ローカルメディアの役割に着目し、持続可能な観光の情報発信を検討
国際社会学部 国際社会学科 教授
国際社会学部 国際社会学科 教授
賈 曦 (ジャ シ)
#開発援助論 #環境保全 #メディア論 #国際コミュニケ―ション
Q.01
研究テーマとその内容、具体的な取り組みについて教えてください。
A.
地方において、過疎化や高齢化に伴う人口減少や産業衰退等、様々な課題を抱えています。こうした現状の中、地域の再生に重要な役割を担うと期待されるローカルメディアは、全国メディアがカバーできない地域の問題に分け入り、地域住民と共に問題解決の方途を探る役割を果たし、地域ならではの問題解決に貢献するよう求められています。そこに、ローカルメディアの役割を着目し、地域にとって重要な課題である持続的な発展にかかる取り組み、特に、持続可能な観光につながる情報発信の可能性を検討し、地域ならではの強みを基盤にする持続可能な観光を推進できるローカルメディアの在り方を探っていきたいです。
Q.02
この研究をはじめようと思ったきっかけについて教えてください。
A.
2019年の教皇フランシスコの訪日報道の比較調査研究を行う中、ローカルメディアは、長年地元のニュースを取材し続けてきた経験を活かし、インターネットでも見つけるのが難しいような地域情報を発信し、全国的なメディアではかえって難しい、独自の役割を地域で果たしていることを明らかにしました。また、その後の研究活動では、地域メディアは、多様なプレイヤー(自治体・地元企業等)と連携し、地域で起きている問題をニュースとして一時的に取り上げるだけでなく、問題の改善・解決まで主体的に関わっていくことも認識しました。ゼミでは、持続可能な観光をテーマとしている中、学生と一緒に地域メディアの特性を生かし、地方に根差したローカル局の特異性や優位性が発揮できるテーマを考え、今の研究テーマにたどり着きました。
Q.03
研究内容が身近な社会とどのように関わり、影響を及ぼすのか教えてください。
A.
新型コロナウイルス感染拡大前の2019年、インバウンド観光が停滞する日本経済の起爆剤になることも期待されましたが、コロナ禍で海外からの入国者は激減、感染収束は見通しが立たないまま、2022年に入りました。世界でサスティナブル・ツーリズムやSDGsの概念が受け入れられている中、地方におけるSDGs的な観光に関わるローカルメディアの報道を考察することにより、地域の魅力を再発見することに繋がり、新たな取り組みを行うことができようになり、さらに地域活性化につながる可能性を秘めているのではないかと考えています。
Q.04
今後、研究をどのように進めていこうと考えていますか。
A.
持続可能な観光をテーマとするローカルメディアの報道を考察し、コンテンツの特徴を明らかにしていきたいです。また、聞き取り調査なども行い、JNTO、自治体などの統計データと照らし合わせ、情報発信の有効性を検証していきます。さらに、それに基づき事業モデルを提示し、持続可能な観光につながる情報発信の可能性を検討し、地域ならではの強みを基盤にする「持続可能な観光」を推進できるローカルメディアの在り方を検討していきたいと考えています。
Q.05
ゼミや講義で学生を指導をする上で、いつも心がけていることや大切にしていることはありますか。
A.
大学院の時代に、恩師にもよく言われたことですが、「複眼的なものの見方を」持つことが大事と、学生にも伝えています。特に、現代社会の情報が洪水のように溢れている中、メディアリテラシーがとても重要だと考えています。そこに、物事を理解する際、複眼的なものの見方を持つことにより、より全面的、客観的に理解することができると思っております。特に、国際社会学部において、自文化と多文化、過去と現在、先進国と発展途上国、グローバルとローカル、多様な視点から見る複眼的な思考が求められていますので、日々の学習に常に意識することが大事だと考えています。