カントール(Cantor)

 Georg Cantor(1845-1918):集合論の創始者。デンマーク生まれのユダヤ系商人の子としてペテルスブルグに生まれ、1856年ドイツへ移住、Zurichおよびベルリン大学で数学、物理学、哲学を修め、1867年ベルリンで学位を得、Halle大学私講師、1879-1905年同大学教授を勤めた。晩年は病身となり、精神病院で逝った。
 学位論文は整数論に関するものであったが、3角級数の一意性に関する研究から集合論を創始、1874年初めて濃度の概念を導入し、それにより超越数が代数的数以上に多いことを証明した。これは当時の数学界にセンセーションを起こしたが、同時に強い反駁をも受けた。L.Kroneckerらの反対は彼の心を苦しめたが、R.DedekindやG.M.Mittag-Lefflerらは彼を支持した。彼は確率論の歴史の中でも、理論が一般に受け入れられない時期があったのを回顧し、’数学の本質はその自由性にある’と叫んだ。濃度のほか順序型、超限順序数などの概念、基本列による実数論の基礎付けは彼に負うものである。また彼は、Euclid空間の一般の点集合を考察の対象とし、集積点、閉集合、開集合などの概念を定義し、次元論の発端を拓いた。これはいわゆる点集合論の端緒で、位相空間論への道を開いたものである。

岩波 数学辞典 第2版 より抜粋