教育課程の概要(栄養科学専攻 博士後期課程)

栄養科学専攻博士前期課程の考え方及び特色

 最近の生理学、生化学、分子生物学、細胞工学、遺伝子工学などの生命科学の著しい発展により、人が食物を摂取して体内に取り入れた栄養素が生命現象を営むうえでいかに機能しているか、また、その機能を発現するに至るまでのプロセスについての研究が急速に進みつつある。一方、わが国は世界に類をみない速さで高齢化が進んでおり、それに対応した栄養学的な取り組みの重要性が増している。断片化した高度な専門的知見を統合理解し、新しい課題に向けての栄養学的基礎知識を形成することにより、加齢や疾病による生体機能の変化を栄養学的見地から理解し、健康保持や生活習慣病の予防に役立てること、人を対象とした人間栄養学の実践的研究を通して、実生活における栄養学的、健康科学的な問題点を明らかにして、それらに対応するための有用な方策を探り、その成果を社会に還元することを目標に、脂質代謝、骨代謝調節、ビタミン代謝などを中心とした生体代謝調節機構、疾病と食品機能との関連、生体の機能統合(ホメオスタシス)とその加齢変化などを教授し、分子レベル、細胞レベル、個体レベルで栄養素と生体機能の関係を修得させる。
 また、この分野の研究に必要な基礎技術を修得させるとともにその応用力を養い、研究開発能力と創造性を持つ技術者及び研究者を育成する。さらに、動物実験を通して得られる栄養素の生理的代謝及び代謝異常、栄養素と加齢との関連、微量栄養素の生体機能における役割等の基礎的知見を修得させ、研究に必要な基礎技術を習熟させる。さらに、これらの基礎的知見をもとに、人集団を対象とした応用技術を修得させ、人の実生活における栄養素の摂取状態と健康、社会環境や食環境と健康との関わり、社会構造や食生活などについての疫学的研究、健康教育・栄養教育の実施計画を立てる。こうした教育・研究を通して高度の専門的学力と研究能力を持ち、チーム医療の一員として参画できる臨床栄養専門家、ならびに健康政策への応用可能な研究・調査や健康・保健・医療行政などを推進できる有為・有能な公衆栄養専門家、食品・医薬品関連産業界における商品開発などができる研究者を育成する。
 高齢化社会を迎えた今日、一次予防を重視した健康問題の取り組みにおいて「食と健康」の重要性がますます社会で認識されている。一方、最先端技術のひとつであるバイオテクノロジーが急速な進歩を遂げ、食品科学の分野においても新しい食品素材の健康への利用が注目され、その理解や応用に関する知識の重要性が増している。このような社会的背景を踏まえて、食品の機能性を科学的に追究し、その成果を健康の増進や質の高い食生活、体調の調節などに役立てること、また有用微生物を利用して生物資源をより有効に活用するための基礎研究を行い、その成果を食品・食糧の質的向上及びそれらの生産技術の向上に役立てることが食品研究の目的とされる。本専攻博士前期及び後期課程においてもそれらの研究を通して、食品科学分野でも活躍できる高度専門職業人として、また、研究者として必要な専門知識や基本技術を修得させ、その資質の向上を図る教育を行い、本分野の有為な人材を養成する。
 なお、本大学は地域に根ざした公立大学であることに鑑み、これらの分野の中でも特に地域のニーズに即した研究テーマに重点を置いて、学生の指導や人材育成を行いたいと考えている。

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授業の概要とねらい

 栄養科学専攻は、「基礎栄養科学領域」及び「実践栄養科学領域」を設置し、教育・研究を行う。

 「基礎栄養科学領域」では遺伝子工学、細胞工学の技術を利用して生命科学の本質である遺伝子発現に対する栄養素、ひいては食事の制御メカニズムを研究し、その成果に基づいた教育を重視する。さらに、人体の健康的な機能統合、代謝調節及びそれらに必要な栄養素補給、微生物と人間の共存、食品の安全性と機能性、機能性に優れた食品の設計と創製、食品の加工・貯蔵技術とそれに伴う化学成分の変化などを内容とする教育・研究を重視する。特に、超高齢社会における健康志向に応えられる食品の機能性の開発とその利用性に力点を置いた教育・研究を推進する。特に、多様化した社会における健康問題の背景を食・栄養の面から疫学的な手法を用いて解析し、長期展望に立った栄養・健康の計画及び実践に力点を置いた教育・研究を展開する。併せて、食環境と疾病との関わりや社会環境の健康影響などに視点を置いた教育を行う。
 「実践栄養科学領域」では、実践科学としての栄養学の社会貢献に視点を置いて教育・研究を行う。人体の健康的な機能統合、代謝調節及びそれらに必要な栄養素補給、腸内環境を含めた健康影響、健康づくりのための栄養状態の評価・判定、食生活、身体活動、ストレスなどの生活習慣によってもたらされる生活習慣病、栄養管理のあり方、運動負荷と健康増進・体力向上、栄養補給の適・不適の診断とその対応、食品の二次機能の有効利用と食文化の形成、それに伴う摂食行動との関わり、加齢に伴う機能変化や生活環境と栄養との関連などに視点を置き、栄養効果と生体側の状態に関する教育・研究を推進する。
 また、開発途上国、特に東アジア地域における栄養問題に寄与できる国際感覚を持った栄養専門家の人材育成を目指し、地理的、歴史的に繋がりの深い長崎から「食と健康」を通じた国際交流と国際貢献を実践する。
 一方、東アジア地域の大学や研究所と研究者の交流を積極的に行い、特別講義やセミナーを通じて学生が外国人と接して国際感覚を身につける環境を整える。すでに、ドイツ、米国、韓国、中国から研究者を迎えてセミナーや懇談会などを開催して国際交流を推進している。また、栄養科学専攻の基盤となる栄養健康学科においては、外国からの国際交流員、客員研究員及び留学生を受け入れ、国際交流に積極的に取り組んでいる。

