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【ゼミ紹介⑤】永野ゼミの令和4年度卒業論文を紹介します
2023-07-01

昨年度の永野ゼミの卒業論文は、以下の3本でした。

 

1.近藤銀太:「指遊びゲーム“マッチ” の解析~先攻後攻の優位性~」

(概略)小さいころにやった手遊びも数学を使えば表現できるのではないか、あの手遊びゲームは何という名前なのだろうか、先攻後攻で優位性はあるのだろうか、という疑問が浮かんできた。そこで、新たにゲーム理論、ゲーム木、ミニマックス法をなどについて学んだ。そしてその中で、指遊びがゲーム木によって表せることが分かった。そこで今研究では指遊びにおける選択されうる手をゲーム木によりすべて書き出し、ミニマックス法を用いて、先行後攻の優位性を調べた。(「はじめに」から抜粋)

 

2.山下大智:「倍数判定法~7と11の倍数判定法の証明~」

(概略)・・・何気ない計算で分数の約分をしました。その数は3桁の分数でこれ以上約分できないと思ったが、実際にはもっと小さくできたという出来事がありました。この出来事から中学校くらいに学習した倍数判定法について学び直しました。私は2 の倍数や3 の倍数の判定法は知っているが、7 や11 の倍数の判定法は知らないという一つの疑問が生まれました。詳しく調べてみたところ、7 と11 の倍数判定法自体は載っていたが、一般桁数の証明は探しても見つかりませんでした。そこで7 と11 の倍数判定法の一般桁の証明を自分で導きだし、それを卒業研究の内容にしようと決めました。(「はじめに」から抜粋)

 

3.中山知佳:「3DソフトMikuMikuDanceで自然な風を表現するための考察」

(概略)3DCGソフトはいくつか存在するが、その中にMikuMikuDance というソフトがある。MikuMikuDanceとは無料で配布されている3D アニメーション作成ソフトで3D モデルを動かしアニメーションを制作することに特化したソフトである。3D モデルを作成することはできない。単純な作業で簡単にアニメーションを制作することができるためユーザが多く、MikuMikuDance を用いた色々な作品が動画サイトなどに公開されている。このサイトでは様々なユーザが制作、配布したエフェクトを利用してリアルなアニメーションを作ることが出来るのだが、外的環境を再現するようなエフェクトは作成することが出来ない。私は今回、MikuMikuDance で外的環境の再現、特に自然な風の表現を作ることはできないかと考えた。(「はじめに」から抜粋)

 

ここでは、私の専門分野である「数学」の論文を書いた山下大智君の卒論について詳しく紹介しようと思います。山下君がやったのは、判定法の新発見ではなく、その証明です。山下君が言うには、「7や11の倍数判定法は、ネットなどで検索すると、一応、見つけることはできるが、掲載されているのは、具体的な桁数(8桁、10桁など)の場合の紹介や、その場合の証明である」ということでした。数学は、未だ知られていない事実(定理)を作り出すこともそうですが、知られている定理に別の証明を見つけることも、立派な数学です。山下君は、7と11について、公開されている判定法に、自ら一般的桁数(n桁)でも成り立つ証明をつけました。

 

7の倍数判定法

 n桁の整数Aが7の倍数である(7を約数として持つ)必要十分条件は、Aを下位の桁から3桁づつ区切って、それぞれの3桁の数を下位から数えて奇数番目は足し、偶数番目は引くとして和を取った時、その和が7の倍数であれば、はじめの整数Aは7の倍数である。

 【具体例】7桁の整数A = 8641969 は、まず下位から3桁づつに区切ると、8, 641, 969 の3つに分かれます。これらを下位から数えて奇数番目は足し、偶数番目は引くと

8 − 641 + 969 = 336

で、336 = 7×48 と7の倍数ですから、はじめのA = 8641969 は、7の倍数です。確かに8641969 =7×1234567 ですから、A は7の倍数です。一般的証明で難しいのは、下位から数えて、最後の3桁の数が3桁にならない場合(上述の例)があることです。すべてが3桁の数にきれいに別れれば、つまり、桁数が、3桁、6桁、9桁、・・・の場合は、証明は割と簡単にできますが、この例のように最後が1桁、あるいは、2桁になる場合があるので、これらの場合を全部分けて、ひとつずつ証明をすることです。また、最後の3桁の数(場合によっては、1桁、2桁)が奇数番目か偶数番目かによっても証明の細部が変わってきます。したがって、合計、3(最後が1桁、2桁、3桁)×2(最後が奇数番目、偶数番目)=6通りの証明が必要になります。山下君は、6通りをすべて厳密にチェックしてすべての場合で確かに7の倍数になることを示しました。

 

数学とは論理的・合理的に理由を示すことです。計算は数学ではありません。数学は計算を道具として使い、論理的・合理的な説明をすることです。山下君がやったことも、計算ではなく数がもつ数理構造を論理的・合理的に説明したことです。11の判定法も同様にきちんと証明をつけてくれました。

 

 最後に、本年、私は公開講座を持ちます。そこでは、この山下君の卒論の紹介をし、さらに、7の2つの別判定法も紹介したいと思っています。興味のある方は、是非、講演を聞きに来てください。
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