ハミネ

2012.10.02

「実る程 頭を垂れる 稲穂かな」、おごり高ぶることを戒めた人生訓であるが、実りの秋の田圃(たんぼ)はこの言葉を実感させる。細長い葉の間から、ピンと背筋を伸ばしていた稲穂が、次第に黄色みを帯びてくると、身を隠すように葉の間に頭を垂れていく。

稲刈りが近くなる季節だ。長崎県内の棚田では、段々を形成している斜面の至る所に彼岸花が咲く。名前に実に忠実で、お彼岸の頃に間違いなく花を開く。多年草で根は冬を越すので、咲く場所が決まっている点でも律儀である。黄金色の稲穂と鮮やかな紅色の対比が際立って、実に美しい。

さて、表題の「ハミネ」。皆さんは何を想像するであろうか。漢字で書けば「葉実根」となる。「ヨウジツコン」と読んで、暗記した人も多いであろう。基本的な肥料である「窒素、リン酸、カリ」が、作物のどの部分に主として作用するかを表した言葉である。順番がきちんと対応している。

ここからは、「かなりサイエンス」。葉が茂る時期に必要なのは窒素肥料である。空気の80%は窒素分子であるが、残念ながら植物はこの分子を自らの栄養源として利用することはできない。葉の最も重要な作用は、いうまでもなく炭酸同化作用。空気中にわずか0.035%しか含まれていない(とは言っても、多くなり過ぎたと問題になっている)炭酸ガスを原料として、糖分(植物ではデンプンやセルロース)をつくる化学反応をつかさどる。この変換反応に無くてはならない葉緑素は、窒素を多く含む化合物なのである。

リン酸は「実」を形成するときに必要な肥料である。米、麦、ジャガイモ等どれをとっても、人はこれを「デンプン源」と看做(みな)す。しかし、デンプンはリンを含む化合物ではない。動植物とも、リンを含む主な化合物はDNAである。これは、「種」に含まれる。したがって、種ができる時、即ち実がなる時にリンが必要である。我々は、植物の種子の栄養となるべく用意されたデンプンをチャッカリ頂いて、自分達の栄養としていることになる。

有機農法では、窒素肥料として有機化合物を与える。しかし、植物は、有機化合物に含まれる窒素をそのまま養分として取り込むことはできない。土壌中のバクテリアが含窒素有機化合物を分解して、アンモニアあるいは硝酸イオンにする。これではじめて植物が取り込む。結局は、化学肥料と同じものを取り込んでいるのである。施肥してから時間がかかるし、その時間も微生物次第で、正確に何日とは言い難い。また、作物の種類と耕地面積から葉の量が計算できるので、必要にして十分な窒素肥料の量も計算できる。化学肥料ならちょうど良い量を与えることが可能であるが、有機農法では難しい。

実りの秋の田圃の写真