五島市で開催された「カネミ油症事件発生50年記念行事」で発表を行った看護学科卒業生にインタビュー

 平成30年11月17日(土)五島市福江総合福祉保健センターにて「油症の経験を未来につなぐ集い~カネミ油症事件発生50年記念行事」が行われ、看護学科卒業生2名が発表を行いました。今回式典で発表を行ったのは、本学の大学院へ進んだ柏さん、昨年卒業をし、現在看護師として働かれている長友さんです。今回、人間健康科学研究科看護学専攻1年の柏さんにインタビューを行いました。

 平成29年に『しまの健康実習』として五島市で実習を行った柏さん達は、現地の保健師の方々、看護学科教員吉田准教授の指導の下、カネミ油症による健康被害を抱えながら五島市で生活する人々へインタビュー等を行いました。その時のご縁が、今回の式典への参加へ繋がったそうです。

 たくさんの人に支えられて実施する事が出来た五島市での実習の中で、学生である私たちに、ご自身の経験と思いを語ってくださった方々と、実習を支えてくださった皆様に恩返しができる機会だと思い参加を決意した柏さん。
 式典に参加することで、多くの方々の『カネミ油症の経験を風化させてはいけない』『二度と繰り返してはいけない』という思いを知り、柏さん自身もその思いを強くしたと言います。

-今回発表をしたテーマについて教えてください。-

 今回、発表で取り上げた成人期の発達課題には、「結婚し、子どもを産み育てる。社会の一員として働き次世代を育成する。」という課題があります。しかし、カネミ油症被害者の方々は、油症による様々な症状によって、成人期の発達課題を達成するためには努力を要したことがわかりました。
 これらの語りを受け、カネミ油症被害者の方は「カネミ油症と同じようなことを繰り返してほしくない」「自分たちの体験を認めてほしい」という思いから『知ってほしい』と思う一方で、「親族にも打ち明けられない」「子や孫につらい思いをさせたくない」という『知られたくない』という思いもあり、今もなお葛藤に苦しんでいることがわかりました。
 現在見た目でカネミ油症であるとわかる人は少なく、油症が原因であろうと考えられる様々な症状を抱えながら、親として、住民として生きる一人の「生活者」であるということを再認識し、相手を「患者」として捉えるのではなく、一人の人として尊重することの大切さを学びました。

-発表の中の考察で「語る場の必要性・語る場の提供の難しさ」とありましたが、実際、現地で活動をされた時、どのように感じられましたか。-

 「学生さんに話せてよかった」という言葉から、これまで自分の内にため込んでいたつらい思いや経験を語ることで、少しだけですが、自分の気持ちに整理がつき、自分自身で受け入れることにもつながるのだと感じました。
 しかし、被害者の方から語られる内容は、私たちの想像をはるかに上回る壮絶なものでした。「わかります」とも「そうですね」とも声を掛けることはできませんでした。「共感」「傾聴」「受容」など、教科書では学んでいるつもりでしたが、私たちには語りを受け止めるだけのキャパシティが備わっていなかったことを痛感しました。
 語ってもらうには、その人との関係性やその人の語れるタイミングを見極めること、その人が語れる方法を選択することなど、場の提供もとても難しいことだと感じました。

 上五島出身の柏さんは、中学生の時に患者の方から講和を聞くなどして、カネミ油症について学ぶことがあったそうですが、大学生になり周りの友人たちの中に、カネミ油症について知っている人がほとんどいないことに驚いたと言います。

-現地での実習で特に印象に残っている事はありますか。-

 被害者の方々から語られた内容はどれも印象的でよく覚えています。涙ながらに私たちに壮絶な体験と今の思いを語ってくださった方の姿は今でも忘れることが出来ません。
 そして、現地の保健師さんや、メディカルソーシャルワーカーさんが被害者の方と手を取り合い、「カネミ油症を繰り返してはいけない」「これ以上被害に苦しむ人を放っておいてはいけない」と語り合う姿には感銘を受けました。実際に、目の前で手を握りしめ、涙を流しながらお話を聞けたことは、教科書で学ぶ以上の大きなものを得られたと感じます。

<平成29年度 しまの健康実習 学内報告会の様子>

 今後の夢は保健師になることだと話す柏さん。

 「大学院の勉強でも、様々な疾患がある方と関わる事があります。住民と同じ道を歩き、同じ乗り物に乗り、同じ食べ物を食べ、空間を共にする。その地域に住んでいる人と同じ目線に立つことが大切ということを、しまの健康実習で学びました。
 「この人は何の病気を持っているのか」よりも「この人はどのような人か」を意識する姿勢を持ち、住民の方々の生活、そして生活者としての住民を尊重し、治療や病気の予防のための生活ではなく、その人がその人らしくあるための生活の実現を支援できるような保健師になるべく、これからも頑張っていきたいです。」
と話してくださいました。