うるう秒

2015.7.25

 最近まで「うるう秒」なるものがあることを迂闊にも知らなかった。日本では去る7月1日の午前8時59分から9時丁度までの時間が60秒ではなく61秒になるように1秒挿入された。4年に1度、2月29日があることと見かけ上似ているので、「うるう秒」と呼ばれるが、本質的にはまるで違う事象である。1972年に初めて登場してから、最近のものが26回目というから関心のある向きにはとっくにお馴染みのことであるが、日常生活にはほとんど影響ない。しかし、ある国の証券取引所では、システムの無用な混乱を避けるため通常より1, 2時間早く閉めたそうだから、関係ある人もいないではない。

 何故1秒という小さな時間を調整しなければならないのだろうかと思う方もおられるだろうが、仮に1年で1秒の誤差があると、10万年で1日強、したがって1千万年経つと季節のズレが出るくらいの誤差になる。これくらいのスケールで考えなければならないこともあるということだ。
 「誤差」といっても何と何の間で生ずるのか、私同様多くの方は分からないのではないか。そんなこと「どうでもイイヤ」と思われる方は、ここまでで読むのを止められることをお勧めする。

 「1日」や「1秒」の長さは、ある時期までは地球が自転する周期を「1日」とし、その1/24を1時間、その1/60を1分、さらにその1/60を1秒としていた。地球の自転速度は限りなく高い精度で一定であると考えて(自転すること自体何故だか、不思議ではあるが)、これを24時間と「定義」した訳だ。ところが、時間を測定する技術が進歩して、原子時計というものが登場した。いくつかの原子が出す、マイクロ波の振動数を基本にして時間を計る方法であるが、セシウムという原子を使うと誤差は1億年に1秒という!どうやってこの誤差を計るのか?多分難しい理論計算に基づく推定であろう。それはともかく、市販されている電波時計は、基本的にはこのような原理に基づくものである。

 地球の自転より精度の高い計測法が出現したからには、世界の時間はこれで決めようというのは自然な流れである。するとどうだ!困ったことに、地球の回転速度には実はムラがあり、常に正確に(天文学的レベルで)24時間ではないことが分かってしまったのだ。最近では24時間よりチョット遅い。チョットとはどれ位かというと、2, 3年で1秒という程度だ。そこで1千万年後の人が枕草子を読んで「いや、春は曙ではなくてつとめてでしょう」等と言わないように(?)この誤差が1秒にならないうちに地球の自転に基づく時間と原子時計の針を合わせましょう(もちろん針はないけど)、というのが「うるう秒」の挿入の意味である。グリニッジ標準時で12月31日あるいは6月30日の最後の1分を61秒とすることになっている。日本時間ではその9時間後となる。

 ここまで読んで頂いた方にはついでにもう一つお付き合い願いたい。地球の自転時間は24時間である(1秒以下の誤差は無視するとして)と書いたし、皆さんそう考えておられるが、太陽系の遥か彼方に視点を移して考えると実は約23時間56分で、4分という「トンデモナイ」違いがある!私達は、「地球の自転」を太陽との相対的位置で考えるので4分の違いが生ずる。図を使って説明しよう。
 地球が公転軌道の1の位置にあるとき、ある経度の地点(青印)は無限の彼方にある基準点から見ると2の位置のAに来たとき地球は360度回転したことになる(1の位置から出ている赤い線と2の位置からの青い線は平行)。ところが地球は公転軌道上を移動して2の位置まで来ているので、太陽を基準にすると地球はもう少し回転しないと出発地点に戻ったことにならない。即ちBの位置まで回転して初めて1の位置にいた時と同じ方角に太陽が見えて、1回転したことになる(2の位置からの赤い線は太陽の方向を向いている)。このAからBへの回転時間が4分(厳密には3.9452分)で、実は正確に1回転ではなくプラスαの回転を含めて1回転の時間が24時間と定義していることになる。これはあくまで「定義」なので、何かと合わなくなるという類いの不都合は無い。
 ついでに、月が地球を1周する公転時間は27.32日であるのに、満ち欠けの周期は29.53日であることも、地球が公転していることが原因である。図で言えば公転時間は3から4までの時間であるが(地球と月を結ぶ青い線は両者で平行)、地球が30度くらい回転した位置にいるので、太陽−地球−月がこの順に直線状に並んで再び満月となるためには、月は5の位置まで来なければならない。これに要する時間が2.21日という訳だ(2011.9.26がより詳しい)。
 最後におまけ。時間を地球の自転の時間で決めたので、公転の時間がその整数倍にならなくてもむしろ当然である。実際に365日より1/4日くらい時間がかかり、これを調整するためにうるう年がある。これは「誤差」の調整ではない。これも丁度1/4日の調整では不十分なので、4で割り切れたら必ずうるう年とは限らない。