生き物の体

2014.1.15

新年明けまして、おめでとうございます。1年の計は元旦にあり、と申します。大学に勤めているものとしては、サイエンスからはじめさせて頂こうと思います。

生き物の体に関する数の話しです。先ずは、細胞の数。我々の体は約60兆個の細胞からできている精緻なシステムである。数が大き過ぎて見当がつかない。似たような桁は日本の国家予算。数十兆円である。細胞1個の体全体に対する比重は、国家予算の中の1円に当たるということだ。日本を1つのシステムと看做すと、その構成員である人の数は1億3千万人弱であるから、1人が有する責任は、細胞の約50万倍となる。

では、その大きさは、となると今度はとても小さな数字になる。細胞によって大きさや形も異なるが、球に近い形とすると直径6 μm〜25 μmである。μmはミリメートルの千分の1で、マイクロメートルと読む。最も大きい数字の半分をとって、12.5 μmを例にして、今度はお金の最少単位の1円玉と比較してみよう。この硬貨の直径は丁度2 cmであり、重さはピタリ1 gである。細胞の直径は1円玉の千分の0.625ということになる。1円玉を机の上に立てて、グルッと1回転させてできる球の体積は、約4cm³と計算できる。細胞は直径が千分の0.625なので、体積はこれを3乗して(どういう意味?という方もここは信じて頂きたい)40億分の1である。即ち1円玉をグルッと回した球の中に40億個の細胞が入る大きさということだ。

人の体の比重(1cm³のグラム数)を約1とすると(ホントは水に浮くのだから、1より僅かに小さい)60キロの人の体積は60リットルである。4cm³に40億個の割合でいけば、60リットル中には60兆個の細胞が存在することになり、初めに紹介した数字と一致する。太っている人は細胞の数が多いのではなく、大きさが違うのだ。

小さな細胞1個1個の中に同じDNAが入っている。例えば、肝臓をつくっている細胞と神経細胞は働きがまるで違うのに、同じDNAが入っていることは信じ難いことだが、事実である。一方、各細胞は元を辿れば1個の受精卵から分裂してできることを考えれば、「同じDNA」ということは、むしろ自然なこととも思える。DNAが二重らせん構造をとっていることは、ご存知も方も多いだろう。これを引っ張って直線に伸ばすと、ヒトのものであると1.5 mくらいになる。この紐が細胞の中に収まっているという事実も信じ難いことだ。

DNAは、親の性質を子孫に伝えるためのものと考えがちである。生殖細胞のDNAの役割は確かにその通りであるが、体を構成している細胞=体細胞のDNAの役割は違う。こちらは、その細胞の機能を制御している「設計図」である。もう少し具体的には、タンパク質を合成するための設計図で、1つのタンパク質に対応する部分を「遺伝子」という。人の遺伝子の数は最近の研究では2万2千程度と見積もられている。人は2万2千種くらいのタンパク質をつくることができて、そのタンパク質の種類が器官によって違うので、細胞の働きが違ってくる。器官が分化している最も原始的な生物であるシー・エレガンス(線虫の1種)という長さ1 mmくらいの虫がいる。この虫の遺伝子の数は、1万9千くらいである。2万2千程度という数字は、何だかがっかりする程少ないという印象ではないか。ちなみに、稲の遺伝子数は約3万2千と推定されており、人よりはるかに多い。実は、人のタンパク質は、基本的には2万2千種であるが、出来上がった後で、様々に飾り付けが施され、機能はもっとずっと多くなるのである。