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学生広報スタッフ浅田学長インタビュー「50年・100年後も必要とされる大学へ」
2023-06-08
カテゴリ:お知らせ
 学生広報スタッフです!令和5年4月より新たに学長に就任した浅田和伸学長に、ご略歴や学長としての今の気持ち、そしてこれからの大学運営にかける情熱や、学生への想いなどをお伺いしてきました!!
 何かに悩んでいる、もう一歩踏み出せないあなたへのヒントにもなるお話もあります!ここでしか聞けない浅田学長の本音トーク、ぜひご覧ください!
浅田 和伸 学長
学長の生い立ちについて教えてください!
(小~高校まで)
 香川県の豊島(てしま)という離島で生まれ育ちました。豊島には中学校までしかないので、高校から一人暮らしです。
 高校は高松市内の県立で、ちょうどその年に開校した高松西高校の一期生です。

(大学時代)
 私は大学一年を2回やっていて、普通よりちょっと長めです(笑)。
 僻地の出身だし、高校も新設校の一期生で、大学には先輩も知り合いもいません。授業に出ないと単位をもらえないということすら知らなくて、油断していました・・・。奨学金も2つ受けていましたが、新聞配達、家庭教師、飲食店などのアルバイトもしました。

 本はたくさん読みましたよ。1回目の大学一年の時は、小説や哲学、思想などを中心に年に400冊読みました。
2年目からは気の合う仲間もできて、しょっちゅう集まっていろんな話をし、飲みにも行きました。当時の同級生とは今でも同窓会をします。中には、当時は親しくなかったけれど、仕事の上で接点ができて、卒業後に親しくなった人もいます。本当に大切な絆です。

(大学卒業後)
 大学を卒業して文科省(当時は文部省)に入り、三重県や、北京に住んで仕事をした期間もあります。結構あちこちに行っています。

大学ではどのようなことを学ばれていたのですか?
 私が通っていた大学は3年次から専門に進むカリキュラムで、迷った末に心理学を選びました。倫理学や社会学もいいなと思ったのですが、人の心に興味があり、精神医学や非行心理、犯罪心理などの本も読んでいたので、関心が近いかなと思ったんです。
 心理学といっても幅が広いですが、私が所属した学科は基礎心理学、実験心理学が中心です。実験のために1人2匹ずつネズミを飼っていて、毎日エサと水をやりに白衣を着て地下の実験室へ行ってました。

 あまのじゃくな性格で、興味があることにはのめり込むほうです。自分で調べて、他の大学の授業を聴きに行ったこともあります。卒業後は心理学を直接活かせるような機会は少なかったですが、それでも心理学を専攻してよかったです。

長崎県立大学に赴任されて驚いたこと等は何ですか?
 毎日がとても新鮮です。魅力的な大学ですよ。予想とちょっと違ったのは、佐世保校とシーボルト校の2つのキャンパスが、想像していたより少し遠いことかな。できるだけ両キャンパスに均等に行きたいと思っていて、1日で両方に行くこともあるので、もう少し近いといいなと思うことはあります。

 それにしても、2つのキャンパスはそれぞれに趣があってきれいだし、気持ちいいですよね。また、幅広く多彩な5つの学部、9つの学科があって、様々なことが学べ、多様な人が集う、素敵な大学だなと感じています。

長崎県立大学の面白さはどこにあるとお考えでしょうか?

 経営、地域創造、国際社会、情報システム、看護栄養という、それぞれに特色のある学部・学科がそろっているのは、大学としての強みの一つだと思います。
 体験的、実践的な活動や少人数での丁寧な指導などで、学生の皆さんの力を大きく伸ばしていることも、うちの大学の「売り」です。

長崎県立大学の印象はどうですか?
 学生の皆さんがとても明るくて、気持ちがいいです。こんなお年寄りにも優しく挨拶を返してくれますし。学生の皆さんが楽しそうなら、私もうれしいです。
 また、みんな、とても素直だなと感じます。学生に限らず、仕事でもそうですが、素直な人は伸びます。伸びしろが大きそうだから、これからがとても楽しみです。

学長として意識していることや、やりがいをどのような所に見出したいと思っていますか?
 学生の皆さんが元気にのびのびと学び、活動し、力を伸ばせる大学にすることです。また、ここで働く教職員の皆さんにとっても、気持ちよく仕事をして力を発揮してもらえる職場にしたいです。

 大学経営の視点からは、この先も少子化が進み1学年の人数が減り続ける中で、長崎県立大学が、教育の質を確保しながら、これからも発展していけるようにしなきゃいけないと思っています。50年後も100年後も、選んでもらえる大学、「必要不可欠だ、なくては困る」と言ってもらえる大学にすることです。

大学4年間の中で学生の皆さんに取り組んでほしいことなどはありますか?
 大学の4年間は本当に贅沢な時間です。でも、私もそうでしたが、在学中は気付かないものです。この貴重な時間を最大限に生かすために、今がチャンスだから、いろんなことに積極的に挑戦してください。興味を持ったことはやってみればいい。違うと思ったら、また他を探せばいいんです。
 失敗したって構いません。失敗や挫折、悩んだり苦しんだり泣いたりする経験だって、とても大切です。挑戦しないでモヤモヤを残すより、挑戦して失敗する方がずっといい。私はそう思います。
学生広報スタッフみんなで学長を取材しました!

