平成23年度入学式

第4回(平成23年度) 長崎県立大学入学式 学長訓辞

第4回(平成23年度) 長崎県立大学入学式 学長訓辞

 本日、ここに長崎県知事 中村法道様、長崎県議会議長 末吉光徳様、代理 三好徳明様、佐世保市長 朝長則男様をはじめ多くのご来賓の方々にご臨席賜り、平成23年度長崎県立大学入学式を挙行致しますことは、誠に光栄に存じ、また大きな喜びであります。( 長崎県立大学に入学された学生は、経済学部学生489名、国際情報学部学生155名、看護栄養学部学生111名、並びに大学院経済学研究科学生11名、国際情報学研究科学生5名、人間健康科学研究科学生10名、総合計781名であります。皆さんのご入学を心よりお祝い申し上げます。おめでとうございます。また、新入生の皆さんを今日まで育み、支え、励ましてこられたご家族の方々のお喜びはさぞ大きいものと存じます。心よりお祝い申し上げます。
 入学式というお祝いの席ではありますが、初めに一言先日の東北関東大震災ついて述べさせて頂きます。まさに文字通りの未曾有の大災害でした。亡くなられた多くの方々に深く哀悼の意を表するとともに、被災された皆様に対し心からお見舞い申し上げます。新入生の皆さんの中にもご自身や親しい方が災害にあった方がおられるかもしれません。本学としても, 大学としてできることはやって行く考えです。日本という視点から見ても、非常に大きな損害であり、これまでの自然災害では経験しなかった困難を乗り越えなければならないでしょう。国民の総力を挙げて1日も早い復旧へと進んで行かなければなりません。日本全体の経済をも考え直さなければならない規模であるかと思います。また、原子力発電の本質的問題、エネルギー供給の問題、地方と首都の関係等難しい議論もあるかと思います。その中から、21世紀を生きていくための持続可能な社会への考え方がより確かなものになって行くことを期待したいと思います。新入生の皆さんはその課題を担って行く世代であることをしっかりと自覚して、勉学に励んで下さい。
 さて、新入生の皆さん、皆さんがここにおられるのは、様々な形で行われた本学の入学試験に合格したからだとお考えでしょう。それは間違いの無い事実です。では何故試験を受けることができたのだろう。それは、18年前に生まれて今日まで生きてきたから、その前には自分を産んでくれた親がいたからだと、そういうことを先へ先へと考えて行くと、遥か昔の地球の誕生や宇宙の誕生まで遡ることができそうです。一つの区切りとして、地球上での生命の誕生まで遡ると、それは36億年前と考えられています。そんな大昔に炭酸同化作用を行う能力を有するシアノバクテリアという微生物が原始の海の中で誕生しました。炭酸ガスと水からブドウ糖と酸素をつくったのです。そのDNAが長い長い時間をかけて進化し、現在地球上に見られる全ての生物となっているのです。地球上の全ての生物が共通の祖先へ遡ることができることについては、科学的な確かな証拠があります。また、ある特定の2つの生殖細胞がめでたく出会って一つの細胞となり、分裂と機能分化を経て、人間の場合なら60兆個の細胞から成り立つシステム、即ち生命体として完成される確率は、気が遠くなる程小さいものです。皆さんひとり一人の存在、個性はこのような悠久のときと小さな確率を乗り越えて今ここにあるのです。これをなんと表現したら良いのか、奇跡、偶然、あるいはある種の必然、どれもしっくりきません。
 地球という星と全ての生物が相互に関係しあって環境を形成していることを1つの生命体とみなす「ガイヤ仮説」という考え方があります。これに基づくなら、その生命体が期待する何らかの役割を担って、皆さんは今、ここに存在しているということができます。皆さんの目に見える周囲の人達の期待だけでなく、大袈裟かもしれませんが地球というシステムの期待があって皆さんの存在があるということを、今日の新しい門出の日に、心から感じ、また噛みしめて頂きたい。ひとり一人が、「個=individual」として、かけがえの無い存在であるということを決して忘れず、行動するときの勇気の源にして頂きたい。
