私の友人 その3

2018.09.10

 その3はアメリカ大陸からヨーロッパへ行くことにする。オーストリアのGraz(グラーツ)という街に2人、親しい教授がいた。Herfried GrienglとKurt Faber、前者がグラーツ大学、後者がグラーツ工科大学であったかと思う。それ程離れていない。2人は対照的なルックスで、Herfried は夏でもピシッとネクタイを締めて上着を着ている人であるのに対し、Kurtは登山する服装・靴で学会に来る人であった。顔もヒゲもじゃの山男である。
 一口に学会と言っても様々なスタイルのものがあるが、アメリカ東海岸で開かれる「Gordon Conference on 〇〇(分野名)」という会議は最もラフなスタイルで行われる会議であった。主催者がOKしないと参加できないので、学問的レベルは高いのだが、服装は短パン、スニーカーが多数派である。実に多くの分野の会議が5校程度のカレッジを利用し、毎週日曜日の夕方集合、金曜の朝に解散で次々と夏休み中に開かれる。参加者は学生寮に宿泊し、学生食堂で食べるというやり方だ。Faber教授はその会に登山靴で参加し、会議終了後は山登りを楽しんでから帰国する。まさか会議場に登山靴を履いて来る訳ではなく、ビーチサンダルである。Griengl教授は、さすがにネクタイは締めていなかったが、きちんと糊の効いたシャツスタイルであったように思う。
 Griengl教授を日本に招いたことがあった。「招く」と言っても自分のポケットマネーで招待する訳ではない。日本学術振興会という機関があり、そこに申請すると審査に通れば旅費を出してくれる。短期プログラムでは最短15日滞在が条件で、相手の都合がつけば申請できることになる。このプログラムでは日本に来てからの旅費や滞在費も出るので、全国の同じ分野で研究している仲間の研究室を訪ねてもらい、セミナーやディスカッションをすることになる。
 成田まで迎えに行くのは遠いので、いつも「成田空港に着いたら、どこ行きでもいいから成田エクスプレスに乗って、東京で降りてくれ。ホームに降り立ったら動かないでくれ」と伝えて、東京駅のホームで会うことにしていた。最も確実で楽な方法である。
 欧米人でも、刺身は食べられないという人は私が知る限り1人もいなかった。そこで、彼を和食レストランへ連れていったのであるが、とても危ないことがあった。刺身の皿に乗っているワサビを塊ごとお箸で器用につまみ上げたと思ったら全部口に入れてしまった。幸いにしてポール・アンカの「マイ・ウェイ」をカラオケで歌って、「吐き出せ」という英単語を知っていたので、口に入れた瞬間に大声で叫び、ことなきを得た。ポール・アンカのおかげでホントに良かった。
 外国人とお付き合いするときは気をつけなければならないことがある。今のワサビもその一つであるが、電車に乗ると切符を捨ててしまう人もいる。外国の電車では降りる時には不要な場合もあるのだ。
 この2人ではないが親しいドイツ人を自宅に招いたことがある。彼は風呂に入った後、湯を全部抜いてしまい、「スマナイ、気をつけたけど床を濡らしてしまった」と詫びてきた。相当日本通の友人であったので、大丈夫と思ったのがうかつであった。