学長ご自身が大学時代にしておいてよかったこと、また反対にしておけばよかったなどの後悔していることはありますか?
 しておいてよかったこと・・・。どうにか卒業できたことですかね(笑)。危ない時期もありましたから。

 一番の財産は友達でしょうね。いつも一緒に集まって、いろんな話をしたり、しょっちゅう飲んだりしていました。また、高校時代の同級生で東京に来ていた友達ともよく会いました。もちろん勉強もしましたよ。一応言っておきますけど。公務員試験も、受けようと思いついてから独学で法律職で受けました。

 後悔は、外国語とプログラミングをもっとちゃんと勉強しておけばよかった、とつくづく思います。時間はあったのに・・・。皆さんはそんな悔いを残さないでくださいね。

 大学時代は、専攻を選ぶときも、就活の間も、自分が将来何をしたいのか、何に向いているのか、さっぱり分からず、ずっと迷い続けていた気がします。だけど、そうやって悩んだり回り道をしたことも、私には必要な時間だったのだと思います。
 きれいな一本道で進む必要なんてないし、人と比べる必要もないです。もしも私と同じように悩んでいる人がいたら、いいんだよ、それで、と言ってあげたいです。

長崎県立大学の学生に求める学生像のようなものはありますか?
 ありません。私自身、「こうあるべき」なんて人から求められるのは嫌いだし、人にも求めません。一人一人が自分の生き方を考えて、やりたいことに取り組めばいい。大学がその助けになればと願っています。

 大学生の時期って、いろんな経験を通じて世界を広げる時期です。1年前の自分と今の自分、1年後の自分は、きっとそれぞれ全く違います。
 私は、世界を広げるには「他者」の存在や力が不可欠だと思っているんです。自分以外の人と関わることで、知らなかったことを知ったり、新たな見方や考え方に気づいたり、ぶつかり合ったりすることもあるでしょう。そういう経験を通して、それまでの殻を破って新しい自分へと脱皮していく。それが成長につながると考えています。

学長ご自身が生きていくうえで大切にしているモットーのようなものはありますか?
 心に留めていることはたくさんあります。たとえば、入学式でもお話しした「人を人と比べない」「人をおとしめない」ということもそうです。

 仕事の上でこれまで通してきたと言えるのは、どうしても納得できない、賛成できないときは、相手がいくら偉い人でも、黙って従うのではなく意見を言うことです。組織人ですから最後は結論に従いますけどね。意見を言う機会があるのに言わないでおいて、後でブツブツ文句を言うなんて、私は嫌です。
 僻地の貧しい環境に育ったせいもあるかもしれませんが、強いもの、長いものに寄りかかるのは嫌いです。100人のうち95人がAだと言っても、「自分はどう思うか」「本来どうあるべきか」から考えることを大切にしています。なるべく悔いを残したくないんですよ。

学生広報スタッフにこれをしてほしい!みたいなことはありますか?
 学生の目線から本学の魅力をたくさん発信し、多くの人に伝えてください。「伝えたつもり」ではなく、相手に「伝わる」ようにね。学生の皆さんの活動も、何月何日に〇〇サークル、○○団体が活動をします!といったようなことも発信すればいいと思います。
 個人的には、学生の皆さんとの接点を増やしたいので、取材でも雑談でも、ぜひ来てください。

長崎県大学をどのように変えていきたいですか?
 来たばかりで、いきなり「変える」と言うのも傲慢でしょう。まずは現状をよく知らないといけないと思います。皆さん、これまでも努力してこられていますから、良い面、守っていかなきゃいけない面もたくさんあるでしょう。一方で、もしかすると変えた方がよいことや、時代の変化に合わせて見直すべきことなども出てきているかもしれません。そういうことを、関係の皆さんと相談しながら、一つ一つやっていきます。

