平成31年度入学式

2019.04.03

入学式学長訓辞

 花香り、新緑芽吹く今日のよき日、ここに学部生709名、大学院生12名をお迎えし、入学式を執り行うことができますことは、私の大きな喜びです。新入生の皆さん入学おめでとう、心から歓迎致します。
 この希望あふれる新入生を育み支えてこられましたご家族・保護者の皆様のお慶びはいかばかりかと存じます。心よりお祝い申し上げます。私ども教職員一同、皆様の願いをしっかりと受け止め、ご子弟のさらなる飛躍のために全力を尽くして参ります。
 本日は、長崎県知事 中村なかむら 法道ほうどう 様、長崎県議会議長 溝口みぞぐち 芙美雄ふみお 様 代理 文教厚生委員会 委員長 近藤こんどう 智昭ちあき 様、佐世保市長 朝長ともなが 則男のりお 様をはじめ多くのご来賓の方々にご臨席頂きました。ご多用中にも関わらず、誠に有り難うございました。深く御礼申し上げます。
 今年は平成から令和の時代に変わる節目の年ですが、この平成の時代に長崎県立大学は大きく発展してまいりました。
 まずシーボルト校は、昭和22年の長崎県立女子専門学校の創設に始まり、その後、長崎県立女子短期大学へと名称変更し、さらに平成11年に、長崎県立保健看護学校とともに、看護栄養学部、国際情報学部の2学部を擁する「県立長崎シーボルト大学」として開学しました。
 一方佐世保校は、昭和26年長崎県立佐世保商科短期大学の創設に始まり、昭和42年には「長崎県立国際経済大学」に昇格、平成の時代には、3年に流通学科を増設して「長崎県立大学」に名称変更し、平成17年に地域政策学科を加えて学生数約2千人の経済学部に発展しました。
 この二つの大学は平成20年に統合し、新しい「長崎県立大学」となりました。そして平成28年には大改組を行い、経営学部、地域創造学部、国際社会学部、情報システム学部、看護栄養学部、5学部の総合大学に発展しました。教育課程も、現代の時代に不可欠なコミュニケーション・スキルや情報技術など、実践力を養成する実学的教育課程が整備いたしました。
 私たちは今、グローバリゼーションとデジタリゼーションという、技術革新と社会経済構造の転換がダイナミックに起っている時代の真っ只中におりますが、そのひずみや解決すべき課題も次々と発生しております。大学には社会経済のひずみを発見し課題を解決するという使命も与えられておりますが、私たちが直面しているグローバル・デジタル時代は、理想とする社会像や国家像が描きにくい時代であり、既存の課題解決法の多くは有効性を失っている時代です。
なかでも地域社会では、少子高齢化と大都市への人口移動によって人口減少が止まらず、10年後の社会存続さえ不確実になっている地域もあります。しかし、その解決策は教科書には載っていませんし、中央や大都市あるいは海外の人々が的確な処方箋を示し解決してくれるわけでもありません。
 このグローバル・デジタル時代において、長崎県に立地する本学の果たすべき役割はきわめて大きくなっております。その役割を十分に果たすために、本学は平成28年に5学部からなる学部改組と教育課程改革を行いましたが、教育課程のさらなる充実を図っております。中央からは遠く離れながらも、古くから海外に広く開かれたこの長崎の地で、グローバル・デジタル時代が向かっている方向や課題をしっかりとらえ、海外を含む各地域の価値と文化を発見し、未来を見据えて、地域の再生と維持そして発展を図る人材の育成と輩出、これが本学の使命です。
 振り返りますと、本学の源流は、今から117年前の明治35年に開学した長崎県立高等女学校にさかのぼりますが、その当時の日本は、日清戦争から日露戦争に至る時代で、富国強兵によって西欧列強に並ぶ地位の獲得に邁進している時代でした。しかし、一方では、戦争のための増税により地方財政は破綻状態で、地域の社会経済が疲弊していた時代でした。そこで地域に有為な人材を育成し、地方の立て直しと国民統合を図るために、全国各地に中高等の教育機関が開設されました。国は高等農林学校、高等商業学校、高等工業学校などの専門学校を設立、県も高等女学校などを設置して、幅広い人材育成が行われました。
 このような戦前における地域の高等教育機関は、第二次大戦後は新制の大学に変わりましたが、ここから多数の地域リーダーが輩出し、地域とわが国の発展に大きく寄与して参りました。人口一億人以上の大国において、わが国ほど中央と地方に格差が大きく開くことなく発展してきた国はないと思いますが、それには地方の高等教育機関が果たした役割は極めて大きかったと思います。こうした人材育成の事例として、私の専門分野の農業に関することではありますが、鹿児島高等農林学校の調査実習による教育実践を紹介したいと思います。
 鹿児島大学の総合研究博物館には鹿児島高等農林学校の学生による調査報告書が膨大に保存されています。3年生になると各学生が出身地の町村を調査し報告書にまとめるという実習科目があり、大正から昭和前期まで続けられました。その調査報告書には、自然、歴史、風俗、教育、行政、産業、農業など総合的な項目について現地を実態調査し、地域の全体像を把握しようとするものです。西欧の進んだ学問を勉強することはもちろんのことですが、現実を自分の目でみて総合的に捉えるには、広く深い教養が必要ですし、時代の風潮に流されず地域の価値を発見し、地域の将来を考える力が求められます。この卒業生の多くはリーダーとして地域の発展を担われました。その方々は、地域を調査し地域の価値を自ら発見したことが大きな財産となったといわれています。この調査報告書は、今や当時の町や村の姿を知ることができる第一級の歴史資料となっています。
 私は、大きな転換期に直面し、先の見えない時代にあっては、まず自らが、現実をしっかり捉える力、考える力、実践する力を養わなければならないと思っております。ネットで何でも調べられる時代ですが、多くはネット情報の受け売り、時代の後追いになってしまいます。そこからは、未来の人びとが求める個性ある価値の発見はほとんどないでしょう。
 みなさんは縁あってこの長崎県立大学で学ぶことになりましたが、本学は、グローバル・デジタル時代に不可欠なコミュニケーション・スキルや情報技術など実践力を養成する教育課程を整備するとともに、地域の価値や未来の人々が求める価値を発見する力を備えた人材を育成する、自由闊達な大学作りを目指しております。また、長崎は、平和を尊ぶ地域であり、数百年来、広く海外に開かれた日本の窓としての役割を果たして参りました。この長崎の地で青春時代を送ることに誇りを持っていただきたいと思います。
 皆さんが、未来に羽ばたくために充実した学生生活を送られることを祈念して私の訓辞とさせていただきます。

平成31年4月3日
長崎県立大学 学長 木村 務