私の友人 その5

2018.11.20

 その5はヨーロッパを再び南下して、フランスとドイツへ。フランス人はRoland Frustos(Marseille マルセイユ大学教授)、ドイツ人はFranz Effenberger(Stuttgart 大学教授)のお二人だ。
 アメリカのGordon Conferenceのことは前に書いたが、ヨーロッパには”Biotrans ○○○○”という国際会議(○は西暦年、BiotransはBiotransformationの略で酵素や微生物を利用しする有機化学反応くらいの意味である)がある。Gordon Conferenceが偶数年、”Biotrans”は奇数年と決まっている。
 このヨーロッパの会議がフランスであった頃からRolandと親しくなった。彼との思い出を書く前に「さすがフランス!」と驚いたことを一つ紹介したい。この会議にはConference Dinnerがある。要するに希望者全員で会食するのであるが、フランスの時には、街なかから全員バスで1時間半以上移動した。他に何もない牧場まで行き、そこで丸焼きにした子牛を食べるというディナーであった。体育館のような食堂に2、3百人入っての食事。日付が変わったあたりの時間にジプシーの舞踏団が登場し、皆もハンカチを頭上で回しながら踊り出す。「同じアホなら踊らにゃソンソン」と私も十分食後の運動をしてきた。可哀想なのは翌日朝発表を控えていた日本の友人。あまり酒に強い方でないのに、先に帰ることはできない。ホテルに着いたのは3時か4時頃と後で聞いた。こうまでして食を楽しむのかと、感心した次第である。
 Rolandについても「食」に関する話。彼には学会があって岡山まで来たついでに慶應にも来てもらった。講演の前に大学の職員食堂に連れて行った。すると大変小食である。「体の割に食べないね」と感じつつ、それなら夕食は奮発するかと品川プリンスホテル内のしゃぶしゃぶレストランに招待した。奥さんも一緒に来ていたので、1人にしては気の毒と考え、フランス語の女性の先生も付き合って頂いた。しゃぶしゃぶはもちろん初めてであろうが大変美味しいと気に入って、食事は楽しく進んだ。ここまでは良いのだが、彼は「とても美味しい、お代わりできるか?」と訊いてきた。まさか予算オーバーであるとは言えず、「もちろん、OK」と言って追加注文したのであった。フランス語の先生は「太田さん、懐大丈夫?」と心配そうな顔で訊いてくれたが、これに対しても「先生、頼りにしています」とは口が裂けても言えない。
 ドイツ人のEffenbergerとも食事の話。彼の時は築地市場の近くのお寿司屋さんに連れて行った。コースを頼んだのであるが、最後に寿司が出て来た時、彼は歓喜の声をあげた。色々なものが、次々出てくるが腹の足しになるものが出てこなくて、このまま終わりかと心配していた時に握り寿司がやっと出て来たという訳だ。
 彼は私より年上で、小柄ではあるが筋肉の塊のようなタフな人で、学部長をやった時は「セブンイレブン」であったと言っていた。7時に出勤し、午後11時に帰宅する生活を続けたそうだ。さすがドイツ人は真面目だとも言えるが、逆に冬は2週間山にこもるという。晴れた日だけスキーを楽しむ。2、3泊でスキーに行き、吹雪でも頑張って滑る類いのことはしない。
 彼の研究室を訪ねた時は松葉杖をついて出迎えられ、びっくりした。「どうしたの?」と尋ねると、少し前の休日に山に登り、下山の途中、牧場で牛に襲われて怪我をしたということだった。Stuttgartはドイツの南方の街で、北の海よりアルプスにずっと近い。休日のスケールが違う感じだ。