ユキヤナギ

2015.04.15

 今日は本学の入学式だった。私にとって長崎県立大学の入学式は7回目になる。毎年のことであるが、フレッシュな新入生諸君の凛々しい姿に接し、宣誓を聴き、訓辞を読み上げると、この若者達のために全力を尽くさなければならないと身の引き締まる思いがする。

 長崎県立大学から理事長就任のお話を頂いたのは、慶應義塾大学を退職した年の秋であった。長崎県は、学生時代に友人と旅行した時、2, 3日立ち寄ったことがあるだけで、全く縁もゆかりも無い土地だ。そこで、慶應義塾大学のときとは全く違う仕事をすることにはためらいもあったし、あまり自信も無かった。3人の信頼する友人・先輩に相談し、一人でも反対がいたらお断りしようかと考えたのだが、「俺なら二つ返事で引き受ける」、「君は神経が雑だから大丈夫」と意味不明の激励も受け、決意したのが正直のところだ。佐世保市に住み、理事長として2年、学長として4年の時が過ぎた。問題山積であるが、もう4年精一杯やるのみだ。

 私の川崎の家は、多摩川に近い。商店街を抜け、「古市場」という由緒ありそうな所を過ぎ、約1キロで堤防に出る。河口から10キロ程の地点である。川沿いに自動車道路との境には高い堤防があり、その上は自転車が楽にすれ違える程度の幅の道が舗装されている。その下には舗装はされていないが、さらに広い道がある。ここは自動車も走れる幅であるが、実際には走っていない。さらにその道から川縁までの平地は、野球のグラウンド、テニスコート、ゴルフコース等があり、上等とは言えないが市民や子供達の憩いの場になっている。私はこの2本の道をジョギングするのを習いとしていた。橋が架かっているし、「河口からXXキロ」という表示が1キロ毎にあるので、どれ位の距離を走ったか分かるし、スピードも分かる。信号ストップも無く平坦な道であるから、ランニングや散歩にはもってこいである。

 幅の広い方の道の両側に何キロにも渡って延々とユキヤナギが植えてある。3月も半ばを過ぎると、程よい高さのこんもりとした枝に可憐な白い花を付けて誠に美しい。「ユキヤナギ」は、正に言い得て妙である。この時期には土手の草の中を注意深く見るとツクシがあちこちで可愛い顔を見せてもいる。6年前の3月、その道をゆっくり走りながらいろいろなことを考えた。新たな決意と共に「いよいよこのユキヤナギともお別れか」と、しみじみとした気持ちにもなったものだ。

 羽田から長崎への飛行機は、富士山の北側をかすめるようなルートをとる。したがって、左眼下には富士山の頂きが見え、右には南アルプス、中央アルプスを望む。気象条件の良いときには、北アルプスも見えることがある。富士山は我が家からも見えるので、これらの山々ともお別れという感傷も湧いて来た。ところが、長崎県立大学シーボルト校へ来てみると、なんと道路に面して植えてあるユキヤナギの純白の花が私を迎えてくれた!「おお、ユキヤナギさん、またお会いしましたね」という感激の再会で、何か縁があったのかもね、とつくづく思ったものである。

多摩川のユキヤナギ 長崎県立大学シーボルト校(後ろは体育館)
多摩川のユキヤナギ 長崎県立大学シーボルト校(後ろは体育館)

 

多摩川堤防のツクシ 飛行機から見る3月の南アルプス
多摩川堤防のツクシ 飛行機から見る3月の南アルプス