女性リーダー

2016.07.10

今年も半分が過ぎようとしている(今日は6月19日)。今年の年頭にフト目にした雑誌の表紙が象徴的だったので、半年経た時点でおさらいしてみたい。雑誌は「The Economist The World 2016」とある。表紙には多くの人の顔写真が並んでいる。最前列中央はアンゲラ・ドロテア・メルケル、その左右にヒラリー・クリントンとジャネット・ルイス・イエレン。3人の外側には男性が3人づつ、一方はモジ、プーチン、キャメロンであり、反対側は習近平、バラク・オバマ、安倍晋三が並んでいる。フランス大統領オランドは2列目である。他にマララ・ユスフザイやローマ法王のように、政治に関係ない人もいるが、マリーヌ・ル・ペン、ツアイ・インウェン、ニコラ・スタージョンかなという顔も見える。世界が注視する人物の中に女性が非常に多くいる印象である(22人中10人)。日本国内だけで同じことをやれば、こうはなりそうにない。

 今日は、表紙の人物をおさらいしてみたい。但し、彼女等の思想・考え方・政策の是非に関しては論評抜きである。女性政治家として世界に名を知られたはしりはイギリス宰相Iron Ladyことマーガレット・サッチャーであろう。1979年〜1990年まで首相を務め、様々な改革を成し遂げた。彼女が他界した2013年にオーストラリア初の女性首相であったジュリア・ギラードはその年に政権の座から退いている。Iron Ladyにちなんで、Eiserne Mädchen(鉄のお嬢さん)と呼ばれる(一時呼ばれた?)のがドイツの宰相アンゲラ・ドロテア・メルケルである。彼女は政治に携わる前は物理学者、分析化学者として科学アカデミーで長いこと仕事をしていた。ベルリンの壁が崩壊したとき(1989年)に政治に関心を持ち、それから16年後の2005年にドイツ初の女性首相になったのだから驚きである。

 アメリカ大陸ではヒラリー・クリントンが女性初の大統領を目指す。バニー・サンダースの支持者の票をどれだけまとめることができるかが鍵のようだ。一足先に「女性初」となったのが、ジャネット・ルイス・イエレンFRB議長である。FRBとはBoard of Governors of the Federal Reserve System=連邦準備制度理事会で、アメリカの中央銀行にあたるものと考えて良い。この組織がいつ、どのようにして利上げするか世界経済界が注目している。彼女はヒラリーの夫ビル・クリントン政権の経済諮問委員会の議長であった。ヒラリー大統領が実現すれば良いコンビになるのかもしれない。

 南米大陸ではペルー大統領に立候補したケイコ・フジモリは僅かに大統領には届かなかった。ブラジル初の女性大統領であるジルマ・ルセフはオリンピックの開催を目前に控えて職務執行停止に追い込まれている。日本でも4年後のオリンピックの頃に都知事選挙をやることになるのだろうか。

 もう一度欧州に戻って、首相や大統領ではないが注目を集めているのはニコラ・スタージョンとマリーヌ・ル・ペン(Marine Le Pen)である。前者はスコットランド国民党党首にして独立推進派。スコットランドの独立派は国民投票では過半数に達しなかったものの大いに勢力を伸ばし、イギリス全体の政策に無視できない影響を与えるまでになっている。後者はフランスNational Frontのリーダーで2017年に予定される大統領選挙の台風の目になりそう。

 最後にアジアでも女性リーダーは少なくない。ミャンマーのアウンサン・スー・チーは軍部を相手に粘り強い非暴力の戦いの後、国をリードする地位に就いた。彼女の父親は嘗てビルマ独立運動のリーダーである。同じく父が嘗て国のリーダーであった韓国のパク・クネ(朴 槿恵)も韓国初の女性大統領だ。この2人とは異なり、政治とは関係ない家に生まれ、むしろアカデミアから政治の世界に近づいたのが台湾初の女性総統ツアイ・インウェン(蔡 英文)である。彼女は蒋介石の国民党ではなく民進党の党首だ。日本の土井たか子を想起させる。
 こう見てくると「女性初」が次々登場するのは21世紀になってからが多い。日本ではいつになるのだろうか?

*この文が掲載されて間もなく7月12日の新聞に、「イギルス首相にテリーザ・メイ内相が就任する見込み」という記事が出た。今後のBrexitをめぐる議論は二人の女性を中心に展開されることになる。