オーロラ

2016.3.10

 どなたでも「一生に一度は行ってみたい」、「見てみたい」、「やってみたい」という類いのことがあるだろう。いずれにせよ時間とお金はかかるが、中には体力が必要なことも珍しくない。高い山に登るには体力+経験や技術も必要である。長時間の移動に耐えるのも体力の内かもしれない。そろそろ残り時間が少なくなって来たことを意識する年齢になり、今年のお正月休みは「極寒に耐える」ことに挑戦し、「一生に一度は見たい」と思っていたオーロラを見てきた。

 私達(妻と2人)は年末年始にかけてカナダのホワイトホース(Whitehorse)という町へ出かけた。バンクーバーから飛行機で北へ2時間半の所で、北緯60度を僅かに越える。北極圏ではないが、それに近い。ゴールドラッシュの頃に交通の要地として栄えた町である。今では人口2万7千人とか。建物の高さ制限があり(最近まで4階、現在は6階まで)、空が広い。ユーコン準州全体の人口が3万4千人で、面積は日本全体の約3倍。日本の人口減問題とは別世界だ。
 行ったことのある友人から「マイナス40度は覚悟して行け、冷たいより痛いという感じである。でも一度経験するのも悪くない」と言われて出かけたのであるが、幸いにして気温は低い方でマイナス10度程度であった。これならスキー用の防寒着で十分である。オーロラを見るのは当然夜(ホテルから少し離れた開けた場所)であるが、旅行社が提供してくれたレンタル防寒着・靴で寒さに震えることはなかった。それでも、アラスカへ流れるユーコン川の岸辺付近は結氷していた。凍るのは表面だけで、川自体は氷の下をどんどん流れて行く。

 さて、お目当てのオーロラ。これは期待していたものとは些か趣を異にした。写真で見ると緑色や紫等々様々な色がついていてとても幻想的であるが、実際に見たものはほとんど白に近い色であった。要するに人間の目の感度で色を感ずることができる程度に強いオーロラは太陽の活動が余程活発な時でないと見られないということだ。ほとんど色がついていないオーロラでもカメラのシャッタースピードを15〜20秒程度にすると立派に色づいたものが撮影できる。私のカメラは悲しいことに最低の性能のもので30秒開けても「ほらほら、これがオーロラ」と意識して見ないと単に闇が写っているくらいにしか見えない。それでも、現地時間で大晦日の夜の天体ショーは素晴らしく、ゆらゆらと揺れる天空のカーテンを満喫できた。月は下弦で、1日50分ずつくらい月の出は遅くなる。大晦日の夜、月が昇って来たのはホテルに帰る直前くらいの時間(午前2時)であった。
 このような所へ来ると、星空も息を飲む美しさである。同じグループの人が「奇麗!プラネタリウムみたい」と言っていた。「ン?」と引っかかる表現ではあるが、分かりやすさでいえば、その通りである。北極星の東側に大きな北斗七星、西側にカシオペア、南にオリオン。そして何とその間に昴がハッキリ見える。清少納言が枕草子で「星はすばる。ひこぼし。ゆうづつ」と愛でた星のグループである。明るくはないので、日本の都市部で見るのは難しい。

 ここから先はサイエンス:オーロラはどうしてできるか?これは地球が磁石であることと太陽の活動が深く関わる。地球(半径6500 km)の構造を図に示してある。マントルで温められた水が地殻の表面に出てくると温泉である。地殻を持ち上げ、中身が吹き出してくると火山だ。マントルの内側には融けた鉄が流動している(半径3600 km)。鉄が融ける温度は1500度である。これが流れているという凄まじい話だ。流れているお陰で地球全体が磁石になる。S極は北極、N極は南極である。したがって我々が使う磁石のN極は北を指し、S極は南を指す。チョットややこしい。磁力線の様子を棒磁石で示した。この図で、地球では北極と南極に磁力線が集積する(磁場が強い)ことがお分かり頂けよう(図はインターネット「磁場 わかりやすい高校の物理」から引用)。
http://wakariyasui.sakura.ne.jp/p/elec/jiba/jiba.html
 次に太陽の活動に関しては「太陽風」があることがオーロラを発生させる原因である。では太陽風とは何か?これはプラズマと呼ばれるものであるが、簡単に言えば、電荷を有する粒子の一群と考えて良い。電荷を有するので、地球に近づくと磁力線に沿って降下し、極点付近での濃度が高くなる。オーロラは緯度の高い場所でないと見えないのはこのためである。この高エネルギーの粒子が上空に存在する分子にエネルギーを与え、その分子が高エネルギー状態となる。これが基の状態に戻る時、当然余分なエネルギーが放出される。これが光として我々の目に見える。簡単に言えば蛍光灯が光るのと同じことであるが、こう言ってしまうとあまりに無粋である。
 オーロラ観賞には、太陽風が強いこと、極点付近へ冬に行く事(夏の極点付近はオーロラには明る過ぎる)、そして雲のない好天であることが必須条件である。もう1つ、月齢も重要な条件である。満月の夜ではオーロラ観賞には明る過ぎる、ツアーに出かける時は要注意!

地球の構造 磁石と磁力線

オーロラ(ガイドさん撮影) 凍てつくユーコン川