 日本は難しい時代を乗り越えて行かなければならないと申し上げました。しかし、悲観的なことばかり言っていても前へは進めません。今を悲観するより、70年代半ばまでの高度成長の時代がむしろ異常であった見る方が自然でしょう。「奇跡」といわれる程の経済成長がいつまでも続くと考える方がおかしい。国の勢いを表す様な数字が、当時と比べて今はひどく落ち込んでいるかというとそんなことはありません。1つの指標として国民一人当りのエネルギー消費量が参考になります。日本では、 70年代後半がピークで、90年代後半からは、そのときの9割くらいの値で落ち着いています。これはヨーロッパの先進国と同じレベルです。韓国や中国では21世紀になっても伸び続けています。日本のように「成熟した社会」という段階に来た先進国と比べて、成長段階にある国々の勢いは目を見張らせるものがありますが、日本は日本なりの生き方を模索していかなければならない時代に来ていると言えそうです。今後歩むべき道を見定めることができないでいるのが今の日本と言えるかもしれません。少子高齢化の成熟した社会というのは、世界の人類としてもこれまで経験したことのない社会であり、日本のやり方を世界が注目している所です。皆さんはこのような時代を生きる力を持たなければなりません。これからを生きる若い皆さんにとっては韓国、中国をはじめアジアの国々は、ライバルでもありパートナーでもある時代になってきたと言えるでしょう。皆さんにおかれては、成熟した社会の先達としてヨーロッパ諸国を先導しなければなりません。あらゆる意味においてアジア各国の「勢い」を受けとめるだけの逞しさ、しなやかさを持たなければなりません。大学における4年間は、その為の時間であると考えて下さい。
 勉強は、基本的に一人でできるかも知れませんが、社会に出て生きていくということは、一人だけではできません。したがって、これからは他人と協力して物事をなしとげる、という力を養うことが大切です。サークル活動やボランティアの様な課外活動も有力でしょうし、ゼミ・研究室単位の複数で行う調査や研究活動も大いに役に立つと思います。さらに、他人と協力して何かをやる際に重要なことは、自分なりの提案をすることです。集団の中で多くの人が違う提案をすれば、カンカンガクガクの議論になるかもしれません。議論をすることは大切です。しかし、議論ばかりしていては何もできないことになります。何らかの折り合いをつけて行動していくことがどうしても必要です。学生のときにはこのような機会をできるだけ多くし、こうした過程を繰り返すことで、皆さんひとり一人が少しずつ大きくなり、成長していって欲しいと思います。皆さんにとって最も大切なことは、学生時代には失敗が許されることです。失敗したからといって、立ち上がれない程のダメージを受ける心配はありません。この特権を大いに活かして思い切りのびのびやってみて下さい。私達教職員はできるだけの手伝いをやっていきたいと考えています。
 1つだけ、私自身がこれまで生きてきて、強く感じていることを言わせて下さい。それは、「何事も一生懸命やると面白い」、ということです。仕事でも勉強でも、あるいはスポーツでも同じです。やればやる程、そのことの意義が分かってくるし、どうすればもっと良くなるか分かってくるので、面白くなってくるのです。これからの勉強は皆さんをつくっていくものです。ときどき、自分のやりたいことが何だか分からないとか、見つからないという人がいます。物心ついてから高々10年、そんなに簡単に見つからなくても心配することはありません。まずは騙されたつもりで目の前の勉強を一生懸命やってみて下さい。
 新しい仲間をつくることも大切です。県内出身の人は、遠くから長崎県へ来た人をいろいろな場所へ連れて行って、お国自慢の話をしてみて下さい。それがきっかけとなって、お互いにこれまで見えていなかった世界が広がる筈です。
 最後に、改めて、皆さんの長崎県立大学への入学を歓迎し、皆さんの新鮮な意気と若いエネルギーの発揚に期待すると共に、皆さんが有意義な大学生活を送られることを祈り、学長訓辞とします。

平成23年4月3日                       

長崎県立大学 学長 太田 博道