学生広報スタッフ「教員取材企画」~公共政策学科 准教授 石田 聖先生~
2024-12-12
カテゴリ:お知らせ
皆さんこんにちは!佐世保校学生広報スタッフです。本学の先生方を取材しご紹介する「教員取材シリーズ」。今回は公共政策学科の石田聖先生に取材しました!
1.専門分野は何ですか?
私の専門分野は公共政策学です。公共ってその地域の課題解決を政府と行政だけが担うものではなくて、市民やNPOなどの主体が協力して、より良い政策を形づくっていこうとするものです。米国西海岸での留学経験から、自身が面白いと感じた政策的な合意形成、市民参加や公民協働の取組みをサポートする中間支援組織の研究を続けてきました。
実際、日本の場合は、行政機関などが強い場面もあります。私は研究の軸としては、みんなが安心して参加でき、協働・協力できる社会的な条件ってなんだろうと常に考えています。世界の中で、力を持たない人たちがどうやったらある程度対等な場で地域のことを考えられるか、何か物事が起きた時に課題をどう解決するか、合意形成や紛争の予防をする人たちのお手伝いをどういう形で行えばいいのかなどを考えていけたらいいなと思っています。そして、できればそれを面白く考えられたらいいなと思っています。みんなが安心安全に参加協力できるか、社会をどう作るのかは、研究だけでなく実践としても体験できると面白いのかなと思います。 私が授業で大切にしていることは、「とにかく考え続ける」、「思考を止めない」という考ことですね。とにかく思考を止めないことが大事で、アウトプットすることも授業で重視しています。
2.教育理念は何ですか?
基本的に、自分が現地で学んできたことや獲得したことをできる限りリアルに学生に伝えられたらいいなと思っています。皆さん一人ひとりに自分のことは自分で決める感覚を持ってほしいと思っていますね。仮に人から言われたことがあったとしても、それを自分の力でコントロールして自分の意思決定、決断ができるようになってほしいと思っています。だから研究室の卒論テーマですが、公共政策学科自体がいろんな専門分野の教員で構成されているため、「テーマは自由にしていいよ」と言います。ただし、テーマは自由にしていいけれど、自分の選んだテーマに対して責任を持ってやってほしいですね。社会に出たときに多くの逆境もある中で自分の意思や考え方を貫ける大人であってほしいです。もう一つは、必要があれば他者と協働することを積極的に実践してほしいですね。一人じゃできないことも多いので。
3.学生時代に力を入れたことは何ですか?
私は学生時代ずっと読書をしていました。高校までは全く本を読んでいなかったのですが、大学ゼミの厳しい先輩が語学も堪能な方であったり、他大学との合同ゼミ合宿で読書家の優秀な論客がいて、負けてたまるかと思って本を読むようになりました。大体一日に5,6冊を図書館で読んでいました。とにかく読んでなかったので哲学書とか色々読みました。指導教官が本を好きだったので、色んな本を教えてもらいました。今まで読んだ本の中で一番面白かったのは、ヘーゲルの『法哲学講義』(長谷川宏訳)です。学生時代は、ヘーゲルに私は結構ハマっていました。あとは現在も、オンラインで他大学の学生も交えて古典読書会をすることもあります。皆さんともよかったら一緒に読書会をして話したいですね。
4.大学教員を目指そうと思ったきっかけは何ですか?
大学教員を目指すきっかけは、大学卒業前に参加した研究会で、外国の先生たちが日本の歴史や文化について非常に詳しく日本語で話しているのを見て、その言語化能力や説得力に感銘を受けたからです。自身も世間で漠然と捉えられている社会の事象や構造を体系的に把握し、言語化し、他者に伝えるという仕事に憧れを抱いたという点は大きいです。
研究者という職業は比較的自由度が高く、自分で研究テーマを設定できるのが魅力ですし、分野にもよりますが、一般的な職場では得られない多様な経験を積むことができる点も大きいです。また、研究者、専門職としてプロを目指したかったというのも、重要な動機の一つです。
5.長崎県立大学で学ぶメリットや大学の魅力は何ですか?
