平成27年度入学式

第8回(平成27年度) 長崎県立大学入学式 学長訓辞

平成27年度入学式 学長訓辞 学長の写真

 陽射しがやわらかくなり、全てのものに新しい生命の息吹が感じられる今日の良き日に、長崎県立大学入学式を執り行うことができますことは、私の大きな喜びとする所でございます。新入生の皆さん、入学おめでとうございます。心より、歓迎致します。これまで学生諸君を育み支えて来られたご家族、保護者の方々のお慶びもさぞかし大きなものがあることと思います。心からお祝い申し上げます。

 昨年、一昨年の入学式で、私はパキスタンの少女であるマララ・ユスフザイという人の話をしました。命がけで「全ての子供に教育を」と戦っている彼女のことをもう1度話します。彼女は「女性にも教育を受ける権利がある」と主張し、タリバーンに銃撃されました。イギリスで治療を受けて奇跡的に一命を取り留め、2年前に英国バーミンガムの女子校に編入学して通学し始めました。その時、「人生で一番幸せな瞬間。学校に戻るのは夢だった」、と言っています。昨年、史上最年少でインドのカイラシュ・サティヤルティ氏と共にノーベル平和賞を受賞し、国連総会に招かれて演説しました。少し長くなりますが、その最後の部分を引用させて頂きます。

So let us wage a global struggle against illiteracy, poverty and terrorism and let us pick up our books and pens. They are our most powerful weapons. One child, one teacher, one pen and one book can change the world. Education is the only solution. Education First.

「無学、貧困、テロリズムに対して地球規模で戦おうではないか。皆さん、その手に本とペンを持ちましょう。それは私達の戦いにとって最も強力な武器です。一人の子供が、一人の教師が、1本のペンがそして1冊の本が世界を変えることができるのです。教育だけが解決策です。まずは教育を」というような意味です。
皆さんは、大学という場で、この機会を持つことができます。この日に、命がけで学校に通い、今は同じ境遇にある子供達のために活動している皆さんと同じ年代の少女の言葉をかみしめて頂きたい。

 人は何かをやろうとしなければ、何もできません。逆にやろうと思えば、とんでもなく大きなことができます。マララさんは、そんな大きなことに挑戦している一人と言えますが、もう一つ全く違う例をお話ししましょう。宇宙の遥か彼方にある直径約900メートルの球体を目指して昨年12月に種子島を出発し、今旅をしている日本の小惑星探査機です。その名を「はやぶさ2」ということは、もうお分かりと思います。軽自動車ほどの大きさもありません。ターゲットになっているのはC型小惑星で、このCという字はCarbon即ち炭素の意味です。炭素があるということは、もしかしたら生命誕生の謎解きのヒントが得られるかもしれないという期待があります。3年半かけて小惑星へ到着し、サンプルを採取し、地球に還って来るのは出発してから6年後の2020年の暮れになる計画です。1号機が成功した後ではありますが、その成功はやはり奇跡的と言えるし、プロジェクト自体は壮大なドラマです。この成功を支えるものとして、多くのアイディア、工夫、粘り強い努力があり、そして「これでやってみよう」と考え、踏み出す力があったことです。何よりも大切なことは多くの人が協力して一つの目標に向かって心を一つにしたということではないかと思います。国家プロジェクトとは言っても多くの中小企業の得意分野の技術も活かされ、人々の好奇心を刺激するだけでなく、様々な分野の技術の発展にも寄与するのです。

 この話は、もちろん皆さんと別の世界の話ではありません。皆さんが宇宙の探査に関わる可能性は小さいかもそれませんが、一人一人がやることは違っても社会に貢献することが求められます。そのときには、多くの人と恊働することが必要となります。恊働というからには、言われたことをやるだけではないので、自分なりの意見を持つ主体性が求められます。その意見が説得力をもつためには基礎的な知識がどうしても必要です。それを上手く表現する力も必要です。そういった諸々の総合力を皆さんは今日から身につけて行かなければならないのです。大学入試のための勉強はある意味単純で、またある程度数値で表すことができるものでした。これからの勉強は、必要な知識の上に主体性、表現力、恊働力等を向上させて行くものでなければならないことを意識して努力して頂きたい。大学でも通常の講義だけでなく、様々な機会を提供していきますが、最終的には皆さん自身の努力や工夫がなければ何もならないことを自覚してしっかり学修に励んで頂きたい。そう期待します。

 日本が、そして世界がこれから向かって行く未来は、これまでの経験から演繹的に推定できるものとは異なるでしょう。皆さんが何らかの事態に対処しなければならないとき、それまでに学修した事例や知識のどの引き出しを開けても満足いく答えが見つからないことが有り得るということです。そのような場面でも何らかの方針を立てて前進しなければなりません。そういう力をこれからの4年間で体得しなければならないし、そのことは決して容易なことではないことを肝に銘じて下さい。私達教職員は皆さんと共に歩み、全力でサポートします。

 最後になりますが、本日は、ご多忙中に拘わりませず、ご臨席賜りました長崎県知事 中村法道様、佐世保市長 朝長則男様 代理 佐世保市副市長 末竹健志様はじめ、多数のご来賓の方々に心より感謝申し上げます。

平成27年4月3日                       

長崎県立大学 学長 太田 博道