 今感じていることの一つは、両キャンパス間の交流や学部・学科を超えての交流が思っていたより少なくて、なんだかもったいないな、ということかな。そう思いませんか。他の学部、学科にも面白い人、いっぱいいますよ。
 でも一番は、学生、教職員が伸び伸び気持ちよく力を伸ばせる環境づくりです。この大学に来てよかったと感じてもらえる大学にすることが第一で、変えるとかどうとかは、そのために必要かどうかで判断していくことだと思います。

学長の趣味は何ですか?
 不器用で、同時に二つのことをできないんです。何かをやっている途中で他のことを始めたら、もう前のことを忘れてますから。仕事も、好きとは言いませんが、やる以上はきちっとやりたい方なので、他のことに目を向ける余裕がないんですよね。上手に切り替えて趣味を楽しんでいる人がうらやましいです。
 傍からは趣味っぽく見えるかもしれないな、と思うのはジョギングかな。本当は運動不足解消のためにやっているだけですが。文科省時代も昼休みに皇居の周りを走ったりしていましたし、50歳を過ぎてから初めてフルマラソンもやって、4回走りました。だけど、長い距離はもう無理かな。今は毎朝5キロくらい走っています。ふつうは雨だと走れないですが、佐世保には日本一長いアーケード商店街があって、雨でも走れます。天国ですよ!

長崎県立大学に一つ新しく学部を作るなら?
 そんなこと私が言うと、皆さんびっくりするでしょ。言いません(笑)。
 18歳人口が減っていく中で、新たに付け加えるのはハードルが高いかもしれませんね。一方で、どんな組織も未来永劫ではないですから、社会のニーズの変化等に応じて不断に見直していくことは必要でしょうね。
笑顔で学生に語り掛ける浅田学長
常に優しく語り掛けるお姿が印象的でした
外国語学習についてどうお考えですか?
 英語はずっと苦手です。特に聴き取りは今でもダメです。うちの中学校では、1年のとき、英語は国語の先生から習ったんですよ。昔は音声教材もなかったですしね。大学入試センターで仕事をしていたときに、英語4技能を測る検定試験などを大学入試で活用するという話がありました。私はそれまで検定等を受けたことが一度もなかったので、どういうものか知らないといけないと思い、55歳のにわか勉強で英検の2級と準1級を受けてギリギリ合格しましたが、スピーキングのテストでは何を聞かれているのか分からない問もありました(笑)。

 そんな私が言うのも何ですが、反省の上に立ってアドバイスをするとすれば、一つは、とにかく毎日継続して勉強すること。授業の時間だけじゃ、そりゃ忘れます。二つ目は、教材もいろいろあって目移りしますが、あちこち手を出すより、1冊に絞って繰り返しやった方が効果を実感できる気がします。三つ目は、耳で覚えることかな。突然中国での勤務を命じられて35歳で赴任しましたが、それまで中国語なんて見たこともなかったので焦りました。一番役に立ったのは、毎日ひたすら教材を聴いたことでした。耳に残って自然に覚えますから。
 長崎県全体もそうでしょうが、特に佐世保の街は外国人の方が多く、英語を耳にする機会も多いですよね。その人たちと英語で話せたら楽しいでしょうし、かっこいいですよね(笑)。

学長は文科省で勤められていた時、教育とどのように関わっておられましたか?
 大臣官房という総合調整の仕事や、大学、大学院、高専を担当する高等教育局が比較的長いです。他に初等中等教育や生涯学習、文化財や世界遺産の仕事もしました。大臣秘書官や内閣審議官、教育再生実行会議担当室長や国立教育政策研究所長なんてのもしています。何と言っても印象的なのは中学校長の経験です。

中学校の校長先生をされる前後での気持ちの変化は?(教育への思いなども)
 霞が関での仕事が続いて、これは自分がやりたい仕事と違う、このままじゃ死ぬときに後悔すると思うようになったのがきっかけで、公立中学校で現場の仕事をしたいと考えるようになりました。でも、そんなルートも前例も無いので、無理だろうなと思いつつ、上の人に直談判しました。最初から諦めないでチャレンジしてよかったです。
 学校現場は毎日が新鮮です。日々、何かが起きます。生徒がいるんですから。悪さをする生徒たちもいて、よく校長室に、時には保護者同伴で呼んだりしましたが、事前の想像と違って、彼らは甘えん坊なんですよ。誰かに構って欲しくて仕方がない。そういう子たちも含めて、皆、可愛いかったです。

 どこの組織もそうですが、中に入らないと分からないこと、見えないことが必ずあります。いくら近づいても、外からは決して見えない部分がある。そのことを身をもって知ったことが、その後の仕事でも随分自信になりました。文科省の誰かが学校現場を下に見るようなことを言えば、「現場はそんなに愚かじゃない!」と反論しました。黙っていたら認めたことになりますから。そんなの、我慢できません。

