赤銅色と青色の共演

2014.10.25

10月8日の長崎県は爽やかに晴れ、澄んだ空は日の入り後も変わらなかった。多くの人が皆既月食を楽しんだことだろう。太陽—月—地球の順に一直線に並ぶと日食だ。したがって、これは新月の時。その順番が太陽—地球—月になるときが月食となる。今度は逆に満月のときに見られることになる。ならば、ほぼ1ヶ月に1回は日食や月食が見られるかと言えばそうではない。並ぶ順はこうなっても同一平面からチョットずれると光を遮ることにならないからだ。今度の皆既月食でも月は闇に消えることはなく、赤銅色に見えていた。完全に黒くならない理由は、地球の大気中にある様々な物質によって太陽光が乱反射されたり、屈折するかららしい。難しいことは分からないが、日陰でも真っ暗にならないことと本質的に大差無いのではないか。ともかく、あの神秘的な色の月を見ることができて幸せである。月が真っ暗になって見えなくなるのでは、「いま、月はどこでしょう?」とクイズになる位で、まるでロマンがない。

 同じ日の朝の新聞は、色の神秘ということでつながる青色LED(Light Emitting Diode=発光ダイオード)の開発の功績で、ノーベル物理学賞を赤崎、天野、中村博士の3人の日本人が受賞したニュースで一杯であった。大変誇らしい、明るいニュースで紙面が満たされることは嬉しいことである。2008年の南部、小林、益川博士トリオ以来である。3人のうちお一人がアメリカ国籍を取得していることも一致しているが、分野は全く違う。

 発光ダイオードとは、電気を流すと発光する半導体である。電気を良く流す良導体と流さない絶縁体の中間の性質を有する。これもきちんとした理論は分からないが、電気エネルギーを光のエネルギーに変える。このときの輝度が白熱電球よりはるかに明るい。即ち消費電力が少なく、効率が良い。この半導体をどのような物質からつくるかによって光の波長が異なる。白熱電球は幅広い波長の光を連続的に出すので、結果的にそれらが混じって白色(無色)となる。LEDで白色光を出そうとすると少なくとも色の3原色(赤、緑、青)の光を出す半導体が必要である。今回の受賞は最後の高いハードルであった青色LEDを開発、工業化した功績に対するものだ。もちろん白色光だけでなく、あらゆる色をつくり出すことができるようになった。

 ここで、チョッピリサイエンス。「青のハードル」が非常に高かったことと、この開発で実用化への展開が大きく広がったことが今回の受賞につながったのであるが、日本人3人ということで喜ぶだけでなく、LEDそのものの発明者=ニック・ホロニアック博士(米)に改めてリスペクトを払うことが礼儀であろう。

蛇足:今回のノーベル物理学賞は、窒化ガリウム(窒素とガリウムという元素が1:1で結合した化合物)の結晶(分子が整然と並んでいる個体)の創製に与えられた。素人目には物理学賞より化学賞に近いようにも感ずる。逆に翌日発表された化学賞は、光学顕微鏡よりはるかに小さいものを見ることができる新しいタイプの顕微鏡の開発が受賞対象となっている。観察する対象は細胞や化学物質であろうが、分野としては応用物理か。物理学賞と化学賞を逆にしてもあまり不自然ではなさそうであるが、学問の境界とはそんなものと考える方が良いのだろう。