長崎県立大学の魅力は、まず素直で真面目な学生が多いところです。成長の伸び代が大きい学生が多く、最初はおとなしかった学生が地域に出て大人と交渉したり、「先生、こんなことがあったので、次にフィールドワークに行きましょう!」と積極的に提案するようになったりする成長ぶりを見るのは非常に面白いです。 また、大都市部だけではなく、いろんな自治体から学生が集まってきているので、その学生たちとの交流も楽しいです。私が知らない地域の特産品や伝統文化、観光スポットについての話を聞くことで、それぞれの地域の魅力を教えてもらう機会が多いと思います。さらに、そうした学生たちが、具体的に地域のことをストーリーとして国内外に伝える力をもっと鍛えられたら、より面白くなると思っています。
6. 学生に求めるものは何ですか?
学生に求めることは、まず「考えるだけではだめ」ということです。自分から行動に移すことが大切ですが、行動した後にはしっかり振り返り、その経験を次に活かすことも重要です。そうしないと、行き詰まることが多いからです。振り返るうえでは、学生時代には、しっかりと本や論文を読んだりして、自身が向き合った対象をどう客観的に分析できるのか、社会の中でどう位置づけることができるかについても思考や実践を深める経験を積んだり、そのための時間を作ってほしいと思います。
また、地域の起業家や経営者、政治行政のリーダーなど、組織としての大学だからこそ呼べる講演者のイベントには、視野を広げるために積極的に参加してほしいです。自分のスキルや想像力を広げるためには、生の情報を取りに行くことが必要です。例えば、他の大学の掲示板を見るだけでも、その大学の特色やさまざまなチャレンジを知ることにも役立ちます。県立大だけに留まらず、もっと広い世界に目を向けてほしいです。 さらに、自信を持ち、その自信をつけるために勉強や実践を積むことが大切です。良い質問を投げかけ、常に物事を疑う姿勢を持ってほしいです。
7.現在、大学へ行かなくても学べる時代ですが、そんな今、大学へ行く意義は?
別に極論、大学には行かなくても良いと(行かなくても学ぶことはできる時代)と考えています。
高校までの教育は、受験勉強が中心で、ある種の正解を求める受け身的な学びです。
大学で行われている「インターンシップ」等の授業も、授業としてやる(やらされる)のではなく、必要だと考えるのであれば、個人的に経験を積めばよいと考えています。
強いて大学へ行く意義を挙げるのならば、大学生という身分です。大学では、学問の他にも学生という身分でなければ実行が難しいことも多くあります。留学やゼミ、サークルなどが挙げられます。こうした経験から得られるチャレンジ精神や行動力、人間関係の構築力などは、本を読んだり、ネットやSNSだけでは絶対に得ることができません。また、学生という身分は「何者でもない」ため、「もがき苦しめること」が大学生最大の強みだといえると思います。だからこそ、大学4年間の中で多くの経験をして欲しいし、何者かになろうとして、もがき苦しんで、そこで成長して、次に繋げていってほしいなと思います。その点が大学に通う最大の意義なのかなと思います!
8.趣味は何ですか?
プライベートでは、夜景の写真撮影が癒しの時間です。夜の風景こそ、町の本質(すっぴん)がうかがい知れるような気がするからです。あと、佐世保独楽を回すことも大好きです。独楽という遊びを通じて、皆が楽しめる「公共的な空間」を創り出すことができるので、私の推しなんです。みなさんも独楽を回してみてくださいね!
でもやっぱり、一番は、妻(パートナー)が作ってくれる麻婆豆腐を食べることが好きですね。妻の料理が日々の癒しになっていますし、妻には感謝しても感謝しきれないです。いつもありがとうございます!(笑)
9.学生に一言メッセージをお願いします。
やはり、「思考を止めるな」ですかね! これは、私も好きな哲学者ハンナ・アーレントの著作『人間の条件』という本にも貫かれているテーマだと思います。学生の皆さんには、目標に向かって自分自身のすべきことを明確にして、歩んでいってほしいです。大学生という「身分」の中で、たくさんもがき苦しんで、もがき苦しんで、成長に繋げていってほしいですね。
より良い学生生活になることを切に願っております!
取材:地域創造学部実践経済学科 4年 山根健太郎
書記:経営学部経営学科 3年 増田陽
地域創造学部実践経済学科 1年 宮田桜
撮影:地域創造学部公共政策学科 4年 野﨑諒太