懐かしの西部劇

2012.08.28

朝日新聞の土曜日版に「RANKING」という特集がある。いろいろな事柄に関する人気投票である。5月の終わり頃に「こよなく愛する西部劇映画」の人気投票があった。

私は十代の頃にはよく西部劇を見た。その頃の映画が沢山リストアップされていたので、今日の散歩は開拓時代のアメリカ西部。西部劇では、native Americanを悪者にして白人の活躍を描くものが多いので、如何なものかというクレームも少なくなかったが、今日は「そのことはさておいて」とさせて頂く。

1位は「シェーン」で、これは順当と言うべきか。「Shane, come back」のラストシーンが印象的である。アメリカで国際会議があったときの帰りに、この映画の舞台になったあたりをドライブして感激であった(写真)。主演のアラン・ラッドは、この1作だけと言っても過言ではない。少年にせがまれて、石を打つシーンも目にもとまらぬ早撃ちで、当時は評判になった。コロコロ跳ねる石に次々と弾丸が命中するのは痛快である。出演時間は少ないのだが、悪役のジャック・パランスの存在感迫力満点。彼がウィスキーではなくコーヒーをすするのが、また良い。

2位に「荒野の七人」。これは、黒澤明の「七人の侍」の西部劇版である。後に主役級になる俳優が大勢7人の中に入っていて、彼らの個性が素晴らしい。その意味で、盗賊達との戦いとなる後半より、7人が揃うまでの過程の方が面白い。導入部で主役のユル・ブリンナーは、何者かに家の2階から狙撃される。弾は彼のくわえている葉巻の先端部分を吹き飛ばすのだが、その葉巻をポイと捨てながら、「大した腕じゃない」とうそぶくあたりがたまらない。
 ちなみに映画の原題は「Magnificent Seven」という。これもまた、国際会議の後、N.Yでブロードウェイを観たことがある。終わったときに、隣の席にいた上品な老婦人が「magnificent!」と言って感激していた。「オー、こういう場面で使う言葉か」と思いつつ、「Yes, I come from Japan to see this musical!」と答えた。老婦人はホントにしたらしく、目を丸くしておられた。「Sorry, it’s a joke. Actually, ・・・」と気の利いたことを言えれば良かったのであるが、とっさに出てくる程英語が上手くない。今でも悪いことしたな、と思っている。

この映画の監督はジョン・スタージェス。彼が監督する映画はたいてい面白い。それらの傑作の中に「決斗3部作」なる3本の西部劇がある。3本の中からは「OK牧場の決斗」しかランクされていなかったのは、いささか不満である。「ゴーストタウンの決斗」はとても面白かった。悪役のリチャード・ウィドマークが強烈な印象であった。悪役をやらせたら彼がナンバーワンである。

同じOK牧場の決斗にまつわるものからは「荒野の決闘」も当然ながらランクインである。この映画ではワイヤット・アープ役のヘンリー・フォンダより、ドク・ホリデイを演じたビクター・マチュアの方が印象的である。同じ監督ジョン・フォードものでは、「駅馬車」が最高ランクで、これは納得。ジョン・ウェインのデビュー作である。打ち合いよりは、同じ駅馬車に乗り合わせた人間模様の描き方で見せる映画であるが、最後の1:3の決闘は迫力がある。ジョン・ウェインは、敵のクラマー兄弟と対決するために、native Americanとの打ち合いで使い果たした筈の弾丸を3発帽子に隠していた。「Sorry, three left」と言いながら、それをライフルに装填して3人と対決するのである。その結果の描き方が面白い。

ベストテンには入らなかったが「大いなる西部」がランクされていたのは嬉しい気がする。この映画のタイトルバックは最高。テキサスの荒野を疾走する馬車を遠くから、あるいは馬の腹にくくりつけたカメラで写す。傑作シーンは、グレゴリー・ペックとチャールトン・ヘストンの殴り合い。ペックがヘストンに別れをつげにくる。「それはご丁寧に」という応答に、「俺の挨拶にはこの部屋は狭過ぎる」とペックは続ける。ヘストンもさっとベッドを出ると、パチンという音をたててジーパンをはき、外で1:1の殴り合い。いかにもヘストンの方が強うそうであるが、もちろん結果は引き分け。二人ともフラフラになって、「お前の挨拶は、随分長いな」となる。

きりがないので、ここらで最後。ランキングの10位は、「リオ・ブラボー」。ここでは、西部劇初出演のディーン・マーチンのギターを弾きながらの歌がとても良かった。「赤い河」が25位にも入っていないのは不可解である。