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バングラデシュのラジシャヒ大学から講師をお迎えしました
2023-06-26
カテゴリ:お知らせ
 6月22日、公共政策学科石田研究室ゼミのゲストにバングラデシュ・ラジャシャヒ大学の研究者、現在は長崎大学医学部博士課程3年生でもあるムハマドゥル・ハサン先生をゲストに招いての講義を行いました。今回は「バングラデシュにおける社会経済的な課題」と題し、急速に経済成長をしているバングラデシュにおいて、その反面で、貧困、教育へのアクセス、ジェンダー不平等、失業、南アジア特有の持参金(ダウリー)の問題と、これらの相互の関連性について、ご自身の専門である医学分野を超えて、幅広い視点から学生たちにわかりやすく講義していただきました。
ムハマドゥル・ハサン先生
 講義では日本とバングラデシュの経済開発に関する関係性、日本で生活してみての良い点や課題だと感じる点について述べられました。普段、地域密着型で国内の政策や地域づくりの実践について学ぶことの多い公共政策学科の学生たちですが、よりグローバルな視点から、日本そして長崎の良いところ、課題点について意見交換を行いました。ハサン先生からは、貧困地域の医療施設や診療の状況と日本とを比較して、学生に対し、「皆さんは、日々を生きる社会が国民皆保険制度が充実しており、そうした国に生まれたことをラッキーに思った方がよい」と、途上国における医療・福祉の状況を踏まえた上での話題提供もありました。

 ゼミ学生からは、「日本も戦後の発展を遂げて豊かになった半面で、地域社会の結び付きや昔ながらのコミュニケーションなど失ったものが多いが、バングラデシュも社会・経済的な発展の中で、喪失していくものがあるのでしょうか?」という質問がありました。これに対し、ハサン先生からは、「バングラデシュも日本と同じように地域コミュニティの希薄化が進んでおり、とくに最近は農村部において急速な変化の中で、伝統的な食事、祭礼、皆が集まる場所など変化が大きい」という回答もありました。バングラデシュも発展の一方、わが国の多くの地域社会が経験してきたであろう課題に直面する可能性についての言及もありました。ハサン先生が日本での生活を通して感じるのは、課題は山積しながらも母国が便利な社会になっていく中で、コミュニケーション手段の変化、グローバリゼーションの影響による伝統的なコミュニティの希薄化、人間関係の孤立化を懸念しているとのことでした。
講義に聞き入る学生たち
 先生ご自身も長崎での暮らしを満喫している一方、外国人を容易に許容できない日本人とどう接すべきか、という実体験に基づく話題に加え、長崎を含め日本には長い蓄積のある歴史や優れた文化があるが、(英語を長年学んでいながらも)外国語をうまく運用できていないことが主因となり、日本人がその価値を世界にうまく伝えきれていない、など長崎での生活に基づく観察からくる鋭いご指摘もありました。

 公共政策学(Public Policy)は、本来、地域だけではなく世界における普遍的な政策課題も幅広く扱う分野であり、地域密着なローカル、日本国内だけの学びで視野を狭めるのではなく、世界の課題や政策的な状況にも目を向けることが必要です。今回のグローバル世界におけるバングラデシュが抱えるローカルな問題にも触れた学生たちからは、「今まで触れたことのない同国の様々な課題に触れ、とても刺激を受けた。グローバルな視点を持って学びに取り組みたい」といった意見が聞かれました。
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