彼岸花

2015.10.10

 彼岸花については昨年(2014.10.10)も「彼岸花と稲穂」というタイトルで書いた。秋のお彼岸の頃になると律儀に時を違えず咲く花である。昨年はさせぼ夢大学理事長近藤氏の見事な写真も掲載させて頂いたが、今年はチョット変わり者とそれをネタにした「大いにサイエンス」である。

 彼岸花と言えば誰しも鮮やか(過ぎる程の)紅色の花を思い浮かべるであろう。これが、色づいて来た稲穂とくっきりとした対をなすので美しく「彼岸花と稲穂」となる。ところが、私の家の側の道路に、ナント白い彼岸花が咲く。一本や2本ではなく群生しており、しかも紅色のものと共存している(写真1、2)。彼岸花は地下茎で越冬する多年草であることは、前に紹介した。同じ茎から紅色と白の花が咲くとは考え難いがともかく興味津々である。

 さて、ここからが少々ややこしい。色が見えるという事は、我々の目に光が入ってくるという事であり、彼岸花自体が「光る」わけではないので、その光は太陽の光を反射しているという事だ。このような光や紫外線、赤外線、健康診断や飛行場の保安検査場で使うX線(レントゲン線)、またお弁当を「チン」する時のマイクロ波も全て含めて言うとき、これを電磁波という。太陽の光は主として可視光と紫外線からなるが、紫外線は地表に届く前に大部分オゾンによって吸収されるので、主として可視光と言って良い。「吸収」の意味はなかなか悩ましく、例えばテーブルの上にこぼした水をティッシュペーパーで拭き取る際の吸収とはまるで意味が違う。しかし、ここでは説明を省略して先を急ぐ事にする。

 可視光の波長は単一ではなく、だいたい700 nm〜360 nmで、波長の違いによって色が異なる。もちろん連続的な変化であるが、端的に表すと赤橙黄緑青藍紫で、虹の色が出そろう事になる。ある物質がこの波長のうちの一部を「吸収」するとそのものはその反対色で見える。例えば植物の葉は赤色の光を「吸収」するので緑色になる。一般的な彼岸花は花びらに緑から青紫色の比較的短波長の可視光を吸収する物質を含むので紅色に見えるのである。

 ある物質が可視光全てを透過させると、そのものは無色透明である。窓ガラスが典型的な例。ビール瓶が褐色であるのは、品質を保つために短波長側の光が中に入るのを防ぐためであろう。ある物質が可視光全てを吸収すると黒く見える。逆に全部反射すると白く見える。冬物の衣服に黒っぽいものが多く、夏には白いものが好まれるのは身体的快適さからも合理的である。

 電磁波の波長が短いほどエネルギーは大きい。紫の光より波長が短い紫外線は生物の細胞に有害である程度に大きなエネルギーを有する。但しビタミンDを体内で合成するにはそのエネルギーが必要なので、ある程度は日光に当たることが望ましい。X線は紫外線よりエネルギーが大きい。したがって照射されるのは健康診断の時くらいにとどめる方が良い。レントゲン技師は別室で「ハイ、大きく息を吸って」と言っている。赤い光より波長が長いのは赤外線やマイクロ波。後者は、先にも述べたように電子レンジに利用されている。

蛇足:紫外線、赤外線は英語でそれぞれ「ultraviolet」,「infrared」である。日本語では両者とも「外」なのに、英語では一方は「紫を超える」、他方は「赤の内側」とでも言える命名法は文化の違いというべきか。

  

 

 
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