企業訪問

2017.1.25

  地方創生に大学も貢献することが求められている。特に公立大学は設置者が地方自治体であるから、その要請は強い。教員の専門性を活かした貢献、学生の活力を活かした貢献が真っ先に頭に浮かぶが、これに関しては既に様々なことをやっている。教育・研究が即、地域への貢献につながっていることも少なくない。
 現在、長崎県で大きな問題になっていることは人口減、特に若年層の県外流出による社会的人口減で、いかにしてこれに歯止めをかけるかということが深刻な課題である。出て行く人が多くても、入ってくる人も多ければ問題ないが、現在は若年層でマイナス5千人程度である。県の人口は現在136万人強であるが、このまま人口減が続くと2060年には78万人程度になると予想されている。この数字をせめて100万人で止めるために様々な提案がなされている。大学としてもこのまま行けば、現在の規模を維持することは難しいだろう。そこで、現在卒業後も県内に留まる学生数をできるだけ多くしようと全学的に知恵を絞っている。卒業生を県内に留めるためには、働く場があることは絶対の条件である。大学として、この努力は必要であるが、先ずは県内企業の情報をもっと学生に与えることを出発点とした。「現在ある企業の情報を学生に与える」ためには、教職員ももっと県内企業のことを知る必要があるだろうということで、昨年暮れ2日間、いくつかの企業を教職員十数人で訪問させて頂いた。
 全体的には「百聞は一見に如かず」の感を深くした。最初に訪ねたのは遠洋漁業「エンマキ」グループ(遠洋漁業と巻き網からのネーミング)の松浦魚市場。旬(とき)鯖、旬鯵の水揚げでは日本有数の市場で規模が大きい。遠洋漁船と卸業者の間を結ぶ役割なので、朝が早い。朝市の競りが早いのは皆様ご存知の通りだが、ここは小売店やお寿司屋さんの競りにかかる前の仕事であるので、さらに早い。氷の製造も日本一という。漁船が積んでいく氷がストックしてある倉庫は当然氷点下。その大きな倉庫の天井に届く高さまで、大人の体重と同じ程度の重さの大きな氷塊が積まれているのは圧巻である。
 次は乗用車のサイドバッグを分業で製造している中興化成と住商エアバッグ。サイドバッグとは、車が横転した際にドアの辺りから膨らみ、乗っている人を衝撃から守る役目をする。何回か横転することが想定されるので、衝突時に瞬間的に膨らむ前方のエアバッグより膨らんでいる時間が長くなければならない。したがって、中の気体が漏れないように布地に工夫がいる。2つの工場で糸を布(反物)に紡ぐ作業、反物に空気漏れを防ぐための樹脂をコーティングする作業、そして反物を裁断しエアバッグに仕上げる作業が流れるように行われている。全て機械が作業している。機械やロボットの作業の精密さ・器用さには目を見張る。
 翌日訪ねたのは大島造船と大阪鋼管。大島造船では、敷地内の工場で製造した「ブロック」を専用の運搬車でドッグへ運び、巨大なクレーン(1機で1200トン!持ち上げるものが、2機共同で作業できる)で持ち上げて正確に然るべき位置へ移動し、そこで溶接等によって船にしていくという製造法だ。今年は40隻を製造するという。船もクレーンも大きさが半端でない。たまたま訪ねた日の朝に「命名式」の日を迎えていた8万トンの貨物船、近くで見ると巨大という以外うまい言葉が思い浮かばない。近くの保育園児が寒い中、半ズボンで元気に和太鼓を叩いていた。
 大阪鋼管では「冷管引抜鋼管製造法」で実に多種多様な形状とサイズの金属パイプを作っている。イメージしていただくために簡単に言えば、金属パイプを加熱することなく引っ張りながら(10トンの力)型の中を通して、元のものより長く・細くして必要なサイズ・形状のパイプを精密に作る技術であり、日本ではこの一社だけの技術。鉄パイプを室温で引っ張るだけで細くすることができるとは、思いもつかない。

巨大な氷のブロック:砕いて魚船に乗せる。 船の命名式

ブロックを持ち上げるクレーン。 右の遠景写真からクレーンの大きさをイメージ
できるだろうか、手前の船はいずれも数万トンである。