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学生広報スタッフ「教員取材企画」~実践経済学科 准教授 尹 清洙先生~
2024-08-06
学生広報スタッフ「教員取材企画」~実践経済学科 准教授 尹 清洙先生~
皆さんこんにちは!学生広報スタッフです。今回は実践経済学科准教授 尹 清洙先生の取材を行いました。尹先生ご自身や尹先生から見た長崎県立大学についてインタビューをしました。
1.専門分野は何ですか?
専門分野は「計量経済学」です。自然界と同じく、人間社会にも法則(見えざる手)が存在し、統計学の手法を用いて経済現象の背景に存在する真の原因や枠組みを探求しようとする学問です。
しかし、統計学は本質的に帰納的な学問(部分から全体を推測する)ですので、必ず過誤が存在します。帰納法とは部分からいろいろなことを経験しながら学びながら普遍的な法則を発見するものです。統計学は帰納法的な方法でありながら確率論を取り入れることによって(科学的)一般化を行っています。そういう意味で、統計学の本質は帰納法ですが、間違いを減らし、普遍的な法則を得るために確率論を用いて一般性・普遍性を保つようにしています。そこが、人間の人生と同じく、失敗・反省を繰り返しながら新しいものを学び、成長していくのと似てると思います。
2.教育理念は何ですか?
学部時代の統計学は数学を中心に勉強していたので統計学の本質について知らなかったですね。論文を量産することはできたのですが、統計学の本質は教えながら会得しました。教える中で、教育理念ができました。その教育理念は「『経済学における効率と倫理』を題材に『中庸とは何か』について一緒に考えていく」というものです。20年近い教育活動を通じて自分なりのアンサーはできたと思いますが、実践するのは必ずしも容易ではありません。「中庸」とは単純に言えばバランスのことで、中庸を頭で理解していても実践することはとても難しいことです。近年は宇沢弘文(経済学者)や、マイケル・サンデル(哲学者)の著書などを用いてゼミ生と一緒に答えを探していましたが、来年からは渋沢栄一の「論語と算盤」も追加する予定です。一緒に学びながらゼミ生が成長するのを見ると大変嬉しいし、自分自身もゼミ生から学ぶことが結構多いです。
3. 学生時代をどのように過ごされましたか?
学部時代は非常に自由で天真爛漫な時を過ごしました。人生の中で一番楽しくて有意義な4年間でした。サッカー部に入って学部の半分以上の時間はグラウンドで過ごしました。その時できた仲間は今米国、カナダ、上海、東京などで活躍していますが、いまでもたまに集まって飲みに行ったりします。ロシア、中国、北朝鮮の3カ国の国境で生まれ育ち、異文化が共存する環境であったこともあり、大学でも語学の勉強に力を入れてました。
大学院は京都で10年近く過ごしましたが、貧乏留学生だったので、お昼は大学院、終わってから深夜までバイトをして、平均睡眠時間が5時間という修行の日々でした。全く遊ぶ時間がありませんでしたが、その努力の積み重ねで本学に就職することができました。大変でしたが、明るい未来を夢みながら充実した毎日を過ごしていました。
4.日本(佐世保)と中国の違い
学部時代に過ごした中国は緯度からすると北海道に近いですね。体育の授業ではスキーをしていたぐらい寒い場所でした。だんだん日本の生活にも慣れてきて、佐世保では15年間お世話になりました。田舎町ですが自然豊かで人情深い土地で子育てしやすかったです。温泉に行ったり、愛宕山にもよく登ったりしました。
5.大学教員を目指そうと思ったきっかけは何ですか?
本音で言うと学部を卒業する時、何をしたら良いか分からず選択肢を広げるために大学院に進学することになりました。無為のままというかそんな感じです。但し、学部時代に統計学科所属でしたので数学の勉強と日本語、英語、ロシア語、韓国語などの語学の勉強にも力を入れたのがやはり良かったと思います。語学の本質は人間の認識を共有しようとするものですが、人間は一つの言語システムに慣れると他の言語をノイズだと認識する「バカの壁」も同時にできてしまうものでもあると思います。語学はやはり学ぶより異文化に慣れることが大事で、環境的にいろんな言語に関わる機会があったこと、もちろん単語を覚える努力も大事だと思います。また、中国でも日本でも授業料はすべて免除され、奨学金をいただきながら学問に励むことができました。二つの社会に支えられて今の自分があり、大変ありがたく思っています。
6.長崎県立大学で学ぶメリットや大学の魅力とは?
本学は長崎大学(国立)と長崎国際大学(私立)の真ん中に位置しているので、他大学がグローバル人材育成に力を入れているならば、本学はどちらかというとドメスティックな傾向があり、公務員や地域振興のための中堅人材育成に力を入れているのが特徴だと思います。最近だと学科再編などもあり、理論だけではなく「しまなび」などの実践的なカリキュラムも取り入れながら、理論と実践をバランス良く学べる環境が整っていると感じています。
7.長い期間長崎県立大学にお勤めとのことですが、先生が本学にいらっしゃる期間で変わったことはありますか?
昔は、教員の私たちが「教える」という立場が確立していましたが、現在は学生のために学べる環境の提供やサポートを行いながら学生と「一緒に学ぶ」という機会が増えましたね。特にゼミ生と密にコミュニケーションを取りながら学生から学ぶことも多いです。そして長年本学に勤めていて変わらないいいところだと感じるのは真面目で優秀な学生が多いということです。
8.学生に求めるものは何ですか?
学生はゼミ教員を選ぶことはできても、我々教員は自分のゼミ生を選ぶことはできません。
本学の学生はそもそも優れた学習能力を備えていますので、教員は自由なゼミ環境を与えるように工夫し、学生の良さを伸ばせる環境を提供できれば良いかと思います。
ゼミでの出会いに感謝し、学生の良さをどのように引き出せるか私自身も考えながら、共に成長することができるように日々努力しています。
取材:経営学部経営学科 3年 森永凜奈
撮影:地域創造学部公共政策学科 3年 濵松亜子
書記:地域創造学部実践経済学科 1年 田中将