝様、長与町長 吉田愼一様をはじめ多くのご来賓の方々には、ご多用にも関わらずご臨席頂きましたこと、誠に有り難うございました。心から御礼申し上げます。
 以上をもちまして、私からの訓辞とさせて頂きます。
 卒業 おめでとう。

平成27年3月19日                     

長崎県立大学 学長 太田 博道