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ローパスフィルタ(LPF)のインパルス応答

2025-03-25
カテゴリ:数学

ローパスフィルタのインパルス応答はsinc関数であることはよく知られてる.その導出をなるべく簡潔に書いてみる.

連続時間の場合

 時間軸上の関数\(g(t)\)と周波数軸上で定義されたフィルタ\(H(f)\)を所与とする. このフィルタを適用して得られる信号を\(g_H(t)\)とすると,これは \begin{eqnarray} g_H(t) &:=& {\cal F}^{-1}[{\cal F}[g] H] \\ &=& {\cal F}^{-1}[{\cal F}[g] {\cal F}[ {\cal F}^{-1}[H] ] \tag{1} \\ &=& {\cal F}^{-1}[{\cal F}[ g * {\cal F}[ {\cal F}^{-1}[H] ] \tag{2} \\ &=& g * {\cal F}^{-1}[H] \tag{3} \end{eqnarray} のように畳み込みとして表示される.式(1)から(2)のステップは畳み込みのフーリエ変換の公式 \({\cal F}[ g * h] = {\cal F}[g] {\cal F}[h]\) による. 式(3)を積分であらわに書くと \[ g_H(t) = g * h (t) = \int_{-\infty}^\infty g(t - \tau) h(\tau)d\tau,\quad h(t) := \int_{-\infty}^\infty H(f)e^{j2\pi f t}df \]

ローパスフィルタ \[ H(f) = \left\{\begin{array}{cc} 1 & (|f| < f_c) \\ 0 & (otherwise) \end{array} \right. \] で具体化すると, \begin{eqnarray} h(t) &=& \int_{-f_c}^{f_c} e^{j2\pi f t}df = \frac{ e^{j2\pi f_c t} - e^{-j2\pi f_c t} }{j2\pi t} = \frac{ \sin 2\pi f_c t }{ \pi t} \\ g_H(t) &=& \int_{-\infty}^\infty g(t - \tau) \frac{ \sin 2\pi f_c t }{ \pi t} d\tau \end{eqnarray} となる.

離散時間の場合

 離散時間の場合の類似の表現を得るには,つぎの2つの公式を使う. \begin{eqnarray} && {\cal F}[ g * h] = {\cal F}[g] {\cal F}[h], \tag{5} \\ && \qquad {\cal F}[g] = \sum_{t=0}^{N-1} g(t)\exp\left(-\frac{j2\pi ft}{N}\right), \\ && \qquad g * h(t) = \sum_{\tau = 0}^{N-1} g(t-\tau)h(\tau) \\ && \sum_{k=-n}^n \cos(kx) = \frac{\sin(n+\frac{1}{2})x}{\sin(\frac{x}{2})} \tag{6} \end{eqnarray} これらの式で\(g,h\)は整数上で定義される周期\(N\)である.

 フーリエ変換を演算子として抽象的に書けば, 畳み込みの公式(5)はまったく同じ形式で,式(1)は離散でも共通に使える. ローパスフィルタ \(H(f)\) の定義式は連続の場合も同じである. 違うのは フーリエ変換の積分が和に変わることだが,LPFの場合は式(6)のおかげで簡単な式で表せる. 具体的に\(H(f)\)インパルス応答(離散逆フーリエ変換)を計算すると \begin{eqnarray*} h(t) &=& \sum_{f = -f_c}^{f_c} \exp(j 2\pi ft/N) = \sum_{f = -f_c}^{f_c} \cos(2\pi ft/N) \\ &=& \frac{\sin\left(\pi(2f_c + 1)t/N \right) }{\sin(\pi t/N)} \end{eqnarray*} となる.この関数を周期的sinc関数と呼んだり,ディリクレ核と呼んだりする. 連続版との対応について.\(t \ll N\)では \[ \sin(\pi t/N) \approx \pi t/N,\quad \pi(2f_c + 1)t/N \approx 2\pi f_c t/N \] の近似を適用して,\( h(t) \approx N \frac{\sin\left(2f_c \pi t/N \right) }{\pi t} \) と連続版と同じ形式にできる 【若干の違いについての補足.\(N\)倍だけ違うのは,離散では \( {\cal F}^{-1} [ {\cal F} [g] ] = N g \) となること,すなわち式(3)による\(g_H\)は信号を\(N\)倍することによる.また,離散では \(f_c\)はインデックスなので,連続版に対応する「物理的な」カットオフ周波数は\(f_c/N\)になる】.

 公式(5),(6)の導出について.公式(5)は連続の場合と似たように\(g,h\)の周期性を利用して「平行移動」で証明できる. 公式(6)は \( r = \exp(j 2\pi t/N) \) とおくと \(\sum_f r^f \) となり,等比数列の和の公式に帰着できる. 高校数学の美しい物語に解説がある.

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