何があるか分からないから希望が持てる

2016.12.9

2016年が暮れようとしている。お正月に「今年の目標」、「今年はこんな風にしたい」と考えた方も多いだろうが、その通りになったでしょうか。高い目標を持っている人や重大な責任を負っている人は、ある期限がついている方が頑張れるかもしれない。一方、人生は思わぬ展開があるからこそ楽しいということもある。年末にあたり2つの話を紹介したい。初めのものは「ホント?」というジョーク、2番目は有名な小説から引用させて頂く。

 読売新聞「編集手帳」第30集 竹内政明著からの引用。
「ラクダが砂漠に棲めて、キリンが棲めないのはなぜだろう。〈背が高すぎるんです〉と登場人物が語る。デンマークの推理作家ユッシ・エーズラ・オールソンの人気シリーズ『特捜部Q』の最新刊『吊るされた少女』(早川書房)の一場面である。〈キリンの場合、見渡すかぎりここには砂漠しかないと悟ってしまいます。幸運にもラクダはそれがわかりません〉
すぐ先にオアシスがあるかもしれないと期待しながら進めるのだ、と。
人はラクダに似ている。見えるのは「今」だけで、あした何が起きるかは誰も知らない。知らないおかげで、希望を抱いて人生の旅をつづけることができる。」
 
 こんなジョークと一緒にする無礼をお許しいただければ、分かりやすい例は、昨年、今年のノーベル生理学・医学賞受賞者のお二人ではなかろうか。大村博士も大隅博士も、その研究は一言で言えば「探し物」である。大村博士の場合は薬理活性物質、大隅博士の場合はオートファジーを担うタンパク質のアミノ酸配列順を決める遺伝子探しと言える。大村博士の場合は、そのターゲット物質が存在するかどうかさえわからない。大隅博士の場合には、あることは間違い無いであろうが、見つける方法が難しいし、いくつ見つければ謎解きができるか分からない。共に「オアシスがあると信じて」困難な道を歩み続けたと言える。

 2つ目は、”Anne of Green Gables” by L. M. Montgomeryからの引用。どなたも知っている物語であろう。実際に手にしたのは、「英語で楽しむ赤毛のアン」松本郁子 対訳・解説・写真(ジャパンタイムス)である。
 アンはクィーンズ学院を卒業した後、大学へ進学するつもりでいたが、養母マリラを一人ぼっちにできないと、故郷グリーンゲーブルズに留まる決意をする。マリラに「でも、アンの将来の夢は・・・それに・・・」と言われ、アンは次のように言う。
I’m just as ambitious as ever. Only, I’ve changed the object of my ambitions.・・・When I left Queen’s my future seemed to stretch out before me like a straight road. ・・・Now there is a bend in it. I don’t know what lies around the bend, but I’m going to believe that the best does.
松本郁子の訳で次のようになる。
「私には、前と同じように夢があるわ。ただ、夢の対象を変えたの。・・・クィーンズ学院を出た時、私の未来は、まっすぐな一本道のように、目の前に遠く伸びていた。・・・でも今、道の曲がり角に来たの。曲がり角の向こうに何があるかわからないけど、最高のものがあるって信ずることにするわ。」

 最も重要なことは、曲がった所に何があるかわからないけど「最高のものがある」と信ずることである。そうできるためにはそれなりの準備が必要であるし、たとえ降りかかる試練・困難があっても、それらに果敢に立ち向かうこともできるであろう。明日へ向かう元気につながる。また何かと対面した時に「これが最高のものだ」と考えれば、幸せな気持ちにもなれる。
 良いお年をお迎え下さい。