反対語の組み合わせ

2014.3.25

少し前であるが、お馴染みのさせぼ夢大学で、ロバート・キャンベル氏の講演を聴いた。ハーバード大学の修士を持つ人で、日本文学の研究者である。その講演の中で、「日本語には反対語を組み合わせて1つの言葉とする便利な方法があるが、英語には無い」と言われた。「へエー、そうなのか」と思い、いくつか辞書を引いてみたのでご紹介したい。

私の持っている和英辞典はおそろしく古い。「昭和廿九年三月十日第一版発行」で「卅三年九月十日廿二版発行」の「KENKYUUSHA’S NEW JAPANESE-ENGLISH DICTIONARY」, General Editor; SEKICHIRO KATSUMATAである。若い人には、いつ発行された辞書か分からないかもしれない。こんな古めかしい文字まで変換できるのだから、日本のパソコンソフトは大したものだと感心した次第である。インド語やアラビヤ語では、どうなのだろうか?この辞書は、慶應大学に勤務していたときに、現職のまま亡くなられた教授の所有であったものを弟子どもで形見分けして頂いたものである。もう1つ頂いたルーペも大切に使っている。と言うより、情けないことにルーペ無しでこの辞書を引くのは難しい。

さて本題。先ずは簡単に左右。辞書には「right and left」とある。なる程right とleftを接続詞でつながなければならない。この表記を見て、左はrightというのだ、と勘違いしてはいけない!しかし実際に使う場合は「right and left」とは、言わないようだ。「道路の左右に」=「on either side ( or on both sides) of the street」となる。either とbothで単数になったり複数になったり、なかなか厄介だ。「左右」は、総理大臣の考え方は国の運命を左右する」等とも使われる。この場合にはもちろん「right and left」はお呼びでない。「The prime minister’s points of view control the destiny of a nation.」あたりか。

次は前後。これも「back and forward」とか「before and after」とandで2語をつなぐしか無い。しかし、文章の中では多くの場合別の表記を使うようだ。例えば「話が前後している」は、「The story lacks sequence.=順番が無い」となる。確かにその通りである。もう1つ、「彼は前後不覚に酔いつぶれた」は、「He drank himself unconscious.」ということらしい。では、「船が前後左右に揺れて、気持ち悪くなった」という具合に併せ技はどうだ?これに対しては、英語は前後の揺れと左右の揺れに対して別の表現を用意している。「The pitch and roll of the ship made me seasick.」となる。但しこの表現は「揺れる」場合だけの表現である。「前後左右を見渡した」等の場合には、「I looked all around myself.」くらいだろうか。

「白黒」は「black and white」とある。これも日本語と英語と順番が逆だ。実際にblack and whiteを使うのは色の場合に限られるようだ。「白黒写真」はblack and whiteを形容詞にしなければならないのでハイフンをつけてblack-and-white photoである。black and white photosでは黒い写真と白い写真になってしまう。目を「白黒」させるは最早「black and white」ではない。「彼は目を白黒させて苦しんだ」は「He turned his eyes up and down in agony.」となる。述語まで違ってくことに要注意だ。

最後に極めつけは「天地無用」。英語表現は「This Side Up」あるいは「Do not turn over.」と、極めて分かり易い。ここまで来て、両面焼きの目玉焼きは確か「turn over」だったと辞書を引いてみたけど、出ていなかった。ちなみに片面焼いたものは、sunny-side up (egg)で、辞書にも載っている。「なるほどネ」という感じだ。他にも沢山「なるほどネ」や「フムフム」と感心させられる表現がある。皆さんもチョット大きめの和英辞典を楽しまれてはいかがでしょうか。

注:一部の英文表記については、英語の先生に助けて頂いた。