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一般化CGS静電・電磁単位系を使ったSIからCGSガウス単位系への変換

2024-10-25
カテゴリ:数学,電磁気
①4元化されたCGS単位系: 一般化CGS静電・電磁単位系
いわゆるCGS単位系はcm,g,sからなる3元系であり,電荷に関する固有の次元を持たず, CGS静電単位系では電荷の単位はdyncm,CGS電磁単位系では 電流の単位はdynと,力学の単位であらわされる.一方,国際単位系SI には電流の単位A(アンペア)が独立の次元を持つ.このような次元数が異なる 単位間の変換は一般に困難である.1961年,CGS単位系からSIへの移行措置のために CGS静電単位系,電磁単位系を4元化したものが国際純粋・応用物理学連合 (IUPAP)のSUN委員会 (Symbols, Units, Nomenclature and Fundamental Constants in Physics)により導入された.
  • 一般化CGS静電単位系: 電荷単位Fr(フランクリン)を加えた4元系とする.次元は異なるが,CGS静電単位系と 諸量の数値表示は一致する.
  • 一般化CGS静電単位系: 電流単位Bi(ビオ)を加えた4元系とする.次元は異なるが,CGS静電単位系と 諸量の数値表示は一致する.
(※1961年の文献は見つけらなかった.かわりに 1987年改訂のものを引用する.p.64 (pdfページ 73)にこの単位系への言及がある) フランクリンFrとビオBiはクーロンC,アンペアAと同じ次元で,定数倍しか違わない.そのためメートル法とヤードポンド法の間で長さや質量を換算するのと同様な手順でCGS,SI間の換算ができる. 電荷の固有の次元を持たない元来のCGS系の変換には 通常の電荷QSIとは比例はするが異なる別の物理量 qesu=QSI4πε0dyncm を導入する必要があったが,このようなわかりにくい量の導入は不要になる. 本稿ではそのデモンストレーションとして SIを前提としたマクスウェル方程式をCGSガウス単位系での表記に書き換える.
②Fr, Biを定量するための規則,ε0,μ0,D,Hのスケーリングの導入
一般化CGS単位系は従来のCGS単位系と数値上一致するようにつくられている.それは, 以下の規則で実現できる.
  1. スケールされたε0,μ を導入する. ε=4πε0,μ=μ04π
  2. 一般化CGS静電系では ϵ=1,一般化CGS電磁系では μ=1 となるようにそれぞれの基本単位FrBiを定める.
  3. SIでは,E-B対応で見たとき補助場として D=ε0ECm2,H=B/μ0Am1 を導入した.これと同様のものをCGS系にも導入するが,ϵ,μ をかわりに用いる.その結果,スケールされた電束密度,磁束密度 D=εE=4πD,H=Bμ=4πH を使うことになる.
③ Fr, Biの定量,その比
SIでは真空での誘電率,透磁率は ε0=1074π(cc/ms1)2C2N1m2=8.854187817×1012C2N1m2μ0=4π(107)A2N=1.256637061×106A2N である.ここでccは光速を表す量記号で,具体的な数値は cc=299792458m3×108m=3×1010cm である.これらをcgsに書き換えて,C,Aの定数倍で ε,μ を1にする電荷,電流の単位を探す. また,通常ε0[F/m], μ[H/m] で表示するが,以降の議論に便利なようにA以外は 力学量で表示した. ε=4πε=107(cc/ms1)2C2N1m2=107(cc/102cms1)2C2(105dyn)1(102cm)2=102(cc/cms1)2C2dyn1cm2=(10(cc/cms1)C)2dyn1cm2 となるので, 1Fr=10cc/cms1C=3.33564095198152×109C と新しい電荷単位を選ぶと,ε=1Frdyn1cm2 とできる.
同様に μ=107A2N=107A2105dyn=(10A)2dyn より 1Bi=10A で新しい電流単位Bi(ビオ)を導入すると,μ=1Bi2dyn とできる.
電荷と電流の間には $C=As の関係があるので,1クーロンは静電単位系(esu)と電磁単位系(emu) により 1C=0.1(cc/cms1)Fr=0.1Bis と表示される.またこれより,Fr,Bisの間の換算係数 c=(cc/cms1)FrBis=29979245800FrBis=1() が得られる.
⑤ マクスウェル方程式の非有理化
SI単位系では,マクスウェル方程式は divD=ρrotE=BtdivB=0rotH=j+DtD=ϵ0EB=μ0H と表示される.無理数の球面因子 4πが出現せず,このような表示を有理系であるという. 一方,CGS単位系では4πが出現し,非有理系と呼ばれる.この両者の違いは,ε0,μ0,D,Hを用いるか(有理系),本稿におけるε,μ,D,Hを用いるか(非有理系)による. 実際,ε=4πε0,μ=μ04π,D=4πD,H=4πH を代入して,後者を変数セットに用いるようにマクスウェル方程式を書き換えると divD=4πρrotE=BtdivB=0rotH=4πj+DtD=ϵEB=μH のように球面因子が表れる表式になる.
⑥マクスウェル方程式のCGSガウス系での標示
CGSガウス系では,
  • 電気量は,静電系(cgs-esu; 電荷を Fr で計量.
  • 磁気量は,電磁系(cgs-esmu; 電荷を Bis で計量.
という2系統の単位系を併用することで,ε=1μ=1 を両立している.そのため,電気量と磁気量の両方を含む量方程式をつくるには,電気量の量変数の内部にある Fr のべき乗を換算係数c3.0×1010Fr/(Bis)の べき乗で除して,電気量をBiによる表示に置き換える必要がある. マクスウェル方程式に含まれる電気量の単位は,電荷密度ρCm3Frcm3, 電界強度 EN/CFr1dyn,電束密度DCcm2Frcm2 であるから ρρ/c,EE/c1,DD/c という置き換えをすればよい.また,電気と磁気にまたがる方程式は第2式と第4式で,他は変更されない. したがって, divD=4πρrotE=1cBtdivB=0rotH=4πjc+1cDtD=1Frdyn1cm2EB=1Bi2dynH となる.
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