私の友人 その6

2018.12.10

 その6は再びアメリカ大陸へ。これにちなんで、ヨーロッパからアメリカへ移動した友人のことを紹介したい。二国をまたいで移動する人は珍しくはない。特にカナダとアメリカは、国境はあって無きが如し、の感がある。
 一人目は大陸間移動のAndrious Bomarius、通称Andy。彼と知り合ったのは先に紹介した(2018.09.10)Gordon Conferenceでのこと。当時彼は西ドイツの御三家と言われる大きな化学会社の1つに勤務していた。それが縁あってか、アメリカGeorgia 工科大学(Georgia Tech)に移動した。「風と共に去りぬ」で有名な、またコカ・コーラの本社があるアトランタにある。彼は非常に気さくな感じで、特に親しくした。私が3月に慶應を定年になった2008年に、Gordon Conferenceで講演する機会を頂き、その帰りに彼のラボに寄った。その時、私の研究室にいたドクターコースの学生が彼の研究室に世話になっていたことも訪問した理由の一つである。例によって、払わない・貰わない気楽な交流である。Andyは「お前のところから来ている学生は、俺の言うことホントに分かっているのかな?」と相当心配そうであった。学生に訊くと「大丈夫です、全部分かっています」とアッケラカンとしていたが、チョット怪しい。
 Andyのオフィスは今まで私が見たどのオフィスより、床が散らかっていた。イヤイヤ、散らかっていたという生易しい表現は不適当で床一面書類がある。「Please come in」と言われても、最初の一歩をどこに置けば良いか慎重に床を観察しなければならない、とまあそんな感じである。彼と同じ歩幅で歩くことも要求されると言って大袈裟でない。これは単に散らかっているのではなく、彼にはどこに何があるか分かっている「超整理法」とでも考えないと納得ができない。
 ヨーロッパからアメリカへの2人目はThomas Hudlicky、通称Tom。チェコ系アメリカ人で、彼自身が移住したか、親かその前の世代が移住したかは知らない。知り合った頃はタバコの葉の産地として有名なVirginiaにあるVirginia工科大学の教授であった。彼自身もスモーカーであったが、禁煙志向の特に強いアメリカで、「Smoke the Finest」と書いたTシャツを着て学会に参加していた。
 彼がGordon Conferenceのオーガナイザーをやったことがある。会議は滞りなく終わったのだが、最後が圧巻であった。この会議は金曜の朝解散であるが、木曜日の最後の講演が終わってから(夜9時か10時頃、通常はビールの時間になる)、彼がスライドショーをやった。実によく旅行をしている。彼がこれまで旅行した時に撮った写真を、彼自身のジャズバンドの音楽をバックに次々見せてくれた。世の中には色々な才能をもった奴がいるものだとつくづく思った。
 Tomは後にカナダに移った。カナダ化学会でシンポジウムを企画するから、話してくれと、頼まれたことがあった。場所はWinnipegという東西で言えば真ん中あたりの街。日本からはバンクーバーで国内線に乗り換えて行く。多くの場合、「この国に来た目的は?」と入国審査の際に訊かれたら「Sightseeing観光です」と答えるのが無難である。「講演をするため」等と言って、仕事探しが目的かと誤解されるとゴチャゴチャ説明が必要となる。バンクーバーのときも、観光目的ですと答えたら、「お前はホントにウィニペグに観光に行くのか?」と訊き返された。ウィニペグとはそんな所なのである。しかし、ここでひるんではならじと、「YES」と胸を張ったら、怪訝そうな表情ではあったが、通してもらえた。