北野の天神さん

2016.04.25

 私が研究者の端くれであった頃、多くの時間は微生物や酵素を利用する新しい有機化学反応の開発に力を注いだ。新しい方法論の開発は、有用物質の製造に役に立つことがあるので、企業でも研究のアクティビティは高い。世界的レベルの国際会議にも企業の研究者が参加する。Gordon Research Conferenceという有名な会議のオーガナイザーは、常に大学から1名、企業から1名であった。そのような会議の常連であった日本企業の研究開発部門の方と親しくしていたのだが、彼が定年直前にして会社をスピンアウトし、中国のベンチャーと組んで新しく活動を始めるということで、何人かの仲間と京都で慰労会兼祝賀会を開催した。

 佐世保を朝早く出ると京都には昼過ぎに着く(佐世保−博多が2時間、そこから京都へ3時間)。昼食を済ませても宴会まではまだしばらく時間があるので、メンバーの何人かと北野天満宮を訪れた。北野天満宮は、菅原道真公をご祭神とする全国約1万2000社の天満宮、天神社の総本社で、京都の人は親しみをこめて「北野の天神さん」、「北野さん」と呼んでいるそうだ。梅の名所として知られ、2月末であったが、正に満開の梅を楽しむことができた。紅梅、白梅、その中間のピンクのものと、庭園いっぱいに咲き誇って圧巻であった。

 北野天満宮は、菅原道真公をお祭りしているので学問の神様である。受験シーズンということもあり、受験生や保護者とおぼしき方が沢山お参りに来ていた。本学では、今年度から多くの学部・学科を改組してスタートする時期でもあったので、新入生全員が熱心に勉強してくれることをお祈りした。鈴を大きく鳴らして、お賽銭を入れ、神妙に手を合わせ、深々と頭を垂れ、普段信仰心の無い私にしては心からお祈りしたのである。しかし、後で一緒にいた仲間にお賽銭の額を訊かれ「お前、それで690人分は如何になんでも少ないんじゃないの」と痛いことを言われてしまった。学問の神様がお賽銭の額を気にせず私の気持ちを汲んでくれるか、学生が自力で頑張ってもらうしかない。