日本最高のホテル

2011.11.04

10月9・10日の2日間久しぶりに妻と2人で遠出をした。泊まったのは、日本最高のホテルである。と言っても、最高に豪華なホテルという意味でないことは言うまでもない。では何が最高?最後までお付き合い頂ければ種明かしできる。

出発は9日早朝の新宿。乗った列車は憧れの特急「あずさ」。上高地を流れる梓川からこの名前が来ている。イメージも行く先も北アルプスとつながる。甲府を過ぎる頃から、左右に甲斐駒ヶ岳、八ヶ岳等の山々が見えるようになり、「山へ行くのだ」という実感が何とも言えない。山梨県から長野県に入ると車窓から見える木々がブドウからリンゴに変わる。

この時間の電車は松本からさらに大糸線に入る。我々の目的地は信濃大町。ここでバスに乗り、扇沢へ向かう。立山黒部アルペンルートの出発点で、後立山(うしろたてやま)連峰の麓だ。九州の方には、これらの地名はお馴染みではないかもしれないが、後立山連峰は富山県と新潟県、そして南側は富山県と長野県境をなしている。北端は、北陸道の難所として知られる親不知で、日本海へ落ち込む。

扇沢からの行程がすごい。まずトロリーバスで関電トンネルを抜ける。これは、後立山連峰の土手腹を貫いているので、終点は富山県の黒部湖。黒部ダムと言った方が判りやすいかもしれない。貯水量約2億トン、1963年に完成した関西電力の巨大なダムである。関電トンネルはこの工事の資材を運ぶ為につくられたトンネルだ。ここから1800m超の黒部平まではケーブルカーで登る。この高さまで来ると、大町では実だけが赤かったナナカマドが葉まで真赤だ。後立山の山並が美しい。南端の針ノ木岳は眼前で、白馬が遥か彼方に見える。

【黒部ダム】
【黒部ダム】
【ナナカマド】
【ナナカマド】

黒部平からさらに上を目指す大観峰までのロープウェイはこのルートの白眉。標高差約500m、実に1700mの距離を途中の支柱無しでつなぐ。眼下に紅葉の谷が広がる。高所恐怖症の方には向かない。大観峰からは再度トロリーバスで、立山の山腹に掘られたトンネルを抜けて、室堂平にでる。立山の長野側から富山平野を見下ろす側に来たことになる。ここにあるのが、日本最高のホテル「ホテル立山」である。もう、説明の必要はないだろう、日本一高いところにあるホテルなのである。標高2450m。個室があり、食堂ではウェイターが背広を着ている。山小屋ではない。広いお風呂がまた、最高であった。洗い場の前が鏡ではなく、窓になっている。そしてその窓から3000mの峰々をのぞむことができる。

翌朝、立山山頂に近い一の越まで登ってみた。北アルプスの盟主槍ケ岳、穂高連峰、そして右には特徴ある形の笠岳が美しい。さらにはるか遠くに目をこらすと、富士山を見ることができた。ここから、富士山までの距離は地図で見当をつけると160kmくらいである。ちなみに、富士山最遠望の地は、和歌山県・色川富士見峠だそうで、写真撮影に成功している。その距離なんと322.9km。 【ホテルと立山】
【ホテルと立山】

帰りは富山に出た。室堂からの途中、弥陀が原、美女平の紅葉は言葉には表し難い美しさであった。室堂の標高では灌木は育たない。木は這松だけである。標高2000m以下になると、次第に背の低い木が表れ、その葉が赤や黄金色に輝いている。さらに高度が下がるにつれて立山杉に代表されるように大型の樹木が増える。雪がまばらに残り、そろそろ冬景色の2500m地点から、秋たけなわの町中まで、わずか2時間半で乗り物だけで降りて来る。