平成26年度入学式

第7回(平成26年度) 長崎県立大学入学式 学長訓辞

平成26年度入学式 学長訓辞 学長の写真

 本日、ここに長崎県立大学入学式を執り行うことができますことは、私の大きな喜びとする所でございます。新入生の皆さん、入学おめでとうございます。心よりお慶びし、歓迎致します。これまで学生諸君をはぐくみ支えて来られたご家族、保護者の方々のお慶びも大きなものがあることと思います。心からお祝い申し上げます。

 昨年の入学式で、私はパキスタンの少女であるマララ・ユスフザイという人の話をしました。彼女は「女性にも教育を受ける権利がある」と主張し、タリバーンに銃撃されました。イギリスで治療を受けて奇跡的に回復し、丁度1年前にバーミンガムの女子校に編入学して通学し始めました。昨年秋には、国連で演説し、ノーベル平和賞の有力候補とも言われました。彼女が登校できるようになったときに言ったことを、昨年も紹介しましたが、もう一度繰り返します。「人生で一番幸せな瞬間。学校に戻るのは夢だった」、という言葉です。皆さんと同じ年代の、命がけで学校に通うこの少女の言葉をかみしめて頂きたい。

 今、社会あるいは企業からの大学卒業生への期待は大きいものがあります。むしろ厳しいと言った方が良いかもしれません。皆さんはその期待に応えることができるよう、これからの4年間で自らの力を上げていかなければなりません。就職先を探すことを考えれば、実際には4年間ではなく、3年間と考えた方が良いでしょう。やっと受験勉強が終わったばかりで、しばらくホッとしていたいと考えている人がいるかもしれませんが、それは間違っています。今日この時間を新たな高みを目指す出発のときと思い直して頂きたい。おめでたい席で言うのは些か憚られますが、「なぜ日本の大学生は世界でいちばん勉強しないのか?」というタイトルの本が出版される程、大学生の勉強時間が少なくなっています。また、最近の調査では読書時間ゼロの大学生が4割という結果が報告されています。これではいけません。

 グローバル化ということが言われ始めて既に何年か経過しています。グローブとは、言うまでもなく地球という意味ですが、グローバル化という言葉は、使う人や状況によって多少意味が違っているかもしれません。いずれにせよ、人々の活動が国境を越えて行われることには違いありません。人々がこれまでより広い範囲で活動するとなれば、チャンスも大きくなるし、競争相手も多くなることになります。これをどう受け止めるかは本人次第ですが、のんびり構えている余裕が無いことは確かです。このことは、日本人学生にとっても留学生の皆さんにとっても同じです。

 それでは、これから皆さんに求められる力とはどんなものでしょうか?日本の歴史を簡単に振り返りながら考えてみたいと思います。今から150年くらい前、欧米列強は日本に開国を求めてきました。これは、貿易により利益を得るためです。最初は武力で追い返そうと考えましたが、すぐに彼我の軍事力の差に気づいて開国し、政治の体制も変えました。それ以後20世紀半ばまでの数十年は国の独立の確保と軍事力の増強に努め、とうとう欧米列強と石油資源の取り合いをやって、敗れたのが第二次世界大戦であったと言えます。

 戦後日本は、経済復興に邁進しました。国による護送船団方式、総合商社による海外進出等の独自の方式により、目覚ましい経済成長を遂げました。エズラ・ヴォーゲルによる「Japan as Number One」とか、マハティール元マレーシア首相による「Look East = 日本に見習え」というような言葉はこの状況を良く表していると思います。成長期の負の象徴とも言える四日市や川崎等の大気汚染をはじめとする公害問題は、技術力でその多くをクリヤーしてきました。この時代は、ある意味「経済発展」、「技術革新」等の単純な合い言葉が十分機能していたと言えます。

 しかし、1990年のいわゆるバブルの崩壊以来、日本は行くべき道がよく見えていない状態になっているのではないかと思います。国債の残高は1970年にはGDPの4%程度であったものが、2000年には72%になっています。現在ではその2倍に増加しています。即ち、戦後の成長期の余韻に浸る感覚では、日本は成り立たないと考えざるを得ません。今は質的に異なる大きな目標あるいは考え方が求められている時代ではないでしょうか。このようないわばロングランの考えをしっかり持った上で、卒業後社会に貢献するために必要な力について話したいと思います。

 先ず、最も大切なのは、他人と意思を通じ合える力です。「意思を通じ合える」とは、自分の考えを分かり易く発信すると同時に相手の考え方を聴くことができるということです。互いに一方通行の言いっ放しでは、何事も生まれないし、前へ進むことはできません。前へ一歩でも進むためには、一致点を見いだすことが絶対的条件です。そのためには相手を説得することも必要ですし、場合によっては自分の考えを修正する必要があるでしょう。社会へ出て物事に貢献しようとするとき、一人でできることは多くありません。他の人と協力して働くことが求められます。このような力を4年間で養わなければならないのです。これらの力は、一朝一夕で身に付けることはできませんし、授業を聴いているだけでも難しいでしょう。さあ、そろそろ就職活動だ、という時期になって慌てて必要なことを身につけようとしても、短時間で準備できることではありません。積極的に自ら学ぶ姿勢を持って少しずつ力をつけて行く他ありません。

 大学としても専門的な知識を教授する講義の他に、様々な形式のゼミやキャンパス外での訓練の機会を用意しています。先生や仲間との議論や調査、コンピュータを活用しての自習等々を通して、逞しさ、しなやかさ、そして積極性を身につけていって欲しいと期待しています。積極的になることはそれ程難しくはありません。必要なことは、自分自身の今のあり方を肯定することです。厳然としてある事実はきちんと認め、それをポジティブにとらえることが大切です。皆さんの胸の中には期待と同時に不安もあると思いますが、先ずは入学を果たした自分を褒め、与えられた環境、状況の中で最善を尽くせば自ずと良い結果はついてくると、ポジティブに考えましょう。この気持ちをもつことで、間違いなく人生は良い方向へ進みます。これは私自身の人生を振り返って絶対の自信を持って言えることです。

 最後になりますが、本日は、ご多忙中に拘りわりませず、ご臨席賜りました長崎県知事 中村法道様、長崎県議会議長 渡辺敏勝様、佐世保市長 朝長則男様、長与町長 吉田愼一様をはじめ、多数のご来賓の方々に心より感謝申し上げます。

平成26年4月3日                       

長崎県立大学 学長 太田 博道