化学のコマーシャル−−−その2

2011.12.15

学問分野でいうと「21世紀は生命の世紀」とも言われている。生命誕生の謎、1つの細胞から、例えばヒトのようなシステムができる仕組み、緻密な生命機能、脳の働き等々が次第に明らかになっていくであろう。このレベルでは、いわゆる「理科」だけの研究ではない。倫理学、心理学等との協同作業が必要になる。

脳を含めて生体機能の神秘を解き明かす基盤となる学問の1つが化学である。生物体は常にどこかが活動している。もちろん泳いだり、走ったりという激しい運動のときだけでなく、寝ているときでも心臓は動いているし、夢を見ることだってある。もっとすごいのは、卵がヒヨコに変化したり、イモムシがさなぎの中で蝶に生まれ変わったりすることだ。この様な体全体のバランスを保つのも、ヒヨコや蝶への劇的変化も全て様々な化学反応が起こるから可能となる。外部からの栄養分を、自分の体の構成成分としたり、エネルギーに変換したり、あるいは、目で光を感じ、鼻で臭いを察知できるのも化学反応の結果の刺激が脳に伝達されるからである。

まだまだ分からないことも沢山あるが、「ヘエーそんなことまで」というような事も次第に明らかになりつつある。例えば、我々の目が光を感じるのは、有色野菜に含まれているビタミンAからできる化学物質の幾何学的形の変化による。この変化が原因で、その化学物質がそれまで結合していたタンパク質から離れてしまう。その際の僅かなエネルギー変化が神経を通して脳へ伝わるから、我々はものを見ることができる。蟻が餌と巣の間を迷うことなく一直線に往復できるのは、他の蟻の姿を追いかけるためではない。餌を引っ張って巣に戻るときに、「この香りのする線に沿って歩いていくと良いものがあるよ」という合図になる化学物質を分泌しているからだ。その刺激を感ずることができるのは、その蟻の仲間だけなので、餌を他の虫に横取りされる心配はない。

魚や肉を食べると胃で消化されて栄養となる。しかし、胃袋だって魚や肉と変わらないタンパク質である。食べたものだけが消化されるのはむしろ不思議だ。これは、自分自身の体をつくるタンパク質が栄養として取り込まれたものを区別する能力を持っている「酵素」という「化学物質」のお陰である。酵素は、必要な代謝反応だけを速める作用をする。

生命機能の謎解きは、生命現象を化学や物理の言葉で語ること、と言い換えることができる。現代の学問の発展は、互いに助け合いながら進んでいるのである。これから学ぶ若者は広い視野をもつように気をつけて欲しい。