平成29年度入学式

第10回(平成29年度) 長崎県立大学入学式 学長訓辞

平成29年度入学式 学長訓辞 学長の写真

 冬の寒さに耐えた桜が競うように咲き始め、枝から枝へわたる風も新しい生命の息吹を伝えるかに感じさせる今日の良き日に、入学式を執り行うことができますことは、私の大きな喜びとする所でございます。新入生の皆さん、入学おめでとうございます。心から歓迎致します。これまで学生諸君を育み支えて来られたご家族、保護者の方々のお慶びもさぞかし大きなものがあることと思います。心からお祝い申し上げます。

 本日は、長崎県知事 中村法道様、長崎県議会議長 田中愛国様、佐世保市長 朝長則男様 代理 副市長 山口智久様をはじめ多くのご来賓の方々にご臨席頂きました。ご多用中にも関わらず、誠に有り難うございました。深く御礼申し上げます。

 昨年の入学式で、私は新入生の皆さんがこれから生きていく社会のキーワードの1つはグローバル化であると申し上げました。しかし、それ以後の世界の動きは逆向きの風が吹いているように見えます。イギリスのEU離脱、G20の共同声明、先に行われたオランダの総選挙、これから行われるフランスやドイツでの選挙でもこの傾向は見られるようです。日本ではどうでしょうか。TPPの成立は望み薄になりましたし、近隣諸国との友好関係には昨年想定された以上に神経を使わなければならないでしょう。お隣韓国では異例の大統領罷免が現実となり、誰が新大統領になっても国全体が落ち着くまでには暫く時間が必要でしょう。アメリカ大統領に政治経験の無い人が選ばれて、中国も対応に苦慮している様子が窺えます。こうした中で中国では今年の秋に国家主席を選ぶ共産党全国代表大会が開催されます。我が国としての対応にも難しい判断が要求されます。

 一方、日本の人口、特に生産人口は少なくとも暫くは減少し続け、高齢化が進みます。にも拘らず国債の発行高は国民総生産の2倍を超えて増え続けています。このような状況を打破するための特効薬はもちろんありませんが、国内だけの閉じた活動で解決できる問題ではありません。資本、製品、商品、サービス、人等々が外国へ出るにせよ、外国から受入れるにせよ、近隣諸国、特にASEANの国々とのお付き合いは、今後さらに重要になると考えられます。

 長崎県は地理的条件のために、昔から外国とのお付き合いには 重要な役割を果たしてきました。ご存知の方も少なくないと思いますが、最近国境離島新法という法律ができました。この法律の対象となる離島が長崎県に多いことも長崎県が日本に占める位置を物語っています。皆さんの多くは、その長崎県で今後4年間学ぶことになる訳です。これからの時代に最も相応しい特色を有する地で学ぶことを強く意識して下さい。受験勉強が終わって「ホッと一息」が正直なところかもしれませんが、それは昨日までのことです。入学式は 単なるセレモニーではなく、今後健全な市民として、逞しい社会人として生きていくための勉強を始める決意表明の式であると考えて下さい。

 皆さんがこれから生きていく時代は、どんな時代でしょうか。近代史で言えば、現在の日本は、1868年の明治維新、1945年の敗戦に匹敵する転換期にあると考えるべきではないかと思います。先が見通し難い時代であるとも言えます。そういう時代を大変と考えるか、刺激的でわくわくすると感じるかは皆さん次第ですが、これから大学で学ぶことは、非常に多いことは間違いありません。若い時でなければ学べない事は山ほどあり、何らかの意識や目的を持って過ごすか、漫然と過ごすかによって、卒業後には埋め尽くせない差がつく事は間違いありません。ある統計は、日本の高校生も大学生もアメリカの同世代より、中国や韓国の同世代より勉強しないと伝えています。あくまでも平均値ですから、長崎県立大学に入学された皆さんは当てはまらないと信じていますが、いずれにせよ易きに流れてはいけません。外国の学生と競争する訳ではないし等呑気な無関心でもいけません。いずれ皆さんは彼らとライバルにもなるし、協働する友人になるかもしれません。国境の内側だけで事が済む時代ではありません。

 新しい時代を生きるための勉強は、過去問がある訳ではなく、範囲が決まっている訳でもなく、偏差値で判断できるものでもなく、どれだけやったら十分ということも分からない、これまでのものとは異質の勉強であると認識して下さい。教職員一同最大限のサポートは致しますが、受け身だけでは決して完結し得ない勉強ですから、自ら鍛える心構えをしっかり持って頂きたい。皆さんはそれぞれ漠然とはしていても将来への展望を持っている筈です。自ら描く将来へ向かって近づくべく、夢を実現すべくこれから努力するのです。そして勉強しながら、自分の将来の姿が、あるいはこうなりたいという自分が次第にはっきり見えて来る筈です。

 皆さんが勉強によって培わなければならない力とはどんなものでしょうか。簡単にまとめると学力の3要素と言われます。1つ目は基礎的・基本的知識やスキルの修得です。スキルとは、IT機器の活用法やコミュニケーションの手段としての外国語です。知識やスキルがあっても引き出しにしまい込まれていては何もなりません。2つ目はそれらを活かした思考力・判断力・表現力です。表現力とは、筋道立てて分かり易く自分の考えを伝え、その上で人を説得する力です。そして3つ目は、主体性、学習への意欲等です。2つ目はそれらを活かした思考力・判断力・表現力です。表現力とは、筋道立てて分かり易く自分の考えを伝え、その上で人を説得する力と言い換えても良いでしょう。理解してもらうだけでは不十分で、その通りと納得してもらい、ともに行動を起こすことが必要です。学力の3要素の最後は学修意欲です。この力を常に高く保ち、貪欲に学んで下さい。どんなに学んでも十分ということは有り得ないし、学び過ぎることも有り得ません。もちろん「学ぶ」ということは、机に向かうとか本を読む以上のことですから、これまでの受験勉強とは質的に異なります。

 社会人として活躍するためには、もう1つ大切なことがあります。それは他の人と協力して働く力です。一人でやれることは限りがあるので、他人と一緒にチームを組んで力を発揮することが大切です。チームとして進むときには方向や方法を常に議論しなければならないので、単なる会話という意味以上のコミュニケーション力が求められます。

 最後に昨年と同じ宿題を皆さんにも出そうと思います。TEDというアメリカのプレゼンテーションイベントがあります。TEDとはテクノロジー、エンターテイメント、デザインを意味します。この中から「Our Campaign」というプレゼンテーションも是非聴いて下さい。このキーワードとTEDで簡単に検索できます。ティーンエイジャーの姉妹がバリ島を変えていくレポートです。アイディアと協働でとんでもないことができることを実感できるでしょう。他にも沢山の面白いプレゼンテーションがあります。これを機会に毎日1回は聴く様にすれば、英語だけでなく、皆さんの総合的な力はどんどん伸びていくでしょう。

 以上をもって訓示とします。

平成29年4月5日                       

長崎県立大学 学長 太田 博道