自分の視点もメディアになる―ZINEから学ぶ、地域の見つけ方・伝え方
2026-08-05
カテゴリ:お知らせ
7月16日、本学公共政策学科「基礎演習」「専門演習」(石田聖ゼミ)にて、佐世保市内で広告・出版・印刷・映像編集等を手掛けている有限会社SK-iコーポレーション代表取締役の川上亮氏と、地元フリーペーパー編集者・ローカルインフルエンサーの白井沙也可氏をゲスト講師に迎え、「あなたの知らないZINEの世界」と題し、ZINEを起点に、地域メディアから考える、まちの見つめ方・伝え方を軸とした授業を実施しました。
ZINE(ジン)は、個人や小さなチームが、自らの関心や視点をもとに自由に制作する自主出版物で、近年、書店やイベント等で注目され、その市場も拡大しているそうです。授業では、お二人が制作したZINEの紹介を皮切りに、写真、文章、イラスト、コラージュに加え、紙質や綴じ方まで、表現のすべてが「編集」になり得ることを学びました。また、ローカルなメディアは名所や店を並べるだけの案内ではなく、地域の人、文化、歴史、などを丁寧にすくい上げ、まちの見え方そのものを更新する仕事であることが語られました。また、川上さんからは「自己探求としてのZINE」ということで、記録・気づき・伝え・つながることを通じて、ZINEを作成する中で自分の起点が見えると、自己理解につながり、就職活動にも活かせるという話題もありました。
授業内では、学生らが実際に多様なZINEを手に取り、大きさや紙の手触り、写真と言葉の配置を確かめながら読み比べました。学生らの感想で目立ったのは「ZINEは想像以上に自由だった」「何気ない街角や古い看板、日常の一瞬も、見方を変えれば作品になる」「日本のマイノリティや自分の価値観を胸張って表現できないような社会において、このZINEの自由さを存分に発揮できるのではないかと感じた」といった発見でした。紙の質感や製本のこだわりにも関心が集まり、普段は意識しない素材やデザインも、作り手の思いを伝える重要な要素であることを実感する時間となりました。
SNSでは情報が次々に流れていく一方、紙の冊子は手元に残り、誰かに手渡され、記憶や対話を生みます。その“遅さ”と“手触り”に、ZINEは地域の魅力を外へ伝えるだけでなく、住む人自身が地元を見直すための鏡にもなります。少数者の声や個人的な記憶、いわば「偏愛」と呼べそうな小さな関心を、商業性に縛られず形にできる点に注目した意見もありました。
地域の魅力は、遠くに探しに行くものとは限らない。いつもの道を少しゆっくり歩き、見過ごしていたものに名前を与え、誰かに届く形へ編み直す。今回の授業は、学生一人ひとりの視点そのものが、まちを語るメディアになり得ることを実感する機会となりました。
川上さん、白井さん、この度は貴重な学びの機会をありがとうございました。




