私の友人 その4

2018.10.10

 その4はヨーロッパを北上します。一人はスェーデンのKarl Holtz、もう一人はイギリスの Nichrous J. Turner。二人の共通点は、慶應の私の研究室に学生を送ってきたことだ。
 まず、Prof. Holtz、というよりKarlはストックホルムの大学教授。彼は細身で、Kurt(2018.09.10)程ではないが、アウトドア派である。東京で会議があるときは、その後長野県の山や高原を訪ねるという。スウェーデンでは冬になると湖が凍る。そのタイミングでストックホルムから北へ行き、スケートで湖上を滑りながら家まで帰るのが楽しみの一つと言っていた。どれくらい北上するか訊いたのだが、覚えていない。「エッ」と驚くほどの距離で100キロ、200キロという単位であった。
 その彼から連絡が来て、自分の学生で、日本で卒業研究をやりたいと言っているのがいる。お前の研究室で引き受けてくれないか、という依頼であった。彼の大学では、必ずしもその大学で卒研をやる必要はなく、最終的責任は担当教授が持つにしても、研究そのものは他大学でも、外国でも構わないという訳だ。国際会議でよく会い、互いのテーマや成果は知っていて気心知れた仲なので、私に打診して来たのだ。
 こちらも研究室に「異分子」が混じることは大歓迎なので、引き受けることにした。経済的なことを言えば、一銭も貰わないし、もちろん払いもしない。学科会議でこういう男が研究室に来る、とアナウンスするだけ。単身者用のゲストハウスが空いているかと事務に問い合わせるくらいのサービスはする。来た学生はヨハン君という長身の男であった。コンピュータが好きだというので、酵素の立体構造をコンピュータで推定しながら反応性を上げていく研究を修士の学生と一緒にやってもらった。研究室の学生諸君と彼も入れて志賀高原へスキーに行った。彼のスピード感あふれるダイナミックな滑りは非常に印象的であった。
 Prof. Nichrous J. Turner、こちらはNick。イギリス人にしては小柄な人で、知り合った時は、エジンバラ(Edinburgh)の教授であっが、後に別の研究所に異動している。彼の研究室からは2ヶ月くらいの期間であったか、ジェンマという女子学生が来た。こちらは日本の学術振興会のプロジェクトで、世界中から夏休み期間中に100人くらいの学生を日本に招待する。その企画に応募したいという学生の依頼で、Nickから問い合わせがあった。日本に行くなら慶應の太田のところへ行けと推薦したいがOKかと言ってきた。「Welcome」ということで、私の研究室に来たのであった。研究室に英語が非常によくできる女子学生がいて、よく面倒を見てくれたので助かった。
 ジェンマはさすがイギリス人というべきか(日本アルプスを世界に紹介したのは英国人宣教師ウェストン)、富士山に登りたいと言った。ならばと、夏の研究室合宿は河口湖に決め、一泊した翌朝早くホテルを出発し、10人くらいの学生と富士山の頂上を目指した。夏の富士登山に技術はいらない。体力的にも普通の学生なら心配ない。問題は高山病である。河口湖と富士山頂の高度差を一気に登ると、頭痛や吐き気を訴える人が出ても不思議はない。こうなると、薬はなく、下山する他ない。ジェンマも相当バテてはいたが、とうとう山頂に達することができた。富士山頂には郵便局があり、絵葉書を投函することができる。当然消印はそれと分かる特別のデザインで、彼女にとっては良い記念になったことだろう。