本文へ移動
 
本学教員がコロナ禍での教育実践に係る書籍を発刊しました
2023-03-02
カテゴリ:お知らせ
 2020年、世界は新型コロナウイルスという未曽有の脅威に直面し、その影響は社会の多岐に渡りました。その影響は教育も例外ではなく、感染症拡大を食い止めつつ、いかに学びを止めないのか。それは教育界に投げかけられた大きな課題とも言えました。

 そうした世界的危機の中、本学でかつて教鞭を執られていた前副学長 古河 幹夫氏を中心とし、岩重 聡美 副学長、橋本 優花里 副学長らが、コロナ禍でいかに実りある学びを継続していくのか。その取り組みについて取りまとめた書籍「地方から学びの輝きを~コロナ禍における地方大学での教育実践と考察」を発刊しました。今日は、共同執筆を担当された岩重 聡美 副学長に、今回の書籍のこと、そしてコロナ禍での学びの継続についてお話を伺いました!
「地方から学びの輝きを」の表紙。本学での教育実践の日々の記録です。
・まずは今回の書籍の概要について教えてください。

 少しづつ明るい方向に向かいつつあるようにも思われる目下のコロナ禍ですが、その教育界への影響は本当に多大なものでした。そもそも、対面で行っていた講義ができなくなってしまったのですから、教育の場がある意味消滅してしまったような状況でした。しかし、本学で学ぶ学生のために、学びを止めてはいけない。どんな逆境の中でも、教員として教育にベストを尽くすこと、それが使命であるという思いが強くなりました。
 そこから、コロナ禍でも学びを止めないために私たちの教育へのトライ&エラーが始まりました。この本は、本学教員達によるコロナ禍における新たな教育実践の挑戦とその結果、そしてその検証について皆さまに知っていただくために発刊したものです。

・学校に「来る」ことができないという、今までの常識すら変わってしまった状況の中、その取り組みに様々な困難があったと思います。先生がコロナ禍での教育で、特に強くお感じになったことをお聞かせください。

 学びの継続を模索する中、好都合なことにリモート講義に好都合なICT技術が成熟していることを、改めて私たち教員も認識しました。ネガティブな要因がクローズアップされるコロナ禍ではありますが、この未曽有の危機により、こうしたICT技術を教育に有効活用すれば、「空間」や、「時間」を超えた学びの提供も可能になる。いわば、危機をきっかけに新しい学びの可能性に気づくことができたのです。いわば「コロナだから」という負の言い訳でなく「コロナだからこそ」見いだせた新しい学びの姿があったと考えています。
 事実、海外の大学と共同で連携した講義を実施することもできました。これは、コロナ禍という大きなパラダイムシフトによりもたらされた新しい可能性と言えます。

 もちろん、ICT技術を用いたリモート講義においては、やはり学生も教員も対面での講義に比べ、双方に情報量が減ってしまうことは否定できませんでした。だからこそ、講義の進め方や、より丁寧なコミュニケーション、資料への工夫、そしてなにより、学生たちを想い、ともに学びを共創していくという意識を、今まで以上に強く持って講義に臨んできたつもりです。工夫をし、講義を行い、学生たちからの反応や、自身の反省を踏まえた振り返りを新しい取り組みにつなげていく、その積み重ねでした。

・コロナ禍での学びを止めない取り組み、これはもしかすると先生方だけでなく、学生と共に取り組んできたという側面もあるのかもしれませんね。
 
 私自身、学生と共に「教育の灯を消さない」という強い想いを持って来ました。切り離された世界であっても、学生たちに一つでも多くの知識や経験を与えたい、という熱意に動かされてきた日々でした。そこでのトライ&エラーは、学生と共に取り組んだものです。そして、今回書籍の中で言及されていることは、本学の学びのレジリエンス(強靭さ)を高めるための様々な取り組みを、コロナ禍を生きてきたいわば「生き証人」として、未来へつなげていく意味合いも込めています。

・社会は今、アフターコロナに向けて大きく舵を切っているように思います。今、この試行錯誤の日々を振り返り、どのようにお感じですか。

 今、取材を受けているのは3月ですが、私たちの大学から、コロナ禍での日々を過ごした学生たちがまた卒業していきます。私たち教員がどれだけ努力をしても、また学生たちがどれだけ懸命に学びに励んでも、そのネガティブな要因のすべてを消し去ることはできなかったかもしれません。しかし、卒業を待つ学生たちの背中からは、コロナ禍の中でも、たくましく学びに励み、成長したたくましさを感じずにはいられないのです。
 どんな危機の中でも、教員・学生の真摯な努力で、前に進むことができる。そして、学びのレジリエンスは、本学のレガシーとして未来につなげていくことができる。そうした思いを強く感じています。

・最後に、この本をどのような方に手に取っていただきたいですか。

 未曽有の危機の中で、私たち長崎県立大学の教員が、学生たちと共にどのような取り組みをしてきたのか、その試行錯誤の日々、そして新たな可能性を求めた模索の日々がこの本の中にあります。長崎という地で、実践的学びを掲げる本学が、地域から世界に羽ばたいていく学生を育てるため、どのような取り組みをしてきたのか。是非、本書を通じて、その努力や、教員・学生の姿を感じていただけると幸いです。


 コロナ禍を「危機」に終わらせず、新しい学びの可能性を模索していく中「学びのレジリエンス」を高める姿。いわば、ピンチをチャンスに変え、学生への学びの質を高めたい先生方の熱意を感じずにいられない取材でした。

 今回の書籍は、ナカニシヤ出版より発行されております。是非、お手に取ってご覧くださいますようお願いいたします。
 
TOPへ戻る