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教育課程及び研究指導等

 3年間継続して行われる「栄養科学特別研究Ⅱ」が教育課程の主体となる。1年次から研究指導科目を履修し、研究課題を決定して課題遂行のための計画を立案し、研究成果を博士学位論文としてまとめる。そのために、研究課題の設定、研究計画の立案、研究指導、データ収集、データ解析等の指導を行う。また、他領域の教員からの指導を受け、多くの研究領域を有機的に統合しながら健康科学に立脚した質の高い博士学位論文を完成へ導き、博士後期課程を修了させる。博士後期課程を修了した者に博士の学位を授与する。
 なお、本学大学院では博士後期課程を経ない者であっても、論文を提出してその審査及び試験に合格し、かつ、専攻学術に関し本学大学院の博士後期課程の教育課程を終えて学位を授与される者と同様に広い学識を有することを確認された場合には、博士の学位を授与する制度を導入する。

1. 大学院博士後期課程の目標
 教育目標は、健康の保持増進や疾病の予防に関する学術的な課題を自立して研究し、健康科学・栄養科学に寄与する高度な専門的知識や技術を創造する研究者を育成することである。すなわち、健康の保持増進や疾病の予防・回復に関する学術と研究を推進してその深奥を深め、自立して研究活動を行うことが出来る能力を身につけ、実践的課題を研究的手法によって解決する人材を育成することである。
 あわせて、健康科学の知識・技術、研究能力を身につけ、高度の専門的な業務に従事できる高度専門職業人を育てる教育者を養成する。
2. 教育課程の構造と編成
 本研究科博士後期課程は、「研究指導科目」を中心として編成し、特別研究を支援する科目として「研究支援科目」群を配置する。
 「研究指導科目」の教育課程の中心は、3年間を通して継続される「栄養科学特別研究Ⅱ」である。1年次から「研究指導科目」を履修し、研究課題を特定して課題遂行のための計画を立案し、健康科学を探求する博士学位論文作成に取り組む。「研究指導科目」の中で、研究課題の設定、研究計画の立案、研究方法の展開、データ収集、データ解析等の指導を行う。さらに、ゼミ形式により各専門分野の最新の研究成果を掲載した学術論文を精読、理解させる。研究成果の学会での発表、学術論文誌への原稿作成や投稿に対しても指導する。
 「研究支援科目」として専攻共通科目を開講する。この科目は博士前期課程における専門分野の担当者が講義または演習形式で行う。「研究支援科目」は、各々の専門領域に関する高度な理解を深めることによって、特別研究の中で行う研究の位置づけや他の研究との関連性をより明確にすると共に、研究者としての資質向上に資することを目的とする。このため博士学位論文の作成とは独立した位置づけとし、修了要件とはしない。
3. 研究指導体制
 「栄養科学特別研究Ⅱ」では、博士学位論文指導の主研究指導教員を中心とした指導責任体制を整えるために、博士後期課程の学生1名につき1名の主研究指導教員と2名の副研究指導教員を定める。主研究指導教員は当該研究領域の博士学位論文指導の有資格教員がなり、副研究指導教員のうち1名は他研究領域から加わり、もう一人の副研究指導教員は主研究指導教員と同一の研究領域とする多面的指導体制を原則とする。副研究指導教員の1名は学外者に依頼することも可能とする。
 この研究指導体制は、「栄養科学特別研究Ⅱ」として3年間継続し、主研究指導教員が中心となって研究指導を行うが、副研究指導教員は主研究指導教員と研密な連携をとりつつ、必要に応じて研究指導または論文作成に助言を行う。さらに、主研究指導教員は、学生が研究を進めていくうえで必要に応じて、同一研究領域のみならず他の研究領域の教員からも必要な知識及び研究技法に関する指導を受けられるように、その環境作りをする。
 研究科長は、学生の教育上必要と認めた場合には、研究科教授会の議を経て研究指導教員を変更することができるものとする。
4. 博士後期課程の修了要件
 本研究科栄養科学専攻博士後期課程に、原則として3年以上在学し、所定の単位を修得し、かつ、必要な研究指導を受け、及び博士論文の審査及び試験に合格することである。
5. 博士学位論文の提出資格
(1) 修業年限2年以上を在学していること。ただし、修業年限の特例として、在学年限が短縮されることがある。
