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研究ピックアップ 
齋藤 正也
情報システム学部 情報セキュリティ学科 准教授 斎藤 正也
重力3体系の崩壊条件の探索や感染症の時系列データを基に実行再生産数の推定や流行予測を導き出す研究をおこなっています。

情報システム学部 情報セキュリティ学科 准教授
齋藤 正也 (サイトウ マサヤ)

#数理情報学 #統計学 #天体力学
Q.01
研究テーマとその内容、具体的な取り組みについて教えてください。

A.
(1) 力学系が持つ性質を数値計算を通して明らかにすることや(2)現象を微分方程式や確率仮定として力学的に記述したモデルにデータを同化することで統計的推論を行うことに興味を持って研究に取り組んでおります。
(1)の具体的課題として、重力3体系の崩壊条件の探索をおこなっています。基本的には大量の数値計算を行い、それを適当な情報処理によってリダクションすることで「人が把握できる」簡単な規則を取り出すのが日常の作業になりますが、最近は挙動な簡単な近似力学系に真の系の複雑な系の挙動をデータとして入力して、データ同化手法を使って真の系の要約を得る手法の開発に興味があります。
(2)の具体的課題として、感染症の時系列データ、つまり毎日報告される新規感染者数を逐次ベイズ推定に基づいて取り込み、実行再生産数の推定や流行予測を行っています。
Q.02
この研究をはじめようと思ったきっかけについて教えてください。

A.
(1)については、同じ重力N体系(N≧3)でも太陽系のように数十億年も周期的な運動が続く安定なものもある一方で、ごく短い時間にバラバラになる系が他方にあり、ではその境界では何が起こっているかを明らかにしたいと思ったのがきっかけです。後者にはついては運動はたいへん複雑でただ軌道を眺めているだけでは背後にある法則に迫れません。そこで、単に力学/物理の問題としてだけではなくインフォマティクスの問題としても興味を持ちました。
(2) については、データ同化の応用事例を探していたところに2009年新型インフルエンザが流行したことが契機となりました。
Q.03
Q.研究内容が身近な社会とどのように関わり、影響を及ぼすのか教えてください。

A.
(1) について、直接的には医療資源のコントロールに必要な算定を行うことですが、もうすこし基礎的なところとして解析ノウハウやソフトウェア実装を事前に蓄積し、将来COVID-19のような新興感染症が発生したときに数理モデルに基づく分析を迅速に行えるようにすることが考えられます。
Q.04
Q.今後、研究をどのように進めていこうと考えていますか。

A.
今までは都道府県別の新規感染者数などの公開されているマクロデータを使った分析を行ってきました。今後はミクロデータの活用に取り組むつもりです。COVID-19の流行を契機として、自治体レベルの情報や感染のチェインなどのよりミクロな情報も公開されていくと期待されます。ミクロ情報の取り入れにより潜在的にはより精緻な分析が可能となりますが、地域や期間におけるばらつきも大きくなりこれらの統合方法自体も大きな課題となります。そこから統計分析の演習となる課題が発掘できるように進めていきたいと考えています。
Q.05
ゼミや講義で学生を指導をする上で、いつも心がけていることや大切にしていることはありますか。

A.
なるべく少ない道具で閉じた論理を構成して、学生自身が今後出会うであろう問題への取り組みへのヒントになるものを提供しようと考えています、高等学校までのいわゆる教科は誰もが知っておくべき汎用性の高い知識や技能なのですが、現実のシステムや現象を相手にする大学での教育研究はそのようなパッケージ化が難しいものです。講義や演習を通して、問題の定式化や解決を立案するまでのプロセスを事例とともに伝えたいと思っています。
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