学長は読書をどのようなときにされるのか? 読書が苦手な人へ伝えたいことは?? 読書の意味は?
 好きだから読むだけです。仕事で必要なこともありますし、息抜きで読むこともあります。読書は、義務にするとつまらなくなります。読みたいから読む、でいいんです。つまらなければ途中でやめていい。無理して最後まで読んだら本が嫌いになります。感想文なんかも無理に書かせるものじゃないです。1冊読んで、1文だけ心に残れば、それで十分です。人より読むのが遅いとか、そんなことは全く気にする必要ないです。早けりゃいいってものではないですから。でも、読んでは欲しい。月に1冊でもいいです。時おり読み返したくなるような、好きな本が何冊かあると素敵だなと思います。

学長のお好きな本や、おすすめの本はありますか?
 何でも読むんですけど、強いていえば、若い頃は小説や哲学、心理学などの関係が多かったです。就職してからは、仕事柄、教育関係や社会問題などの本が多いですかね。
 最近はコミックでも、ヤングケアラーや児童虐待、老人介護、知的障害などの重いテーマを扱った、とても良いものがあります。お薦めですよ。
 難しいことを考える時間が長いので、気分転換にはお笑い系の本なども読みます。笑える本は大好きです。

学長に就任されて、長崎県立大学や長崎県でやってみたいことはありますか?
 県内全部の市町に行きたいです。
 今はまだ仕事で手一杯で余裕がないですが、落ち着いてきたら長崎を楽しみたいです。これまでも仕事や旅行では何度も来ていますし、中学校長の時は修学旅行の引率で3年連続で来ましたが、観光ではなく地元の人間として楽しみたいです。

 こちらには仕事関係以外の友達がいないので、飲む機会も減りました。健康にはいいけど、ちょっと寂しいな。こちらは車で通勤する人が多いので、夕方急に誘うのも無理ですしね。あ、学生にお酒の話はしない方がいいか・・・。お酒は飲まない方がいいです。深い反省を込めて、心の底からそう思います。

 これまでの経歴を伺って、全て忙しそうな仕事でしたが、自分の時間の確保や息抜きはどのようにされているのですか?
 忙しかったですよ。最初の頃は土曜日も仕事でしたし、その土曜日も日曜の朝に帰宅するような生活でしたから。まさに「滅私」で、不健康な生活でした。
 だけど、公の仕事ができるのは幸運なことだと思っていたし、やる以上はちゃんとやりたい性格なので、仕事以外のことは全部後回しにしてきた気がします。今はそんなのはダメって言われるんでしょうけどね。もっと早く「働き方改革」の時代がくればよかったのに。
息抜きね・・・。今は寝ること、飲むこと、くらいですかね。

公教育が民間の教育に求めることは何でしょうか?
 民間の教育関係機関と公教育との連携ということでしょうか? 
 かつては敵対しているみたいなところもありましたが、今は連携できることはしていこうという雰囲気になっています。いわゆる不登校の子たちや発達障害の子たち、日本語の力が十分でない子たちへの個別に近い支援など、民間の教育関係機関が学校に先駆けて取り組んできたような分野もあります。他にも、スポーツや芸術などが分かりやすい例ですが、学習面でも、学校の授業よりずっと上のレベルのことをしたいという子だっていますよね。
 そうした個々のニーズには、学校ではどうしても十分にカバーしきれないところがあります。地域全体、社会全体で子どもたちの学び、成長を応援していくという視点に立てば、お互いの強いところを持ち寄って協力、分担するのが一番いいんじゃないかと思います。

【編集後記】
 ご自身のキャリアの中で一貫して現場主義を貫かれてきた学長の姿が、今回の取材を通して大変印象的でした。また、長崎県立大学を、多くの人たちに必要とされる大学にしたいという強い思いが伝わりました。併せて、私たち学生に優しく接してくださる眼差しも印象的でした。私たちも、日々の学びの中で少しでも成長し、何事にも挑戦し続けることのできる学生でいたいな思いました。そんな想いを抱く取材となりました。
 浅田学長、本当にありがとうございました。

(学生広報スタッフ 学長取材チーム)
チームリーダー 執筆 地域創造学部 実践経済学科 3年 山根 健太郎
地域創造学部 公共政策学科 4年 古賀 香雪
地域創造学部 公共政策学科 3年 村井 雅
地域創造学部 公共政策学科 2年 金子 智香
地域創造学部 公共政策学科 2年 鷹巣 心音
地域創造学部 実践経済学科 4年 笠原 早詠
地域創造学部 実践経済学科 4年 松尾 岳拓
地域創造学部 実践経済学科 3年 高橋 美喜
地域創造学部 実践経済学科 3年 松永 侑花


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