想像を絶する人

2014.11.10

私はあまりTVを見ないが、最近「これは欠かせない」と思っているのが、NHKで毎週水曜日夜10時から25分放映される「スーパープレゼンテーション」である。英語でのプレゼンテーションだ。英語の力が衰えるカーブを緩くする効果も多少はあるかもしれないが、ともかく内容が面白い。残念ながら聴くだけで理解することはできないが、字幕が付くのでフォローすることはできる。

 TEDというアメリカのNPOが提供していて、インターネットでも視聴できる。英語力を向上させたいという人には、とても良い教材だと思う。1日1回聴く習慣をつければ1年でリスニングの力は格段に向上するだろう。1週間くらい同じものを聴いて、最後の2日くらいは字幕を見ないで聴くことに集中すると良い。

 TEDとは、Technology, Entertainment, Designのイニシャルをとったものである。この3つの単語をandで並べて1つのコンセプトを創りあげ、その結果をプレゼンテーションとして具現化しようとする発想自体、なんだかゾクゾクする興奮を覚えさせる。そして実際に提供されているものは、その期待を裏切らない。TVで見ていると、プレゼンが終わったときには、聴衆はいつもスタンディングオベーションでプレゼンターに拍手を送っている。

 最近のもので印象的だったのは、Diana Nyadという64, 5歳の女性の話。キューバのハバナからフロリダの海岸まで泳ぎきったというとてつもない話である。日本に住んでいては一体どれ位の距離か見当もつかないが、約110マイルという。1.6を掛けると176キロとなる。長崎港でドボンと海に飛び込んで、上五島の奈良尾港まで行き、休憩無しで長崎港に戻ってくるとこれくらいの距離になる。彼女はこの距離を53時間かけて泳ぎきったのである。エネルギーの補給は全て液体食、立ち泳ぎしながら。もちろん大勢のサポートチームが船で付き添う。しかし、夜に明かりをつけると、猛烈な毒を持ったクラゲを誘うので、漆黒の闇の中を泳いだそうだ。サポートチームは彼女の水をかく音に耳を澄ませて、船で寄り添って行く。
 
 毒クラゲに対する防備はしたが、サメに対するゲージは使わなかったとのこと。ヘミングウェイの小説「老人と海」では、老人が苦労して釣り上げた巨大なカジキマグロをボートにくくりつけて港へ戻る。その途中でサメの攻撃にあって、魚は骨だけになってしまう。その同じ海を多分、同じくらいの時間で泳いだことになる。20歳代で初めて挑戦し、5回目、64歳でとうとう夢を果たしたのだ。泳いでいるときに何を考えるのだろうか?彼女はジョン・レノンの「イマジン」を1000回も歌いながら泳いだと冗談まじりで言っていた。

“Imagine there’s no heaven, It’s easy if you try, No hell below us, Above us only sky, Imagine all the people living for today・・・You may say I’m a dreamer, But I’m not only one”

 プレゼンの最後のメッセージは “Never, ever give up!” であったが、それにしても「凄い」の一言につきる。