ボブ・ディラン ノーベル文学賞

2016.12.9

明日12月10日はアルフレッド・ノーベルの命日であり、それにちなんでノーベル賞授賞式が行われる。今年は大隅博士の生理学・医学賞受賞が最も嬉しく誇らしいニュースであることは当然である。一方、ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞したことは、革命的ともいえる衝撃だった。率直な感想は彼のヒット曲のタイトルにあるように「Things have changed(ものごとは変わった)」である。「スウェーデン・アカデミーも粋なことをやるじゃないか」と感嘆する。

 日本人では、川端康成と大江健三郎が受賞していることは周知のことであるが、他に私が知っている名前を何人か挙げれば、古いところではメーテルリンク、ロマン・ロラン、遡ってパール・バック、バートランド・ラッセル、ヘルマンヘッセ、アーネスト・ヘミングウェイ,ジョン・スタインベック、そして受賞を辞退させられたポリス・パステルナークと自らの意思で辞退したジャン=ポール・サルトル等の名前が連なる。ボブ・ディランはこういう人達と同列に並んだ訳だ。
 私が発表の翌日見た幾つかの新聞(朝日、毎日、讀賣、日経、長崎新聞)の見出しに「歌手の受賞は異例、初」とあったが、これだけでは不十分。内3誌に「新しい詩的表現」、「歌詞に創造性」、「新たな詩的表現創造」とあり、これらが受賞理由としては適切であろう。

 受賞決定直後は本人からの連絡が無く世界中をヤキモキさせたが、しばらくして「この上ない栄誉」というメッセージが発せられた。授賞式では、ギターの弾き語りを交えながらの受賞講演にならないかなと密かに期待していたが、欠席の通知がきているとか。事実ならとても残念。

 彼は1941年生まれ、私の1歳上で、デビューは1962年とあるから私が大学2年の時、同じ時代を共有してきたことになる。もちろん接点は何もないが、ただ、反戦のシンガーソングライターとしての感性には共感できるものがある。ボブ・ディラン本人が歌うものより、ジョーン・バエズが歌うものを好んで聴いていた。
 歌詞は「反戦」と言っても直接的でないことが「詩的創造」として評価されたのであろうか。大ヒット曲の1つ「風に吹かれて=Blowin’ in the Wind」は反戦の歌であるが、一見戦争とは関係なさそうな問いかけで綴られる。例えば、「鳩はどれだけ海を渡れば砂浜で休むことができるのだろうか?」のように。答えは「風の中で舞っている」と結ばれている。多分、自分で見つけて欲しいというメッセージであろう。