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田中 一成 特任教授が長崎新聞文化章(産業・科学部門)を受章しました!
2023-10-30
カテゴリ:お知らせ
 本学で長崎県の農林水産物に着目した研究に取り組んでこられた田中 一成 特任教授が、長崎新聞文化章(産業・科学部門)を受章しました。同章は、長崎県の文化や教育、産業、科学、平和、福祉など各分野で顕著な活躍した人を顕彰するものです。
 今回の受章に際し、田中先生に受章の今の想いやこれまでの研究人生を振り返り今感じる事、そして現代に学ぶ学生たちへのメッセージについてお伺いしました!

Q1 この度の受章、改めておめでとうございます!受章された今のご感想をお聞かせください。
 県立大学の教員として、また研究者として、長崎県の活性化や長崎県民の健康増進を目標に研究に取り組んできましたが、多くの皆様のご支援のおかげで今回の受賞につながったと感じています。今は本当に感謝の気持ちでいっぱいです・・・。

Q2 先生の取り組まれてきた研究の概要をお教えください。
 私の研究は、大変ざっくり語りますと「長崎県産の農林水産物のいろいろな特徴について研究を行い、農産物が特有の健康機能を有することを明らかにする」といったことになると思います。

 長崎県の農水産物は様々ですが、未利用の産物も利用の仕方次第で素晴らしい効果を発揮する生産物や加工品に生まれ変わらせることができることを、研究の中で見出し、示すことができました。研究成果の中には機能性食品の開発という成果に結実したものもあり、微力ではありますが本県農産物に付加価値を見出し、本県農林水産業の活性化に貢献することができたのではないかと考えています。

 また、県内各地で多くの健康講座を開催して、県民の皆様の健康意識の向上に努めるなど、健康で活力ある長崎県を作り出すために多くの方面で活動してきました!!
オンラインで取材に応じる田中先生
Q3 先生が「長崎県の農林水産物」に着目されたきっかけはどのようなものでしたか。
 大学において「食品の化学」を追究する「食糧化学工学」分野で勉学し、その後大学院の博士課程に進んだことが研究者としてのキャリアのはじまりです。博士課程終了とほぼ同時に、現在の本学の前身の前身となる「長崎県立女子短期大学」に講師として赴任しましたが、小さな県立の短大であったことから、研究設備も研究費もほとんどない状況で研究しなければなりませんでした・・・。
 そのような環境の中で「食」に関する研究を進めるためにはどうすればいいのか。地元の食材であれば簡単に入手でき、そして何らかの成果が得られれば地元のためになると思い、長崎県内の農林水産物を対象に研究を始めたんですよ。「あれが足りない」って考えても仕方ない、できることにチャレンジしようと思ったのかな・・・生まれつきポジティブ思考なのかもしれないね(笑)

Q4 なるほど・・・先生が注目された「長崎県の農林水産物」は、具体的にはどのようなものですか。
 そりゃもう、いろいろ注目してきたんですよ!!長崎県特産のびわをはじめ、みかん(特に未熟みかん)や香酸柑橘「ゆうこう」、対州そばなどありとあらゆるもの!陸上だけでなく、いりこやナマコ、きびななどの水産物にも注目して研究を重ねてきたんだけど、本当に様々な産物に健康機能を有することを突き止めてきましたよ。

Q5 先生が発掘してきた魅力と特性あふれる「長崎県の農林水産物」ですが、先生の「推し」の農林水産物を聞かせてください!!
 推しはやっぱりびわだね!びわは葉から実、種に至るまで様々な健康機能を有していて、捨てるところはないんですよ。特に、びわの葉を緑茶葉と混合発酵させることで健康機能が高まることを活用し、製品化にまで漕ぎつけましたからね。
製品化された美軽茶
 「びわの葉入り まるごと発酵茶」は動物実験だけでなくヒトを対象とした臨床試験でも高い成果を上げることができました。びわは、私にとって本当に「推し」の県産物ですね・・・。

 長崎県の素晴らしさを見出すことを目的として長崎県産の農林水産物の特性について研究を行ってきましたが、研究当初はほとんど注目も評価もされなかったんですよ。ですが、研究を進めていくにつれて、多くの産物に人の健康に寄与する機能を有することが明らかになり、長崎県民、ひいては長崎県にとっても意義ある成果を少しづつ残すことができたと思っています。研究を進めてきて良かった!今本当に感じています。

Q6 先生の専門分野か否かに関わらず、今一番興味を惹かれる事象は何かありますか。
 今年のノーベル医学・生理学賞の受賞が決定したDr.カリコのmRNAに関する研究です。 mRNAを基にワクチンを作る技術に関しては数十年前から知られていたのですが、強い副反応が起こることから実用化は不可能と言われてきました。ところが、Dr.カリコは地道な研究を進めて、現在の新型コロナウイルスワクチン開発の基礎を作りました。しかし、この研究成果はほとんど注目されず、研究費も打ち切られるような状況になりましたが、それでも自身の研究成果を信じ、地道に研究に打ち込んできたことが、結果として新型コロナウイルスから世界中の数億人もの命を救うことにつながりました。

 研究レベルや内容はまったく違いますが、自分も少し似たような境遇かなと共感するところがあります。ちょっとおこがましいかな・・・。

Q7 先生が研究と教鞭の日々をすごした長崎県立大学で今学ぶ学生たちに、一言メッセージをお願いします!
 「計画がすべて制する」ということかな。しっかりとした計画をたて、それに向かって全力で、そして真摯に取り組めば必ず結果は出る。そのような姿勢で40年以上研究に取り組んできたことが、いろいろな成果につながった強く感じています。
 あと、大学では必修科目や卒業要件といったハードルがあります。それは義務かもしれないけれど、一方で長崎県立大学には自由な校風があります。これは本当に魅力だと思っているんですよ。そうした自由の中から、学生時代に「自分が生涯胸を張って語れること」を一つでも探してほしい。何も勉強とか研究とかそんな縛りのものだけではなく、自分自身にとって大切な何かを探してほしいと思います。
 そして、夢を持ち続けてほしいんです。大きな夢をね。そしてその夢を叶えるために、努力を続けてほしい。夢が叶うことは本当に素晴らしいけど、叶わないことが多いかもしれない。だけど、夢に向かって努力したことは絶対に消えないし、努力した分、たとえ叶わなくてもその夢にはきっと少しでも近づいていると思うんですよ。

 まだまだ若い皆さん方は、是非ともいろいろなことに興味を持って、そして夢を持ち続けて将来に突き進んで欲しいと思います。自分からアクションを起こさなければすべては始まりません。とにかくチャレンジです。素晴らしい未来を自分から切り拓いてください。
Q8 先生の今の夢を聞かせてください!!
 人間の寿命は科学的にみて最大120歳とみなされています。私の夢は、長崎県産物の中から120歳まで健康で長生きできる成分を見つけることです。

先生、この度の受章、本当におめでとうございます。これからも長崎県に密着した研究活動に取り組む田中先生の活動から目が離せません!



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