(2) 定められた単位を修得した者又は修得が確実に見込まれる者で、かつ、必要な研究指導を受けた者でなければならない。
(3) 論文提出までに審査制度の確立された学術雑誌(国内雑誌)に原著論文3編以上が掲載され、そのうち1編は筆頭著者であること。
6. 博士後期課程における履修及び研究指導の内容とスケジュール
 教育にあたっては、学生の志向する領域の専門性を重視することが重要であるが、領域間の関連性も重要であり、かつ、広い専門的視野の育成も重要な課題である。
 入学者の博士後期課程修了までの履修指導・研究指導は、原則として次の過程に沿って行う。
(1) 専攻領域及び研究指導教員を決定(1年次4月)
学生は、希望する教育・研究分野及び特別研究の主研究指導教員名及び副研究指導教員名を研究科教授会に提出する。
研究科教授会は、学生の希望に基づき特別研究の指導に適する主研究指導教員1名と副研究指導教員2名を決定し、学生に通知する。
(2) 履修計画の指導及び研究課題の決定(1年次4月)
 主研究指導教員は、学生の希望する研究課題、指導教員の専門分野、指導環境などを配慮したうえで、学生の同意を得てから研究課題を決定し、研究科教授会に通知する。
(3) 研究計画の立案・指導(1年次5月~7月)
学生は、決定した研究課題に関して先行研究の整理、仮説の設定を行い、研究計画を立案する。
主研究指導教員は、学生が研究計画を立案するに当たって、研究方法・文献検索方法・文献読解方法などを指導する。
(4) 研究の遂行・指導(1年次8月~2年次9月)
学生は研究計画に従って研究を遂行する。
主研究指導教員は、研究の進行を確認しつつ、研究成果をまとめさせる。
主研究指導教員及び研究科教授会は研究の進捗状況について、2年次7月に確認し、研究の進捗状況に応じた指導を行う。
(5) 研究経過の中間報告(2年次10月)
 主研究指導教員は、学生の研究経過を研究科教授会に報告する。
(6) 研究の遂行・指導(2年次10月~3年次8月)
学生は研究計画に従って研究を遂行する。
主研究指導教員は、研究の進行を確認しつつ、研究成果をまとめさせる。
(7) 博士学位論文の作成・指導(3年次9月~12月上旬)
 学生はこれまでの研究成果をもとに博士学位論文の作成を開始し、主研究指導教員のもとで博士学位論文をまとめる。
(8) 博士学位論文の提出(3年次12月上旬)
 学生は博士学位論文及び学会誌への投稿論文3編以上(うち筆頭著者の論文1編以上)を12月の指定した期日までに研究科教授会に提出する。
(9) 主査・副査の決定(3年次12月中旬)
研究科教授会は、受理審査結果に基づき、学生の博士学位論文の審査委員3名以上を決定し、学生に通知する。
主査及び副査は主研究指導教員以外の専任教員が担当し、審査委員の互選によって選出する。
主査及び副査は研究科の専任教員の中から選定する。
副査は主査がなんらかの都合でその役割を果たせないとき、代役を務める。
審査委員は他専攻及び他学部の専任教員に依頼することができる。
(10) 博士学位論文の審査(3年次12月下旬~2月中旬)
博士論文審査は、審査委員によって先ず予備審査を行う。
主査が審査委員を招集し、予備審査会を開催する。
主研究指導教員は予備審査において指摘された問題点の解決方法などについて学生を指導し、問題点を解決して博士学位論文を再提出させる。
主査は審査委員とともに修正された論文について本審査を行う。
(11) 研究発表会(3年次1月下旬~2月中旬)
研究科教授会は、博士学位論文に係わる研究発表の場として、公開の研究発表会を開催する。
専攻構成の専任教員は、必要に応じて発表内容について質問し、助言する。
(12) 博士後期課程修了の合否判定(3年次2月下旬)
主査は博士学位論文についての審査結果を研究科教授会に報告する。
研究科教授会は、博士学位論文の審査結果と当該学生の単位修得状況により博士後期課程修了の合否を判定する。
修了の要件は、大学院に原則として3年以上在籍し、所定の単位(4単位以上)を修得し、かつ、必要な研究指導を受けたうえ、博士論文を提出し、その審査及び最終試験に合格することである。
(13) 博士後期課程の修了及び学位の授与(3年次3月)
学長は、研究科教授会の判定結果に基づき、学生の博士後期課程修了を認定し、博士(栄養学)の学位を授与する。
学位の授与は学位記を交付して行う。